22話 路上での、格闘
城塞都市の大通り歩く。
道が都市の中心に向かうにつれて広く、人も多くなっている。
そして、さっきまで居た広場より広い場所にでる。
どうやら、ここまで大きい都市になると、数ヶ所に広場が作られているようだら。
広場を歩いていると、遠くで人集りが出来ており、時折歓声が上がっている。
「おい! どいてくれ!」
人混みから2人の男が、気絶している男を肩で担いで歩いている。
担がれているのは、上半身が裸で発達した筋肉が確認できる。
「?……何かしら?」
私は、集まった人混みの中を掻き分け、原因であるモノを見る。
1人の男が、腕を組んで立っている。
隣の仲間と思われる、赤い服をきた男が手を挙げる。
「さぁ! 他に、挑戦者は居ないのか? 今、彼に勝てば集まったお金は全てお前のものだ! 武器は己の拳! さぁ、我こそはって奴は居ないのか!」
どうやら、賭け事をしているようだ。
私は、眺めていると1人の男性が前に出る。
その男性は、更に体格が良く額に傷がある。
『おい、アイツはエヴァンじゃないか?』
『あの傷。 間違いない。 裏街道のエヴァンじゃねぇか』
周りから声が上がる。
どうやら、有名らしい。
「さっきの奴に、勝てたからって自慢にならねぇぞ? アイツと違って、俺は王都で名が知られてるんだからな」
そう言いながら、拳を握る。
エヴァンと名乗った彼は、構えからして見る限りは素人には思えない。
だが、ルーカスは余裕な表情を見せている。
「お前みたいな奴がか? 王都の奴等は、相当腑抜けているようだ」
「コイツ……舐めやがって!」
エヴァンが、ルーカスの顔面に打ち込む。
彼の、体格からの繰り出される打撃は見るもの全てが魅入る事だろう。
「‼︎」
だが、ルーカスは攻撃を躱す。
ルーカスは、余裕からか笑みを浮かべている。
「く……クソが!」
エヴァンは、更に追撃をする。
だが、彼の拳はルーカスの頬を掠め、逆にルーカスの打撃がエヴァンの顔面入れられる。
「――!!?」
エヴァンは、よろめく。
ルーカスは、更に追い打ちにエヴァンの顔に蹴りを入れる。
重い音が響く。
「……」
エヴァンは、倒れて動かなくなる。
周りは、どよめく。
どうやら、もうすこし拮抗すると思っていたのだろう。
そんな、空気を赤い服の男が声を出す。
「決まったぁ。 やはり、強い! 傭兵でもある彼は、余りにも強すぎる!」
ルーカスは、余裕のある表情で周りにアピールをしている。
そして、最前列に居た私と目が合う。
「お? これまた、小さな見物人がいるな。 しかも、エルフか?」
ルーカスは、私の装備を見る。
「そりゃ、本物か?」
「ええ、本物よ」
「きちんと、扱えるのか? ソレでどんな大物と戦ったんだ?」
「まぁ、戦った大物なら魔獣……かしら」
私が戦った大物は、魔獣になるだろう。
私の言葉を聞いたルーカスは、驚く。
「魔獣を、倒した?」
「えぇ、そうよ」
ルーカスと、赤服の男が見合わせる。
そして、笑い出す。
「おいおい。 大人をからかっちゃいけねぇな? 子供の、アンタが魔獣を倒す? そんな、装備と体格でか? なら、俺は魔獣を10体は倒せるな」
「でも、兄貴。 コイツは面白そうですね。 挑戦者は、魔獣と渡り合ったエルフってどうです?」
ルーカスと赤服の男が、そんか事を言っている。
「見た目で相手の実力を判断するのは、愚か者のする事よ」
「へぇ、言うね。 なら、今ここで俺と闘ってみるか?」
私達の会話を聞いている周りがどよめく。
『おいおい、相手はエルフの子供だぞ? アイツと闘ったら怪我どころじゃないぞ』
『でも、魔獣を相手にしたんだろ? 強いんじゃないのか?』
『馬鹿。 魔物じゃなくて魔獣だぞ? 本気にすんなよ』
ルーカスは、周りを見る。
「どうする? 逃げても良いが? ただ、その時は大口叩いたエルフ族が居たって話になるだけだが」
「……逃げないわよ」
「なら、決まりだな」
ルーカスは、笑いながら中央に立つ。
私も、前に出る。
周りも、騒がしくなる。
赤服の男が、周囲に叫ぶ。
「それでは、傭兵のルーカスと挑戦者、魔獣狩りのエルフによる闘いを始める!」
「魔獣狩りって……」
魔獣狩りと言う、大層な二つ名で呼ばる。
ルーカスは、構える。
「是非、魔獣狩りの実力を見せてくれよ?」
ルーカスは、素早く接近するとその大きな拳が私の顔に迫る。
どうやら、早く終わらせたい様だ。
私は、その凶器の拳を避ける。
顔を擦り風が吹き髪がなびく。
「これで、終わりじゃないぞ!」
ルーカスは、更に追撃をする。
太い腕から、想像もつかない速さの連撃だ。
「そんな、避けるだけじゃ俺は倒せないぜ?」
ルーカスは、そう言いながら連撃からの回し蹴りを繰り出す。
私は、後ろに飛ぶが足の長さからお腹に当たる。
後ろに下がった事で、衝撃を和らげ負傷はしていない。
「ただ、逃げる相手はつまらんな。 闘う気はあるのか?」
ルーカスは、ため息を吐く。
そして、再び私に向かって来る。
「ええ、闘う気はあるわ」
私も、彼に向かっていく。
大小の、影が急接近する。
ルーカスが、顔より避け難い体に拳を放つ。
「来るのが、分かってたわ」
私は、体勢を下げる攻撃を避ける。 そして、私はジャンプして腕を伸ばす。
相手と、私の腕が交差する。
私は、彼の顔面を掴むと勢いのまま押し込む。
「⁉︎」
これにより、ルーカスの足が地面から離れる。
私は、彼の顔を掴んだまま地面に叩きつける。
「……がっはぁ……‼︎」
頭から叩きつけられたルーカスは、動かなくなる。
叩きつけるとき、力は弱めたがそれでも失神させるには十分だった。
赤服の男性が、ルーカスに近づき確認する。
そして、私の方を見る。
「な、なんと。 勝者は、魔獣狩りのエルフの少女!」
周りも、何があったのか分からないのか静まり返っているが徐々に声が出る。
『勝っちまったよ』
『あの体格差で、終わらせちまった』
周りが、歓声と拍手で湧き上がる。
私は、一礼すると赤服に話しかける。
「それじゃあ、私は行くわね」
「あ、ちょっと待ってくれ」
私は、その場を後にしようとすると赤服に呼び止められる。
「何かしら?」
「あ、アンタ。 名前は、なんて言うんだ?」
「アリス・ユニヴェールよ」
「なんで、そんなに強いんだ?」
「訓練……かしら」
「訓練で? あの、強さ?」
私は、答える。
確かに訓練の賜物だが、力が増しているのも大きい。
赤服は、黙って私を見ている。
「何も無いなら、私は行くわね」
私は、背を向ける。
「あ、待ってくれ!」
「? まだ、何か聞きたいのかしら?」
私が、振り返ると赤服は袋を差し出す。
「これは?」
私が受け取ると、袋の中にはお金が入っている。
「賞金だ」
どうやら、彼に勝ったからくれるみたいだ。。
「ありがとう。 貰うわね」
私は、受け取るとその場を後にする。
これで、旅の途中で困る事は無いだろう。
周りが、私を見ている中を足早に移動する。
広場に戻ろうと思い、歩いていく。




