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隣の席の雪河さんと関口くん、早く付き合ってもらっていい?  作者: Mini


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29話 生徒会長は雪河さんに謝りたい

 二人三脚の後、白赤雫は公開していた。


「どうしてあんなことを言ってしまったのでしょう」

「会長らしかったですけどね」

「嫌われちゃいましたかね……わたくし」


 頭を抱えながら唸るように言う生徒会長をいつものように宥める副会長。

 かと思えば次の瞬間には闘志を燃やすように立ち上がり謝罪することを決意する生徒会長。


「やはり、謝りに行きます!」

「は~い、いってらっしゃ~い」


 基本白赤が決めたことは曲げないので変に意見を言わずに見守るスタイル。

 何か求められた時に言えばいいと生徒会メンバー全員がそう思っている。

 白赤は自分の席を立ちあがり、一年生ゾーンに向かう。


◇


 一方そのころ……二人三脚が終わり関口と雪河は伊藤たちのいる席へと向かっていた。


「お疲れ!いや~惜しかったね!って、雪河さんどうしたの?」


 伊藤が労いの言葉をかけるのと同時に雪河の様子が変なことに気づく。

 蒼井も無城もそれは感じ取っており心配する声を掛けるが雪河は笑って誤魔化すようにしていた。

 これに布瀬は何かあったんじゃないかと思い近寄るが……


「朱音?どうしたの?」

「ちょっと来て」


 布瀬が近寄る前に雪河が抱き着き、小声でそう言いこの場を離れていった。

 関口は何も気にする様子なく自分の席に座り、伊藤は怪訝な表情をする。


「なんかあったのかよ?」

「まぁちょっと生徒会長とな」

「マジかよ!?あの会話してた時か」

「……お前でけぇ声出すなよ?」


 関口はそう言いながら何が起きたのか耳元でざっくりした説明をした。

 案の定意味の分からない大声を上げる伊藤に関口は肩を竦めるが、咳ばらいで誤魔化して小声で話す二人。


「(生徒会長が雪河さんの事を入れようとしていたのは分かってたけどさ、なんでお前を入れるって脅したんだ?)」

「(詳しくは知らないけど、生徒会長曰く雪河さんと本気の戦いがしたかったんだと)」


 伊藤は頭の後ろで手を組んで唸り声をあげ考える。



 生徒会長は雪河さんが負ければ雪河さんではなくその隣にいる関口を生徒会にいれるといった。

 勝負を断れば借り物競争のお題をばらすと脅した。

 結果、雪河さんは勝負に負けたが関口を入れるというのは嘘で雪河さんと本気で戦いたかっただけ。



 ここまで綺麗に情報を整理し、伊藤が導き出した答えは……


(雪河さんが関口の事が好きだって、生徒会長にバレたんじゃね?)


 あたり。

 いや、そうとしか考えられなかった。

 そうすれば帰ってきてからの表情や態度にも説明がつく。

 何より、関口が分かっていないというのがいい証拠だった。


 

 しかし、それでもわからないことが一つ。

 どうして生徒会長はわざわざそんなことをしたのか。

 本気で戦いたいという理由だけでは少しやりすぎな気もしてしまうのは気のせいだろうか。

 伊藤はそう考えながらも心の中で「まぁいいか」と呟き関口に肘打ちしながら言った。


「お前も隅に置けなくなったな」

「何言ってんだお前」


 関口はジト目でそう返す。

 ここから最終種目の男子四百メートルリレーまで時間があるのでゆっくりしようと関口は飲み物を買いに行った。


◇


 布瀬と雪河は人目の少ない日陰に来ており、赤面しながらもじもじする雪河を見て布瀬は眉をひそめる。


「んで?関口と何があったの?」

「……その、関口くんとは何もなくて……ッ」

「何でそんなにもじもじしてんの————」


 刹那……布瀬は自分の脳に戦慄が走るような感覚に陥り、雪河の思いを察してしまう。

 長年一緒にいる幼馴染の勘という奴だ。

 布瀬もおどおどと困惑しながら聞いた。


「もしかして……関口の事……」


 布瀬がそういうと、雪河はまんざらでもなさそうで視線を逸らしながら静かにうなずく。

 見たことのない反応を見せる雪河に布瀬は攻撃をくらったような声を上げる。

 関口がうらやまけしからんという思考をするのと同時にこの表情を見せてくれてありがとうという意味の分からない感謝をする布瀬。


「それで?好きって気づいた関口とはいっぱいくっつけたわけだけどどうだった?感想は?」

「じ……実は……」


 そして、関口が伊藤に説明したのと同じように雪河も簡単に布瀬に説明をした。

 案の定、布瀬も聞いたことのない意味わからない大声を上げる。


「な、なにそれぇぇぇぇええええ!?」

「しーっ、声が大きいよ絵美里!」


 赤面しながら人差し指を口元にあげながらいーっとする雪河。

 雪河は話を聞いてほしいのではなく、生徒会長に負けた悔しさと、全て見透かされていたという屈辱をどうぶつけていいのかわからなかった。

 それを布瀬にいうと布瀬は軽く溜息を吐きながらも、両の手を広げる。


「ん」


 布瀬のその一言で雪河は察して勢いよく飛びつき泣きじゃくった。


「悔しかった————」

「うん、そうだね。悔しかったね」

「勝ちたかった……関口くんに信じてとか言いながら負けたのが悔しい……」

「そ、そんなことまで……」


 そう言いながら頭をポンポンする布瀬。

 このやり取りは約十分くらい続くのであった。


◇


 飲み物を買いに来た関口。小銭を入れて水を選択。

 下から取り出しふたを開けて口に運ぼうとしたとき……視界に白髪の赤い瞳をした人物が映る。

 それは先程まで二人三脚で戦っていた生徒会長、白赤雫本人だった。


「せ、生徒会長!?」


 思いがけない再開に関口自身声を上げたことに気づかず、その声で白赤は気づいてしまう。


「あ、関口さんではありませんか」

「こ、こんにちは」

「こんにちは。二人三脚では申し訳ない事をしてしまい……」

「まぁ大丈夫ですよ。それで一年生ゾーン(こっち)にきてどうしたんですか?」

「雪河さんに謝罪しようと思っていまして……その、わたくし……やり過ぎましたよね?」

「……どうでしょう?」


 やり過ぎましたよねと言われても関口は首を傾げてしまうに決まっている。

 まぁ確かにどうして負けたら雪河ではなく俺が……とは言いたくなるが雪河の本気と戦ってみたかったといわれればそれまでなのでそれ以上何も言うことはない。


「俺は雪河さんに謝る必要はないと思いますよ」

「あら、それはどうしてですか?」


 不思議そうに小首をかしげる白赤。

 関口は頭を掻き視線を逸らしながら話す。


「仮にも真剣勝負をして、雪河さんは負けたんです。謝罪の内容や理由がどうであれそれは野暮ってもんじゃないんですかね?」

「……」


 白赤は顎に手を当て考えるようにしながら数秒黙りこくり、納得たように話していた。


「確かにそうですわね。あなたの言う通りかもしれません」


 そして、そのまま白赤は真摯に続けていた。


「わたくしは、汚いやり方で勝負を挑みました。雪河さんを一目見た時から生徒会に入れたいがために接触をしてきましたが、この眼でその実力を見たわけではなかったのでこれがいい機会だったんです。」

「それで、雪河さんを諦めるんですか?」

「いいえ?わたくしの代じゃなくても雪河さんはいつか生徒会に入りますよ。それは関口さんも例外ではありません」

「……俺は、どうでしょう……」

「あなたもかなり優秀な人間だとお伺いしています。中学の事とかも知っているのでね」

「……そうですか」

「ありがとうございます。関口さん。お詫びに借り物競争のお題を教えて差し上げましょうか?」


 なんとも惹かれる言葉だろうか。

 一瞬関口は「ぜひお願いします」といってしまいそうになる。

 が、しかし良心が許すはずもなく軽く首を振って断った。


「大丈夫です。俺が直接聞くので」

「そうですか。それではわたくしはこれで失礼させていただきますね。四百メートルリレー楽しみにしています」

「あ、ありがとうございます」


 内心この人は何者なんだと思いながらもこの場を去る生徒会長を見送り、関口も自分の席に戻っていった。

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