23話 全員でご飯を食べてるのにイチャイチャする人はだ~れ?
昼休憩に入った関口たち。
全校生徒が入り乱れるので中々席を確保できずにいた。
「席ないねぇ……」
「まぁ全校生徒が血眼になって席の奪い合いしてるくらいだからね」
「その時間が無駄だってなってる人は自分たちの席で食べてるし」
「でも熱いからさすがに嫌だよね」
日陰が多い席が取り合いになるのは必然。関口たちは一瞬自分の席で食べるかと脳裏に浮かぶがすぐに首を振る。
(この暑さの中自分の席で食べてたら熱中症になりかねないしな……ここは是が非でも探したいところ)
と、そこで関口は一つの事を思いつき、伊藤に話しかける。
「なぁ伊藤……さすがにブルーシートとか持ってきてないよな?」
「……?持ってきてねぇけど?何で……あ、そういうことか」
伊藤は関口が何を言いたいのか瞬時に悟る。
周りに聞いていた人たちは小首をかしげるのだが、伊藤が説明を始める。
「全校生徒の皆は空いてる席を探してるじゃん?」
「うん、当たり前だよね」
「だったら俺らで席をつくればいいんだよ」
「「「……あ、そういうことか」」」
無城、蒼井、布瀬はその説明を聞いて納得する。
しかし、先程まで一緒にいた雪河の姿が見当たらない。あたりを見渡し探すのだが、雪河は自分の席から何かをもって駆け足でこちらに来ていた。
「おーい!」
「雪河さん?何をやって……って!?」
「ん?ブルーシート欲しいんだよね?一応持って来てあるんだよね」
「おいおいおい、神かよ」
「朱音って本当に用意周到過ぎるよね」
「雪河さんナイス!」
まさか持っているとは思わなかったので全員驚愕しながらも感謝する。
関口は雪河に「どうして持ってるの?」と聞いたが雪河は至極当然のような表情をしながら一言……「使うかと思って」と発する。それを聞いた全員が素っ頓狂な顔になるのだが、雪河は苦笑しながら続けて言った。
「まぁ結構私余分なもの持ってきがちだから今回はそれが良い方向に持ってってくれたね~」
確かに、体育祭でブルーシートを持ってくる人はめったにいない。
関口はこの時雪河の事をアニメに出てくる有能な黒子なんじゃないかと疑っていた。
◇
そうしてブルーシートを持ち、日陰があるところを探す関口一同。
ちょうどグラウンドの端に大き目の木が立っておりそこの日陰を使うことに。
「こんだけ日陰も大きかったらいいだろ」
「でも大丈夫なの?一応先生に伝えた方が……」
布瀬が少し不安そうにするのだが、横にいた雪河が待ってましたと言わんばかりに言葉を発す。
「それなら大丈夫だよ!ブルーシートを持ってくるとき先生に一応聞いておいたから!」
「「「「「……」」」」」
「……?」
この時、全員雪河の事を感心するのではなく軽く恐怖していた。
(まさか俺のブルーシートって言葉だけでここまで計算して動ける人なんていないぞ?……雪河さんこえぇ……)
重くなりかけていた雰囲気を伊藤が仕切り、ブルーシートを引いて全員その上に乗る。
持ってきた弁当や買ってきた弁当を手に取り全員が一に着く。
右側から、蒼井、伊藤、布瀬、無城、雪河、関口といった感じだ。
準備が出来たので伊藤が立ち上がり、皆を鼓舞するように話す。
「というわけで体育祭午前の部お疲れ様~!午後もがんばろう!いただきま~す!」
「「「「「いただきま~す」」」」」
布瀬は少しむすっとさせながらも場の空気を崩さないためにみんなに合わせる。
のだが……伊藤が座り飯を口に運ぶタイミングで布瀬が不機嫌そうに言った。
「あんた、周りの女子たちにちやほやされてたらしいじゃない」
「……ッ、それがどうしたよ」
「別に~?そんな事より、無城の走り幅跳びすごいよかったよね!」
「ほんとにね!俺もすげぇ驚いたよ!」
布瀬の言葉に蒼井が反応、伊藤は小声で「なんだよ」といいながら頬張る。
無城含め四人は体育祭前半戦の話で盛り上がる。
その隣にいた関口と雪河も二人で盛り上がろうとしていた。
「私達は午後からの種目だけどなんだか疲れちゃったね」
「確かに今日は特段暑いからそれでやられてる人は結構いるっぽいよね」
「それに、関口くんがちゃんと友達のことを応援しててなんだか嬉しくなっちゃった」
「え?俺の事なんだと思ってたの?」
「ふふっ……そんな嫌味のつもりで言ったわけじゃないよ?ただあんな熱い関口くんは初めて見たな~って思って」
雪河は軽く笑い、関口はジト目を向けながらも確かになと納得してしまった。
(まぁ否定はしないけど……そんなに俺熱くなってたのかな?)
少し疑問に思う関口。応援はしていたが自分ではイマイチわかっていない部分もある。
雪河はみたことない関口の一面を見て内心ものすごく歓喜していた。
(どんどん私の知らない関口くんを知れてものすごく嬉しい!私も借り物競争時、応援してくれるかな)
頬を赤らめながら肩を竦め、少し不安になってしまう雪河。
関口はその激しい寒暖差を見て戸惑いながらも飯を頬張る。
そして雪河は心で思っていたことを口にしてしまう。
「その、関口くんはさ……私が借り物競争出てるときもあんな風に応援してくれる?」
「……ッ!?」
なんて破壊力が高い言葉と表情なんだ!赤面させながら上目遣いで言うその破壊力!
綺麗な菫色の髪の毛の毛先をくるくるとさせながらいうそのしぐさに関口はダメージをくらってしまう。
しかし、雪河の言葉のあんな風にというのに引っかかりながらも視線を逸らし答える。
「……そりゃもちろん、全力応援でしょ」
「ほんと!?やったー!なら私一位とれる気がする!」
「大袈裟だよ……」
初々しいカップルのようなやり取りをし二人は何も思っていない。
隣で盛り上がっていた四人は冷えっ冷えの空気になりながら関口と雪河を見る。
伊藤が「お~い」と言葉を投げかけるまで二人の世界に入りっぱなしだった。
「お~い、お二人さ~ん……一応ここ六人席ね?」
「「……ッ」」
伊藤の言葉で二人は肩を竦めながら視線を逸らす。
動きがリンクしているのを見て皆は少し笑う。
「ごめん、別にそんなつもりはなかった」
「わかってるからいーのよ、茶化しただけ」
「んだよ」
そう話すのだが、以前四人の思いは変わらない。
((((マジで早く付き合ってくんねーかな))))
逆にどうして付き合っていないのか不思議なくらいだ。
普通こういうのは恋人同士でするもので、好きと自覚していない互いが行っているのはものすごくおかしなことだ……と伊藤は思うのだが、皆はどうだろうか?
そして、一通り昼ご飯を食べ終えた皆は体育祭の午後の部に入ろうとしていた。
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