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13話 妖精族と、風魔法 後編

13話

 私とクラリーチェが、対峙する。

 依頼を受けた時は、まさかこうなるとは思わなかった。


「それじゃあ、遊ぼうか」

「……」


 クラリーチェが、笑みを浮かべて地面より浮く。

 私は、弓矢を構えると放つ。

 多分、彼女には当たらないだろう。

 クラリーチェは、手を向けると薄緑の風が矢は真っ二つにする。

 2つに両断された矢は、彼女に当たる事なく後ろの木に刺さる。


「矢が来ると分かって居たら、防ぐのは簡単ね」

「……そうね」


 私は、弓矢を仕舞う。 そして、クロエから貰ったナイフを構える。

 風を扱う妖精相手に飛び道具は不利だ。


「ナイフなんか出して、どうやって接近するの?」


 クラリーチェは、余裕な笑みを浮かべて腕組みをしながら風の刃を放つ。

 視認できるから、何とか避ける。

 これが、視認出来なかったらどうなって居たか分からない。


「貴女の魔法は、目に見えるんだから何とか近づくわよ」


 幾つもの刃を掻い潜りながら、クラリーチェに接近する。 なぜか、彼女は接近されているにも関わらず回避行動をしない。

 私は、ナイフの柄で叩くために振り下ろす。

 漆黒の影響で、力の増した私の攻撃は風を切り裂きながら迫る。


「――⁉︎」


 だが、攻撃は彼女に届かなかった。 魔法を使われたとかでは無い。 妖精の彼女に、手首を掴まれ止められたのだ。

 


「どう言う事よ? 何で、妖精の筈の貴女が?」


 妖精は、体が小さく力も強く無い。

 鍛えているエルフ族の力には絶対的な差があり、私の力は野党の腕を握り潰し、投げれば壁を突き破る程だ。

 それを、妖精が止めるのは本来はあり得ない。


「妖精だからって、力が弱いとは限らない」


 クラリーチェは、私の腕を持ったまま引き寄せる。

 私は、咄嗟の事で対応出来ずに引っ張られ彼女と顔が近くなる。

 彼女の小さな顔が私の耳元に来る。

 そして、彼女は耳打ちする。


「貴女も……想像より、力が強いわね」

「‼︎」


 私は、掴まれて居ない腕で反抗するが、クラリーチェは私の懐に入り込む。

 そして、両手を伸ばして私の胸に密着させる。


「吹き飛びなさい」

「‼︎ しまっ――」


 視界が緑色に染まる。

 瞬間、物凄い風と衝撃ご走り後方に飛ばされる。


「ぐ……‼︎」


 私は、草地に飛ばされる。

 クラリーチェは、私の方にゆっくりと来る。


「アレで倒れないなんて、頑丈だね」


 クラリーチェは、そう言いながら目の前に来る。

 私は、息を整えながら立ち上がる。


「当たり前でしょ? あんなの、微風よ」

「言うねぇ」


 クラリーチェは、笑顔で答え。


「その微風に、もう少し風に当たっていきなよ」


 クラリーチェは、手を向けると緑の風が手のひらに集まり弾になっていく。

 私は、頭の中でどうするか考える。

 受けた風の衝撃の影響で、素早く反撃は不可能だ。

 また、攻撃を受けたら意識を保てるか分からない。


「……使うしかないの?」


 漆黒が頭をよぎる。 だが、どうなるか分からない。

 この、森に被害が出るかもしれない。

 私が、判断に迷っていると緑の弾が放たれる。


「‼︎」


 私は、咄嗟に防御姿勢をとった時、一瞬頭に痛みが走る。

 厳密には、眼球に鋭い痛みだ。

 私は、眼を細める。

 この時、目の前が暗闇に包まれる。

 否、目の前に漆黒が展開されておりそれが壁となり弾を受け止めている。

 どうやら、無意識に漆黒を出したみたいだ。


「⁉︎ 何それ? エルフの魔法?」

「……魔法じゃないわ。 私の中に眠る、漆黒よ」


 ど弾と漆黒がぶつかり合う。 だが、私には分かる。

 だが、漆黒で防いでいるがこのままでは、撃ち負ける。

 弾も、緑色が濃くなっていき勢いが増していく。

 クラリーチェも、それが分かるのか両手をかざしてくる。


「なんだか知らないけど、風が強くなってきてるわ。 このまま、その壁を打ち破ってあげる」


 木々が激しく揺れる。

 このままでは、漆黒が打ち消される。

 私も、両手を伸ばして集中する。

 眼球の痛みが再発し、強くなっていく。


「ぐっ‼︎ うあぁぁあぁぁ……‼︎」


 私は、痛みなど気にせず全身に力を入れる。

 私の気力が勝ったのか、漆黒が弾を包んでいく。


「飲み込めぇ‼︎」

「⁉︎」


 私の叫びに呼応するように、漆黒は弾を飲み込みクラリーチェに接近するの。


「――あぁ‼︎ そんな‼︎ 私が――」


 クラリーチェは、水に押し流されるように運ばれ体が漆黒の中に完全に消える。

 漆黒は、木々を薙ぎ倒していく。

 私は、痛む眼を押さえながら広がる漆黒を見る。

 このままでは、森が大変な事になる。


「はぁ……はぁ……。 お、治りなさい」


 すると、漆黒の海は空気に溶けるように消えていく。

 私は、膝をついて息を整える。

 漆黒の流れた方から、クラリーチェが歩いてくる。

 

 「今の何? 凄く冷たくて驚いたんだけど」

 「……嘘でしょ? 今のが、効いてないの?」


 私は、驚く。 あの漆黒は、魔獣ですら屠った力だ。 それが、彼女には余り効いていない様子だ。


 「次は、私の番ね」


 クラリーチェが、手を動かす。


 「……くっ‼︎」


 魔法が来ると身構えたが、風が吹かない。

 私が、彼女を見ると顔が青ざめ体が震えている。

 そして、クラリーチェは口を抑える。


「‼︎ ッウプ!」


 彼女の頬が膨らむ。


 「ッガハ!」


 クラリーチェは、両膝をついて吐く。


 「はぁ……はぁ……何よコレ? 気分が、悪いわ。 カハァ……‼︎」


 クラリーチェの震えが激しくなる。

 

 「貴女……何したの?」

 

 クラリーチェげ私の方に歩み寄るが、途中で倒れ込む。

 私が、彼女を覗き見ると気絶している様だ。

 様子を見ていると、背後から気配がして振り向くと、工具箱近くに離れて居た妖精達がいた。


「クラリーチェさんが、負けた」

「……えっと、コレ返すね」


 私が、一歩踏み出すと妖精達はクラリーチェを担いで森の奥に逃げていく。


「……」


 私は、工具箱を持つとその場を後にする。

 妖精族から、何かされる心配もないだろう。


 ♢


 私が、葡萄園にもどると3人が外で待って居た。

 カールは、酔いが醒めてきているのか顔の赤みが薄くなっている。

 チェルシーが、駆け寄ってくる。


「大丈夫? 森から凄い音が聞こえたから、何かあったのかと心配したわ」

「大丈夫よ。 妖精達の戯れに付き合っただけだから」


 私は、チェルシーに答えた後、カールの方を向く。

 そして、工具箱を差し出す。


「依頼の品は、コレでしょ?」

「あぁ、ありがとう。 まさか、本当に戻ってくるとはな。 本当にありがとう」


 カールが、何回もお礼を言う。

 コンラッドも、私の所に来る。


「凄いな。 妖精から奪い返す奴なんて中々居ないぞ?」


 チェルシーも、笑顔で応える。


「もし、よければ休んで行ってください。 飲み物を出しますよ。 代金は要らないから遠慮しないでね」

「ありがとう。 一杯だけ頂くわ」


 私達は、建物に入り飲み物を頂く。 動いた後の飲み物を、格別に美味しかった。

 そして、カールから依頼料を貰うと、私達は葡萄園を出る。

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