19話 武器屋と、投げナイフ
果物屋からある程度歩き、私は市場から出た場所に設置してある腰掛けの長椅子を見つける。
長椅子は何個か設置してあり、空いている1つに腰掛ける。
「休憩か?」
クラリーチェは、そう言いながら私の横にくる。
「そうね。 2人は座れるし、貴女も隣に座ったら?」
私は空いたスペースを手で叩くと、クラリーチェはその場所に座る。
私は、通る人々を見ながら息を吐く。
「改めて見ると、流石は王都ね」
私の言葉に、彼女も頷く。
「そうだな」
私は、さっき購入した果物とナイフを取り出す。
それを見ていたクラリーチェが、不思議そうな顔をする。
「ソレって、皮は剥く必要ないんじゃなかった?」
「まぁ、見てて」
私は、実を半分に切ると、1つを彼女に差し出す。
「半分、あげるわ」
「え? 良いの?」
「良いわよ。 私だけじゃ、1個は食べきれないわ。 だから、気にしないで食べても大丈夫よ」
私の言葉を聞いた彼女は、嬉しそうに微笑むとレッドアイを受け取る。
「ありがとう」
「それじゃ、食べましょうか。 いただきます」
私は一口齧ると、甘みと豊かな香りが口一杯に広がる。 甘いと言っても甘過ぎず、微かな酸っぱさもある。 果物らしく水々しく乾いた喉も潤される。 村で食べた果物とは、また違った美味しさね。
「美味しいわ。 良い、買い物をしたわ」
私が、果物の感想を言うと、彼女も頷く。
「そうだな。 身も固すぎないし香りも良いから食べやすい。 獣の血を浴びた様な見た目には、想像できない」
「……ん? 最後、何か言ったかしら?」
「多分、気のせい」
そんな会話をしながら、果物を食べていると通行人が私達に視線を向けたりしているのに気がつく。
以前の村でも、エルフの私に反応していたのを思い出す。
私は、気にせず食べ終わると立ち上がる。
「この後は、宿屋でも探す? 王都なら、沢山あるだろ」
「そうね。 色んな宿屋があるだろうし、歩きながら決めるわ」
私は、大通りを歩いていく。
まだ明るいし、すぐに決めなくても良いだろうし、色々と見て周ろう。
♢
-広場-
郊外都市の広場は、市場の商業通りと同等か、それ以上の人達が確認できる。
広場とあって、都民の他にも旅人と思わせる荷を背負った者や荷馬で移動する行商人、他に目をやると商人同士会話もしている。
どうやら、広場は憩いの場以外にも、沢山の人が集う性質上、商人達の情報交換も盛んなのかもしれない。
その他にも、市場では見なかったお店も立ち並んでおり、ある建物の吊り下げ看板が目に入る。 看板には剣の絵が描かれており、一目で武器屋だと分かる。
「ちょっと、武器屋に寄っても言いかしら?」
「構わないけど、何か買うのか?」
「買うかは分からないけど、ちょっとどんな物があるかきになってね」
武器屋の前に付いた私は、ドアを開く。 ドアに設置された鈴が鳴り響く。
屋内には色んな武器が飾ってある。 大きな斧や、槍に剣等が目に入る。
私が周りを見渡していると、一人の男性が奥から現れる。
「いらっしゃい。 うちは、色んな武器が置いているから、好きなだけ見ていきな」
そう言いながら、痩せた男性はカウンターに移動する。
私は、いろんな棚の武器を見て回る。
「あ、あの棚にあるのは」
私は、投げナイフの置かれている棚に向かう。
昔、クロエが言っていたわね。
矢を筒から抜いて弓で狙う時間より、投げナイフの方が良い時もあるから、念の為に数本は持っておいた方が良いって。
今後、何があるか分からないし、今のうちに買っておいた方が良いかもしれない。
私は、ナイフを何本が手に取る。
「色々、あるわね」
「私は、ナイフとか分からないけど、何でも良いじゃないのか?」
クラリーチェが、そう言いながら投げナイフを見ている。
「私も正直、あまり詳しく無いのよね。 ただ、ナイフ投げや近接ナイフ術が得意な故郷の友人に教わった時に、色んな見た目や大きさがあるけど、投げナイフで重要なのは重心だって言ってたわ」
「重心?」
「そう、重心。 それによって、変わる見たい」
60年以上前の会話だから、ちょっと自信が無いが。
「お客さん。 投げナイフを買うのかい?」
カウンターから、男性が声をかける。
「え? そうね。 弓矢でも事足りるかもしれないけど、必要になった時のために持っておこうと思ったのよ」
「なるほどねぇ。 確かに、少し離れた敵を前にして、今の担いだ状態からすぐに攻撃をするとなれば、弓矢を構えるまでの事を考えたら、ナイフの方が早いな」
男性の話を聞いて、私は投げナイフの事も聞いてみようと思った。 投げナイフの事なら、私よりも詳しいだろう。
「ちょっと聞きたいんだけど、投げナイフはどれが良いかしら?」
「そうだね」
男性は、投げナイフの棚に来る。
「ナイフ投げの、経験はあるかな?」
「余りないわね。 過去に何回か投げた位だわ」
「なるほど。 では、殆ど経験はない感じだな」
男性は、一本のナイフを持つ。
「それなら、バランス型かブレード型が良いかもしれない」
「バランスとブレード?」
私は、男性に質問をする。
「バランス型ってのは、ブレードとハンドルの間に重さがあるタイプの奴だな。 ゆっくり回転しながら飛んでいくから、刺さるのが予測しやすい。 それに、ブレードやハンドルどちらを持って投げても良いオールラウンダーだな。 近距離も対応できるが、中距離の方が適してるかもな」
「じゃあ、ブレード型はどんな感じなんだ?」
クラリーチェが、質問をする。
「ブレード型は、刃に重さがあって安定した回転でバランス型より速く飛ぶんだ。 それに刃が重い分、前に出る様な感じになるから刺さりやすいってのもある。 近距離での精度が高いな。 因みに」
男性は、一本のナイフを掴む。
「コイツは、柄……ハンドル部分が重くできているハンドル型なんだけど、ナイフ投げに慣れてない人にはオススメしないね」
「え? 何でかしら?」
柄の部分が重いと、そんなに難易度があがるのだろうか?
「ハンドル型は、バランス型より回転速度が遅く、ナイフが他よりブレやすいから初心者や、たまに投げる人には向いていないんだ。 まぁ、中級者向けになるかな。 だけど、他の型よりは遠くの的を狙いやすい特徴があるね」
「そうなのね。 ナイフにも、色々特徴があるのね。 教えてくれて、ありがとう」
私は、お礼を言った後、1本のナイフを手に待つ。
そのナイフは、ブレード型のナイフだ。
聞いた限りだと、バランス型も良いけど中距離より近距離向きの方が私には合ってる気がする。 刺さりやすいのも魅力的だ。
「それじゃあ、ブレード型にするわ」
私は、ナイフ置き場から両刃のナイフを取る。
「両刃を選んだか。 片刃は薄く切れ味が良いが、安定性は両刃に軍配が上がるし、俺も両刃が好きだな」
重心だけじゃなく、刃でも変わるみたいだ。
「そうなのね。 それじゃあ、このナイフを購入するわ」
「毎度あり。 お客さんは、店で初めて来店したエルフ族って事で、記念に投げナイフ用レザーシースを付けるよ。 コレは、太ももに取り付けるやつだよ」
私は、男性から受け取る。
「ありがとう」
私は、レザーシースを取り付けると、ナイフを5本差し込む。
「色々為になったわ」
「分からなければ、いつでも聞いて構わないよ」
男性がそう言ったと同時に、店の鈴が鳴る。
私が、ドアの方を見ると1人の女性が入ってくる。




