25話 借り物競争で何も起きないはずもなく…… 後編
(嘘でしょ……そんなことあるの……)
雪河は次のお題を見て絶望したような表情になっていた。
観客の人含め、実況人も雪河に注目しておりその表情にも触れていた。
「さぁこれはどうしたことでしょう!?雪河朱音……視線を落とし少し赤面しているようにも見えます。いったいどんなお題を渡されたのでしょうか!」
実況の響いた声を聞いて観客席に向かっていた関口は振り返る。
「……?どうした?」
足を止めるが隣にいた先生に早く戻るように促され仕方なくその場を離れようとする関口。
「朱音どうしたんだろう……?」
「なんかとんでもないお題とかひいたんじゃない?」
「とんでもないお題ってなんだろ……」
「……好きな人……とか?」
無城の口からありえない言葉が聞こえ、伊藤たちは体をビクッと反応。
あり得ない……というわけではない……むしろあり得る、十分にあり得るのだが、そのお題を二番目に引いてしまうというくじ運の悪さに布瀬は声を唸らせる。
と、それと同時に蒼井が不思議そうに口を開く。
「もし仮に雪河さんが関口の事好きで、二回連続関口を借りることってできるのかな?」
「あ~確かにな。でもルール上は問題ないはずだぜ?二回連続同じものを借りるのを禁止とは書いてないはずだから」
そう……書いていない。そもそもそれはほとんど起こりえないことのはずだ。
だから記入していなかったという説も考えられる。
よく考えてみてほしい。
二回連続で同じものや人を借りたら面白みに欠けてしまう。
が、しかし……そういう事実が起こり得ようとしている。さて……どうする雪河朱音。
(どうするの!?一番かっこいいと思う生徒って、私の中では関口くんしかいないんだけど!!)
コンマ数秒の時間む無駄にすることなく思考する雪河。何度……どれだけ思考してもやはり行きつく答えは関口祐介だった。
確かに学校で一番かっこいいといわれている生徒がいるのは知っている。
生徒会長の白赤 雫の双子の弟、白赤 拓斗という人物だ。
会長と同じく白い髪に赤い瞳ではあるがその見た目に反して性格が悪いで有名……しかし容姿がいい分それは帳消しになるといった感じだ。
誰もが認めるイケメン……それが白赤拓斗なのだが、雪河朱音の脳内には浮かび上がることもなかった。
(いいよね?……いいんだよね?ルールにも書いてなかったし……いやでも……うーどうしよう)
こうしているうちに色々な人達は雪河を抜き次のお題に到着している。
そうだというのに雪河は正直順位とかどうでも良くなっていた。
雪河は振り返り、関口を止めようとしたが……やはりゲーム上二回連続同じ人を呼ぶわけにはいかないと思いいたり、関口をスルーする。
そして観客席に向かい、蒼井直也に話しかけていた。
「蒼井くん!私についてきて!」
「え?お、俺?」
思わぬ展開に蒼井以外の人たちも素っ頓狂な顔になる。
戸惑いながらも雪河についていく蒼井の表情はなんとも面白く、自分の顔に指をさし自分でも何が起きているのかわかっていない様子だった。
しかし、蒼井はどこの部活にも属していないのにも関わらず女子人気も高い。
その理由は言わずもがなで、容姿がいいからだ。それではなぜ生徒会長の弟ではなく蒼井を選んだのか。
それは……仲がいいからである。雪河のタイプではないがイケメンなのは確かなのでここは妥協という形で蒼井直也を指名したわけだ。
雪河は蒼井を連れて次の場所にたどり着く。
お題を見せ先生は蒼井を見てはOKサインを出して次のお題を出す。
「ありがとね!蒼井くん!」
「うん、全然いいけど……お題とか――――」
そこまで口にした直後、雪河は膝から崩れ落ちてしまう。
「ゆ、雪河さん!?いったいどうしたんですか!?」
「い、いや……大丈夫じゃないけど、大丈夫だよ」
何かに葛藤している様子を横目に蒼井は雪河から離れる。
お題は気になってしまうが、やはり聞ける状況ではない。そう悟った蒼井はどこか納得していない様子でいた。
(まぁあとで聞けばいいか)
そして振り返ることなく、観客席に戻った。
「どうしたんでしょうか!雪河朱音だけとんでもないお題が続いているのでしょうか!一応これで最後のお題!皆さん中々に苦戦していますねぇ!」
四つ目最後のお題が渡されてしまう。
参加している人達もひときわ苦戦している様子。一応ゲームの性質上お題が進むにつれて難しくなっているようでそれはもう雪河を見ていれば理解できるだろう。
そして、問題の雪河の最後のお題は……
好きな人だった――――――。
(何これ?!私の事集中狙いしたわけじゃないよね?絶対おかしいよね?好きな人?そんな人いませんけど?)
跪きながら葛藤している雪河。
好きな人……そんな人物は当然存在しない。それなのに……関口祐介が頭から離れない。どうしてなのだろうか。
(別にそんなんじゃない!これは本当!関口くんは友達で、もっと仲良くなれたらいいなって思ってるだけで……!)
これは雪河朱音の本心だ。
第一、好きな人とは一体何なのか。雪河はそれを理解していない様子だった。
それでも……やはりどうしてか関口が頭から離れない。
離れるどころか、どんどん関口の事を考えてしまい赤面してしまう雪河。
(今回こそは……どうしたらいいのかわからない……そもそも、好きって何!?)
考えれば考える程自分が何を考えているのかわからなくなる始末。
出会ってから今までの事を振り返るように思い出す雪河。
受験当日の校門で出会い、受験を受ける席も隣、入学してからは同じクラスでそこからずっと隣の席。
勉強会もしたし、テストの勝負もした。映画館も行って水族館も行った。ものすごく楽しかった。
きっとこんな楽しい思い出はちょっとやそっとじゃ塗り替えることなんかできないかけがえのないものなんだろう。
異性と二人きりで出かけるなんて今までは考えられなかった。それなのに関口くんとは何故かすぐに行けて嫌な思いなんかすることなかった。むしろものすごく楽しくてこれからも一緒にいたいと思った。
ここで、一つの疑問……以前布瀬と話していた会話を思い出す雪河。
◇
雪河と関口がお出かけをする前日、雪河は布瀬と電話でやり取りをしていた。
「そんなものなのかな~……あ、そうだ!伊藤くんとはどうな————」
ぶちっと電話が切られ、雪河は苦笑する。
そのやり取りをしたおかげなのか、気持ちは和らぎすっと服が決まった。
雪河は寝る前に布瀬にメールを送る。
『ありがとう。おかげで服決まったよ。また月曜日学校でね。おやすみ』
そこから二分くらい経過して布瀬からの返信があった。
『別に何もしてないけど……あ、そういえばもし関口が他の女の事遊んだりしたら朱音はどう思うの?』
「ん?どういうこと?」
この時は絵美里が何を言っているのかわからなかった。
別にただの友達……関口が誰と何をしてようが雪河には関係ない。
そりゃあ目の前で別の女の子とイチャイチャしていたら何か違うのかもしれないけど、恋人でもないのにどう思うとかはないだろ。そう思っていた。
◇
その時は結局絵美里がやっぱ何でもない的なメールが来て何事もなかった気がする。
でも……今、よく考えたら明確に答えが出てきているのは確かだ。
お題の紙を握りしめ、くしゃくしゃになる。
この時、初めて雪河は自覚した。
自分の思いに、心に……明確に――――。
(私……関口くんの事、好きなのかもしれない)
雪河朱音は初めて恋心というものに気づいてしまった。
関口くんが誰かと遊んだりしているのなんて考えられない。嫌だ。
私の事をもっと見てほしい……関口くんはきっとそうじゃないのかもしれないけど、私はもう気づいちゃったから。
そしてゆっくりと立ち上がり、雪河はまた関口たちがいる観客席へと向かった。
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