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隣の席の雪河さんと関口くん、早く付き合ってもらっていい?  作者: Mini


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22話 無口で無表情の無城くんはよく飛びます

「ほんとに、最後の最後で私の身長をバカにしてきたんだけど」


 障害物リレーから帰ってきて一発目の発言がこれだった。

 蒼井は苦笑しながらもフォローしようとした。


「ま、まぁ運がなかったよね……俺も最初はよかったけどやっぱ運動系が絡むと全然ダメダメだし」

「ね……あんだけたんかきっておいの最後で私の身長をバカにしてきたんだけど」


 障害物リレーから帰ってきて一発目の発言がこれだった。

 蒼井は苦笑しながらもフォローしようとした。


「ま、まぁ運がなかったよね……俺も最初はよかったけどやっぱ運動系が絡むと全然ダメダメだし」

「ね……あれだけ啖呵切っておいて私はあんたに全部において負けたし別にいいわよ」


 そういいながら雪河の方へと抱き着く。

 雪河は宥め、蒼井は伊藤と関口とハイタッチをする。

 そして、伊藤が不思議そうに言った。


「にしても変だよな。別に蒼井は運動神経が悪いわけじゃないのに」

「単純にジャンプすることが苦手なんだよな。走るだけなら全然いいんだけど……」

「ふ~ん……」


 伊藤は頭の後ろで手を組みながら鼻を鳴らす。

 そのタイミングで実行委員が次の種目を発表する。


「さて!続いての競技は走り幅跳びです!選手の方々は指定位置にお集まりください!」


 蒼井は見当たらなかった無城がその指定位置に向かったのだと理解し、楽しそうな顔で伊藤たちを誘う。


「そっか!次は無城か!伊藤と関口一緒に見に行かね?」

「行くっしょ!」

「早くしないといい場所取られちゃうから急ごうぜ」


 関口はそう言いながら雪河と布瀬の事を視界にいれる。雪河は何が言いたいのかをすぐに理解し、布瀬の意見を聞くことなくついていくことを決めていた。


「絵美里!私達も行こ!」

「私達の事を応援してくれたんだもん、言われなくても行くわよ」


 こうして再度全員で応援することが決まり、関口は少し微笑ましくなっていた。


(なんかいいな……こういうの)


 友達が友達の事を忖度することなく応援しに行ったり絡んだりするこの感じ……今までの中学時代じゃ考えられなかったし、きっとこのメンバーじゃなかったらこんな仲良くはなっていなかっただろう。

 そして隣には……君がいる。これは互いが思っている事だった。


(毎日が楽しいなぁ。今までただがむしゃらに勉強を頑張ってきたけど……こうして毎日友達と一緒にいたり、その友達を失望したりさせないためにって考えると緊張もするようになった)


 わかっているんだ。その友達は別に雪河の事なんて期待してないことは。

 ただの友達で、いるだけでいい。楽しんでいるだけでいい。

 これは自分の……エゴってやつなのかもしれない。

 不思議なことに、その緊張っていうのは悪い緊張じゃない。その緊張も全部……関口が晴らしてくれた。


(ここの高校に入ってから……いや、あの受験の日に出会ってからずっと私の傍には関口くんがいる)


 そう考えると……体中が熱くなり、胸の鼓動が早くなった。


◇


(……暑い)


 そう思いながら無城は指定位置に着く。

 蒼井や伊藤と違ってライバルや友達が出ているわけではないのでただいつも通り、息を殺すように過ごすだけ。

 無城明人……彼が望んでいたものだった。



 別に俺は生まれつき何かに秀でた才能はない。

 最近になって学校というものが楽しいと気づいたぐらいだ。

 何も考えず、言われたこと、やらないといけないことをやるだけ。

 それだけなのに。



 次々に人が飛んでいく中、自分の出番が近づく。

 走り幅跳びを選んだ理由は特にない。一番楽そうだったからだ。

 走るのも好きじゃないし、別に飛ぶのも好きじゃない。でも百メートル走るぐらいならすぐ終わるこの競技をえらんだだけだ。

 それでもなぜか、伊藤があの時みんなで男子四百メートルリレー出ようと言ってくれた時は嫌じゃなかったし、なんなら出たいとすら思ってしまった。

 不思議だ。


「それでは次!無城明人!」

「……」


 そして自分の出番が回ってきてスタート位置に立つ。

 すぐ隣では友達たちが応援してくれていた。


「頑張れ~!無城!」

「いけるぞ!」

「いっちょかましたれ!」

「頑張んなさい!」

「応援してるよ~!」


 無城はその言葉を聞きながら言葉を返すことはせず、ただ頷いた。

 友達……友達か。

 今まで無縁だったその言葉が、高校に入ってから天と地が起きたんじゃないかってくらい変わった。


(意外と……いや、かなりいいものだな。友達ってのは)


 競技が終われば皆とハイタッチし喜びを分かち合う。負けても慰めて元気づける。

 今までどうでも良かったのに……今はそんな関係がうらやましいと思ってしまう。


「終わったらみんなハイタッチしてくれるかな」


 そう言葉をこぼすのと同時に、先生が合図を出し無城は走り出す。

 いい走り出しなのかも、順調なのかもわかっていない。けれどこけていない。それだけで十分だ。

 目印があるところまで全力疾走し、飛ぶ。

 着地するのと同時に大量の砂が靴の中に入る。

 そして肝心な結果は……


「二メートル四十五センチ!」


 先生はそう言って周りの人たちは驚いた。

 それは、友達である関口たちも同様。

 高校一年生の平均は二メートル強。四十五センチも余分に飛べたのなら上々だろう。

 暫定四位という好成績を残し無城明人の走り幅跳びは幕を閉じた。


◇


 無城が関口たちの元へと戻り、落としていた視線を上げると全員が手を出して待っていた。


「……!」


 確かに無城は終わったらハイタッチしてくれるかなと呟いた。それでもみんなには聞こえていないはずだった。 

 それなのに……わかっていたかのように、いや……違うな。

 頑張った友達を労うように待っていた。それが嬉しくて嬉しくてたまらなくて……

 いつも無表情で無口だった無城は少し……笑みを浮かべながら全員とハイタッチをした。


「「「「「お疲れ様!」」」」」


 これにて前半の体育祭は終了……一時間の昼休憩が始まる。

 あまり関係ないが今現時点での紅白戦の成績を発表しよう。


 一年生

 紅 百ポイント 白 九十五ポイント。

 関口、蒼井、無城が紅組。布瀬、雪河、伊藤が白組。



「これにて体育祭午前の部終了します。ここから一時間の昼休憩に入ります」


 実行委員がアナウンスで知らせ、全校生徒は各々昼休憩に入る。

 無城もちょうど帰ってきたので全員でご飯を食べようと伊藤が提案をする。


「もうこのまま全員でご飯食べちゃわね?」

「確かに!それがいいかもね!」

「まぁ、朱音がいいならいいよ」

「俺も全然それでいいよ」

「……俺も」


 関口以外のメンバーが了承し、伊藤は関口に視線を送る。


「言わなくてもわかるだろ」

「俺は分かっても他の人が分かんないでしょーが」


 ごもっとものことを言われ何も言えなくなってしまうが、関口もすぐ了承し全員でご飯を食べることになった。

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