15話 妖精と、焚き火
オルタネイトの王都に向かう道中、私は草原を歩いている。
空は曇りで微風が吹いており、気温も高くなく移動には丁度良い。
私は前方を見ると林が見えた。
私は、あの場所で休憩しようと決める。
到着し、一本の木の下に座る。
風も気持ちいい。。
「……良い風ね」
私は、空を見上げながら呟く。
「なら、もっと強い風を当ててやるぞ?」
「……え?」
突然の声に、私は隣を見る。
そこには、不適な笑みを浮かべた妖精が居た。
「⁉︎ クラリーチェ‼︎ 貴女が、何でここに居るのよ!」
私は、立ち上がると身構える。
あの森から、着いてきたの?
もし、そうならなぜ? まさか、仕返しに?
「まぁまぁ、落ち着きなよ。 別に、森での続きをしにきた訳じゃないから」
「なら、なぜここに? 偶然とか、言わないわよね?」
私は、警戒を解かない。 いきなり、風魔法を使われる可能性は0ではない。
「だから、何もしないって。 ただ、君の旅に着いていくだけだ」
「私の旅に? 貴女、何を企んでいるの?」
私が、警戒を解かないからか彼女は腕を広げている。
何もしないって言いたいのかしら?
「企んでいないよ。 君とまた遊びたいから、着いていくのよ?」
「また、遊びたい?」
「そう。 楽しめる相手が見つかったんだ。 なら、着いていくでしょ?」
クラリーチェは、イタズラな笑みを浮かべる。
「貴女と、一緒に旅だなんてゴメンだわ。いつ、背後から襲われるか分からないのに」
私は、キッパリ伝える。
ここまで、言えば相手も諦めてくれるかもしれない。
「……君が、ダメでも私は決めてるから。 まぁ、仲良くしようか」
「……」
私は、溜息を吐く。 そして、王都までの道を進む。
クラリーチェは、私を見ている。
私は、横目で彼女を見る。
「勝手にしなさい。 でも、怪しい行動をしたら、分かってるわね?」
彼女は、笑顔になる。
「ああ、肝に銘じとくよ」
私とクラリーチェは、草原を進む。
途中、何かしないか妖精を見ながら私は、息を吐いて空を見る。
♢
木々が茂る林に入る。
木々の擦れる音だけが響く、静かな場所だ。
私が、周りを見ていると枝で座っているクラリーチェが、声をかけてくる。
「どうした?」
「……この辺りで、野宿しようか考えいたのよ」
そして、開けた場所に出る。
「とりあえず、ここで野宿ね」
私は、彼女を見る。
「焚き火の準備をするから、手伝いなさい」
「薪集めか?」
「そうよ。 一緒に旅をするなら、それぐらいはして貰うわ」
「薪ねぇ。 集めに行くのは面倒だな」
クラリーチェは、地面に降りると地面に手をかざす。
「?」
私は、彼女の行動に疑問を抱く。
だが、すぐに驚きに変わる。
なんと、地面から木が生えてくる。
「薪なら、コレを使えば良いよ。 燃えやすいように、調整はしたし」
そう言うと、枝を折っていく。
私は、彼女の知らない力を見て驚く。
「な、何よ。 それ。 貴女、風魔法以外も使えるの?」
「ん? ああ、そうか……あの時は、遊びだから風しか使ってなかったな」
そう言いうと、彼女の背後から木が何本も生えてくる。
生えた木は、まるで動物のように動き妖精の腰ら辺に枝を伸ばす。
クラリーチェは、枝に座る。
「こんな事も、出来るな」
一本の木が、先端を槍の様に尖らせ地面に突き刺す。
そして、引き抜くと穴が空いている。
私は、彼女の隠していた力を見て睨む。
「それじゃ、手加減をしていたって事?」
「手加減? アレは、風だけを使った遊びだよ。 隠してた訳じゃないし」
「……」
彼女は、隠している訳ではない。 ただ、使う気がなかった。 たまたま、風魔法だけを使ったそれだけだ。
もし、彼女がこの木を生やす魔法を使っていたら、どうなっていたのだろう。
私は、自慢げにしている彼女を見る。
「……とりあえず、火を起こしましょうか」
私は、火打石を取り出しす。
「風が欲しかったら、いつでも良いよ」
そして、2人で火を起こす。
クラリーチェは、眼を閉じて焚き火の前で片膝を立てている。
そして、立ち上がる。
「? どうしたの?」
私が、彼女に質問をする。
「森に感謝を伝えいたのよ。 森から、必要な分を分けて貰ったんだしね」
どうやら、妖精族の信仰に関係している様だ。
私達、エルフ族も動物や果実を育ませる山や川に感謝する様に、彼女達も恵を与える森と言う自然に祈りを捧げている。
どの、種族も細部は違えど感謝の気持ちを持っている。
私は、焚き火を見つめる。
♢
星が瞬く夜空の下、私達は拾ってきた丸太を椅子にして焚き火の前で座る。
大きめの葉に置かれているのは、昼間に集めた木の実と、携行食の干し肉だ。
焚き火は、周囲を赤くてらし私達以外にも周りの木々を闇から浮かび上がらせている。
私は、薪を一本掴むと火に焚べる。 微かにハジけるような音が響く。
私は、袋に入っていた葡萄酒を取り出すと彼女の魔法で作った木の容器に注いで飲む。
「お、美味そうだね」
「……」
私は、黙って彼女に注ぎ口を向ける。
彼女も、容器を差し出しそのまま注ぐ。
「ありがとう。 まさか、分けてくれるなんて思わなかったよ」
「別に、1人で飲むより分け合った方が美味いから注いだだけだから。 それに、薪や容器を作り出した貴女の魔法に感謝もしてるし」
「一緒に飲んだ方が美味いか。 確かに、そうかもね。 それに、魔法……か」
彼女の思わせぶりの言葉に、私は引っ掛かる。
「何? 木を生やすのは、妖精の魔法じゃないの?」
私は、アレが魔法だと思っていたが、彼女の反応は違うみたいだ。
「アレは、急に使えるようになった力だね。 妖精族は普通、風魔法しか使えない」
「そうなの?」
クラリーチェは、葡萄酒を口に運ぶ。
「ああ。 でも、私はその風魔法すら使えなかったんだ」
「え? 魔法が使えない?」
「そうさ。 でもある時、私は雷に撃たれたのさ。 そして、目覚めたら風と木を操れる様になったんだ。 なぜか、私の風は緑がかっているけどね」
「……」
似ている。 魔法を使えなかった私が、魔法とは違う力を扱える様になった流れが。
しかも、お互いに命の危機的状況でだ。 違うのは、私は、水魔法は使えないけど彼女は、風魔法が使えている所だ。
「私は、話したんだ。 次は、君の番だよ」
「え? 私?」
「そう。 君の、あの黒いモノは何? 最初は、体の調子が良くなったけど、最終的に体調がとんでもない事になったし」
まぁ、気になるわよね。 でも、私にも分からない。
「私にも、この漆黒の力は分からないのよ。 でも、貴女と同じ流れで使える様になった物よ」
私は、彼女に話す。
力が目覚めた原因。 自身の生まれに、村を出た話。
そして、なぜ私は彼女に隠さずに話しているのかが分からなかった。
酔った勢い? 星空の下で、火を囲んだ状況だから?
当の本人は、私の話を聞いて頷いている。
「それが分かるかもしれないから、ハイラムって国に行くんだな?」
「そう言うことよ」
私の言葉を聞いたクラリーチェは、頷く。
「まぁ、現時点で分かるのは私達は似た者同士だな。 力の発現だったり、生まれつき魔法が使えなかったり」
「似た者ねぇ。 貴女と似てるのは嫌だわ」
「せこは、嘘でも肯定しなよ」
「はいはい」
私は、お互いの容器に葡萄酒を注ぎ出す。
そして、葡萄酒は空になる。
「ちょうど、貴女の容器でなくなったわね」
妖精は、酔ったのか焚き火の色かは分からないが赤くなっており、容器を見ている。
「妖精、どうしたの? 飲まないの?」
「そう言えば、君の名前を知らないなって」
「え?」
そう言えば、彼女の名前は知っているが、私は自分の名前を伝えていないのに気づく。
「そうね。 一緒に行動するなら、名前を知らないのはアレね」
私は、彼女に顔を向ける。
「私は、アリスよ。 アリス・ユニヴェールよ」
「アリスだね。 改めて私も自己紹介をしとくけど、私はクラリーチェ・バルトロマージ」
「分かったわ」
お互いに自己紹介を終え、お酒と木の実を食べる。
私達は、その後も雑談をしてから眠りについた。
妖精族
崇拝対象:自然崇拝
信仰対象:山と森
蛇の象徴:生命力




