21話 どんでん返しの障害物リレー
劇的な百メートルリレーから数時間が経過した現在。
暑さもどんどん増していき、色々な種目が終了した。
関口は体育祭パンフレットを手に取り、次の種目を確認していた。
「次は……障害物リレーで次が走り幅跳びか」
「蒼井くんと無城くんが出るんだよね!」
「そうそう……それが終われば昼飯か」
「絵美里も障害物リレー出るから応援しに行かなきゃ!」
ウキウキでそう言いながら伝えてくる雪河。
関口は思わず笑みを浮かべてしまう。
「……?何で笑ったの?」
「え?笑ってた?」
自分でも笑みを浮かべていたのが分かっていなかったようで雪河に指摘されてしまう。
そして雪河はニコニコしながら関口に言う。
「関口くんはいつもはクール系だけど笑うと可愛くなるよね」
「……どういうこと?」
「ん~?そのまんまの意味だよ?」
(何で私今こんなこと言っちゃったんだろ)
頬を軽く赤らめながら視線を逸らす雪河。
関口は小首を傾げながらその様子を見るのだが、そこで障害物リレーを走る布瀬が遊びに来ていた。
「朱音~!って、もしかしてお邪魔だった?」
「ん?ううん!そんなことないよ!障害物リレー頑張ってね!応援しに行くから!」
「軽く一位とってくるわよ!関口も応援しなさいよね!」
「任せてくれ」
関口は布瀬と雪河が話しているのを見ながら先程言われた言葉を思い出す。
(笑ったら可愛い系……そんなこと言われたことなかったな)
そして今、布瀬と楽しそうに話している雪河を見て納得する。
確かに可愛い。というよりものすごく可愛くて少し羨ましいとも思ってしまう。
しかし、どうしていきなりそんなことを言われたのか……考えてもやはりわからない。
関口は答えを出すのを諦め、席を立ち蒼井の方へと向かっていた。
「お、来た来た!関口~!こっちこっち!」
先に伊藤と無城は待っていたので関口もすぐにそちらに向かい、スタンバイする蒼井を見ていた。
「お、もうすぐ始まるな」
「……楽しみ」
「そういえば無城は障害物リレーの次だけど大丈夫なのか?」
「……蒼井のリレーを見たらすぐに向かう」
「そっか」
無表情で基本無口な無城が楽しみにしているのは珍しい。
というより最近は無表情ではあるが無口ではない。心を開いてくれた証なのか、それともただの気まぐれなのか……どちらにせよ嬉しい限りだ。
そして横では先程の百メートルリレーでの事があったからか結構人気になっている伊藤。
「あの!さっきのリレーすごくかっこよかったです!」
「ありがとう~!照れちゃうな~!」
「次のバスケの試合も見に行きますね!」
「そんじゃ俺もっと頑張っちゃおっかな?」
伊藤が周りの女子たちにデレデレしていると……その女子たちは少しおびえながらそそくさとその場を離れる。
そしてものすごい痛い視線を感じ後ろを振り返ると、赤いツインテールの髪の毛がメラメラとしており、その正体が布瀬だと気づく。
「……い、いったい何の御用でしょうか……」
「別に?私もこの種目だからここに来ただけですけど」
「そ、そうですか……頑張ってください……」
伊藤は別に何も悪いことはしていない。それでも布瀬の態度を見てどうしてか怯えてしまった。
そこから数分が経過し、障害物の配置が完了……もうそろそろスタートしようとしていた。
奇しくも同じタイミングで走る布瀬と蒼井。百メートルや四百メートルリレーといったガチンコ勝負以外の種目はどこも男女混合。
「布瀬さんじゃん、これは負けてられないね」
「私だって!このために練習頑張ったんだから!」
互いにリスペクトしながらスタート位置に着く。
先生の合図とともに走りだし、最初の関門……網網地獄に直面する。
「さぁ!始まりました障害物リレー!最初の難関、網網地獄!二十メートルの網網を抜けた先はすぐ!聳え立つ壁!」
「なんでお前が実況始めるんだよ」
伊藤が小指を立て、マイクを持っている風にしながら実況をはじめ関口はすかさずツッコむ。しかしそんなツッコミに意を介さず続ける。
「実況は私伊藤康彦と、解説の関口くんでお送りしたいと思います!」
「何でだよ」
「では、解説の関口くん……今回の布瀬絵美里と蒼井直也との対決……一体どう言った所に注目ですか?」
「そうですねぇ、蒼井は持ち前のゲームセンスを活かしてどう突破していくか、布瀬さんは運動センスでかなり見どころはあると思います」
言い返しても無駄だと気づいた関口はこれならとことん乗ってやろうと思い解説を担当。
蒼井は生粋のゲーマーでFPSの世界ランカーとか……こういう戦いなら運動部相手にも分がある。
「おおっとここで!先に抜けたのは蒼井直也!それに続いて他クラスの人たちも続々とクリアしていき、布瀬絵美里は少し苦戦か!」
まさかの帰宅部が先行する形に周囲は少し驚きながらも女子たちは黄色い声援を上げる。
それに対し伊藤はすかさず実況で反応。
「おっとなんですかねこの黄色い声援は……私の時はなかったような気もしますが……しかし次の聳え立つ壁に阻まれ徐々に抜かされていく蒼井選手!なんとも滑稽です!」
「贔屓実況は嫌われるぞ~」
「さぁ!最下位だった布瀬絵美里が壁を上り一気に一位に躍り出た~!次のポイントはそのまま下り坂ののち、ハードル走ゾーンに突入です!」
「障害物リレーって何メートル走なのこれ」
「合計二百メートルとなっております!」
「普通にめっちゃきちぃじゃん」
蒼井は中位を維持しながら進み、ハードル走に突入……布瀬はそのタイミングで抜け出して最終エリアに突入しようとしていた。
しかし、ここで問題が発生。
「……な、なによこれ……こんなの無理じゃん」
まさか最後に待ち構えていたのはパン食い競争。
これはジャンプ力を試される競技なのだが、布瀬の身長はかなり小さめの百四十八センチ。
低身長では難しい競技に絶望してしまう布瀬。
何度もジャンプするがやはり届かず。
「最後にこんなのってありなの?」
身長が低いという理由でそのパンを下に下げてもらえることはない。
布瀬は何かないのか探すように辺りを見渡す。
そうこうしているうちに段々と人が集まってきており、身長が高くてもうまくつかめずに苦戦。
「頑張って!絵美里!」
大きな声を上げて客席で応援する雪河を見て火がつく布瀬だが、このままじゃどうしようもない。
万事休すかと思われたが……人が集まってきてパンの個数も増えてきた。そのパンに個体差があると気づき少し長めのパンに飛びつく布瀬。
先をうまく噛めば掴めると分かった布瀬は何度も挑戦するが最初にゴールテープをくぐる人物が現れる。
「最初にゴールテープをくぐった選手は蒼井でも布瀬でもない!三組の国川だ~!」
そしてどんどんクリア者が現れ、なんと蒼井は七人中六位。布瀬はその次の七位のドベ。
それでも蒼井に対する黄色い声援は止むことがなく、身長でも人気でも順位でも負けた布瀬は雪河に泣きつくのだった。
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