12話 妖精族と、風魔法 前編
――妖精の森――
森の中を歩く。
木漏れ日で、湿った地面が照らされている。
ある程度、進むが妖精らしき姿は見えない。
私は、周囲を見渡す。
「全然、妖精に会わないわね――‼︎」
背後から草の擦れる音が聞こえて振り返る。
何かが木の後ろに移動する。
「……妖精……かしら?」
私が、警戒しながら木に近づく。
「‼︎」
突然、枝が折れる様な音が右上から聞こえてくる。
私が、意識を向けるとツタで縛られた拳サイズの石が振り子の様に迫ってくる。
「な!」
咄嗟に回避行動をすると、石は勢いよく木に当たる。
石が当たっていたら、怪我をしていた。
流石に、イタズラで笑えるものではない。
私が、揺れるツタを見ていると森に笑い声が響く。
『ふふふ。 避けるなんて凄いね』
『あの耳、エルフ族? 人間より、楽しめそう』
『次は、何して遊ぶ?』
私は、溜息を吐く。 そして、隠れている妖精達に話しかける。
「遊ぶつもりは、無いわ。 あなた達が、人間から奪った工具箱を取りに来ただけよ。 工具箱を返してくれたら、すぐに立ち去るわ」
私の言葉を聞いた妖精達は、静かになる。
別に、妖精族と争いに来た訳では無い。 問題なく終われば、それが一番だ。
私が、彼女達の反応を待っていると再び声が響く。
『すぐに帰るの? そんなの、私達がつまらないわ』
『エルフで遊ぶなんて中々ないし、森から逃さないよ』
大体予想はしていたけど、一筋縄では行かないらしい。
私は、溜息をつくと近くの木を背に周囲を観察する。
森の中で、敵を探すのは困難だ。
だから、少しの違和感も決して見逃してはならない。
「……」
とりあえず、木や草を見ていく。
風とは違う動きをするのがあるはずだ。
そして、微かながら草の間にコチラを覗く顔が見えた。
露出した肌は、森では目立つ。
「見つけた‼︎」
私は、駆け出し距離を詰める。 野党の時にも思ったが、自身の力が強くなっており、瞬発力も上がり素早く近づけた。
「⁉︎」
妖精が、驚いた顔をしている。 私は、逃さない為に妖精の胸ぐらを掴み押し倒す。
「――あがッ!!」
「残念だったわね。 もっと上手く隠れることね」
私は、力を込める。
「さぁ、工具箱を出しなさい」
妖精が、私を睨んでくる。
私は、少し脅そうとナイフの柄にでを伸ばす。
「それとも、狩猟されたい?」
私が、そう呟いたと同時に、背中に衝撃が走る。
私は、痛みで顔が歪む。
手の力が緩み妖精が逃げてく。
「――つ……痛いわね。 まぁ、また捕獲してやるから、構わないけど」
私が、そう呟くと木々が騒めく。
『ちょっと、エルフ強いね』
『ちょっと、舐めてた』
『全力で行った方が良さそう』
妖精の会話を聞いて、私は構える。
「分からせてあげるわ」
野党の様に、殺気はないから私も本気で相手はしないけど、余りにも酷いなら話は別だ。 大怪我を、させない程度に対応した方が妖精相手には良いだろう。
私が、どうするか考えていると風が吹き出す。
突然の風に私は警戒すると、風は突風に変わり草原や枝が私に襲いかかる。
「――⁉︎」
体に、枝や葉がぶつかる。
顔や手に擦り傷ができる。
これは、ただの風じゃない。
これは――。
「まさか……魔法?」
突風がおさまり顔を上げる。
私を囲む様に、妖精達がいる。
「そうだよ? エルフ相手なら、これくらいは必要でしょ?」
「怖気付いた? なら、少し待ってあげるから早く逃げなよ」
「そうそう。 そうしないと、また飛んでくるよ?」
「痛いの、嫌でしょ? まぁ、逃げても追撃するんだけどね」
妖精達が、急かしてくる。
どうせ彼女達は、逃げる獲物を追いかけたいのだろう。 ウルフが狩をする様に。
だけど、私は周りを見ながら妖精の数と位置を記憶する。
前方に2。 右に1。 後方に3の合わせて6。
まぁ、なんとかなるわね。
「残念だけど、逃げた方が良いのは貴女達よ? 流石に魔法を使うなら、私も容赦しないわよ?」
私の言葉を聞いて、妖精達が驚く。
「え? 逃げるのは、私達?」
妖精達は、お互いに見合うと笑い出す。
「あはは。 怖い怖い」
「まぁ、エルフは弓矢や水魔法を使うし警戒はしなきゃね」
「矢も水も、風で吹き飛ばすだけだから」
妖精は、数で優っているからか気持ちが大きくなっている。
その油断は、私には有り難い。
「笑ってなさい」
私は、前方の駆け出す。
前方の妖精が、私から逃げるために飛翔するが、元々コイツらには用はない。
私が狙っているのは――。
私は、弓矢を構えると矢を3本取る。
そして、素早く身体を捻り後方の3人に矢を射る。
まさか、自分達が狙われていたと考えていなかったのか、彼女達は反応できていない。
「まずは、3人」
弦が鳴り、3本の矢は妖精達の衣服を射抜く。
「――あがっ‼︎」
「きゃっ……‼︎」
「おぉ……‼︎」
妖精達は、服と矢で木に固定される。
別に、妖精族と殺し合いしに来た訳じゃない。
「な⁉︎ コイツ‼︎」
1人の妖精が、私に手をかざす。
魔法を放たれる前に私は、走り草が茂っている場所に飛び込む。
そして、素早く木を陰にする。
「隠れてもムダよ! 草と一緒に刈り取ってあげる」
風が吹いたと同時に、樹皮に刃物で切った様な傷ができ、草も刈り取られ吹き飛ばされる。
「あのエルフ。 どこに行った?」
妖精は、飛翔しながら下を見ている。
他の妖精2人も、枝にたって下を警戒している。
「全員で、下を警戒してもダメでしょ?」
「⁉︎」
私が草地から木に上っている事を考えていなかった様だ。
そして、枝から飛翔していた妖精に飛び掛かると、そのまま足を掴んで地面に向かって叩きつける。
「あ! っか⁉︎ はっ!」
背中から叩きつけられ、息ができないのか地面でのたうち回っている。
残りは、2人だ。
妖精からは、余裕の表情は消え去っている。
「まだやる?」
私の言葉を聞いた妖精達は、それでも逃げない、。
彼女達の表情からは、余裕は消えたが諦めていない様だ。
「仕方ないわね」
私が、一歩踏み出そうとした時、の風が吹く。
その風は、薄っすらと緑色が掛かっており、動きが視認できた。
そして、私と妖精の間の地面が抉り斬られる。
「⁉︎ 」
私は、後ろに下がる。
視認できる風?
そんな風魔法が存在するの?
それに、誰が魔法を放った? 目の前の2人は、魔法を使っていなかった。
他の妖精も、動ける状態ではない。
他にも、妖精が隠れていた?
私が、思考を巡らせていると木々の影から誰かが現れる。
「煩いから来てみたら、凄い事になってるね」
現れたのは妖精だが、他の奴らとは何かが違う。
さっきの風魔法も、彼女だろう。
「それにしても、酷くやられたねぇ」
「ごめんなさい。 クラリーチェさん」
「あのエルフ。 めちゃくちゃ強い」
私は、クラリーチェと呼ばれた妖精を見る。
2人の妖精の言い方から、彼女が長なのだろうか?
私の視線に、クラリーチェが気づく。
「ごめんねぇ。 私達、妖精はイタズラ好きで相手の反応を見て楽しんだりするんだけど、とんだ火傷をしたみたいだ」
「……そうね」
クラリーチェは、私の顔の前まで飛んでくる。
仲間がヤラれて怒らないのだろうか?
私が、森に来た理由を言えば、対応してくれそうな感じでもある。
「クラリーチェと言ったわね。 私が、この森に来たのは――」
「ああ、コイツだろ?」
クラリーチェは、指差す。
私が、差した方を見ると小箱が置いてある。
「人間から奪ったヤツだよ。 特に面白いものでも無いから返すよ」
クラリーチェは、笑顔でこたえる。
彼女の行動に、2人の妖精が驚く。
「え? クラリーチェさん。 あれ、返すの?」
「そしたら、取り返しに来る人間が居なくなるよ? イタズラできないよ?」
クラリーチェは、妖精達を見る。
「良いの良いの。 あんな人間にイタズラするより、もっと面白いのが目の前に居るから」
彼女は、不適な笑みを浮かべて私を見る。
「あんた達は、倒れてる奴らを拾ったら離れていな」
クラリーチェに支持された妖精は、他の妖精を抱えて居なくなる。
「それじゃあ、小箱を返す代わりに遊ぼう」
「……断るって言っても、無駄よね?」
クラリーチェは、明らかに臨戦体制であり、彼女の緑色の瞳が私を離さない。
私は、ため息を吐いて弓矢を構える。




