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隣の席の雪河さんと関口くん、早く付き合ってもらっていい?  作者: Mini


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2話 人気者の雪河さん

 五月十七日。季節は春を終え、梅雨に入ろうとしているのだが……最近は暑さが増しており、もう夏なんじゃないかと思ってしまう程に暑い。とにかく暑い。


「あっつ~」


 下敷きをパタパタと仰ぎながら話す関口。

 前には椅子の背中を前にして座り込む一人の生徒、そして関口を囲い込むように二人の生徒が立っていた。


「お前らそろそろ席座れよ」

「まだ授業始まんないからいーじゃん」

「お前の席すげぇ涼しそうじゃん、窓際だし!」

「……」


 関口の前に座っている男子、名前は伊藤……陽キャでバスケ部だ。囲うように立っている二人の生徒、帰宅部だけどイケメンだから女子に人気があるとかいう少しけしからん蒼井。そして今、ぼーっと黙っている生徒が無城。


「そういえば最近ショート動画で見たんだけど、これ見てみろよ」

「お前、ずっとそんなんばっか見てんのか?」

「いーだろ?他にする事ねぇんだし」

「知ってるか?そういう奴の事ドパガキっていうらしいぜ」


 伊藤と蒼井が話しているのを横目に聞きながらぼーっとしている無城に話しかける。


「お前、何考えてんの?」

「別に……考えるのも労力の無駄だから何も考えてない」

「そうか。勉強とかはどうしてんの?」

「そういうのは必要だからする」

「なるほどね」


 必要なことだけをやり、不必要なことは無で通す。とても理にかなっていて嫌いじゃない。むしろ好きな方だ。

 伊藤が次に無城の方に近寄って携帯を見せる。


「な、お前はどう思う?面白くね?これ」

「うん、面白いと思うよ」

「だろ!?」


 無城の無表情で無関心な言葉に舞い上がる伊藤。蒼井と関口はそれをジト目で見ながら呆れていた。


「な、なんだよ」

「お前ってほんと幸せそうな人生送ってんな」


 蒼井がそう言うと、伊藤は人差し指を立て関口たちに向けながら口を開く。


「お前、さっき俺にドパガキとか言ってたな!でもお前らみたいなやつは冷笑界隈っていうんだぜ?やめた方がいいぞ」

「おーそうか」

「覚えたての言葉ってすぐ使いたくなるもんなわかるー」

「……」


 これまた無慈悲にも流されてしまい、伊藤は怒りを収めるように自販機で買った飲み物を飲む。


「グミ食うか?」

「食う……」

「「チョロ……」」


 蒼井が少し申し訳なさそうにグミを渡し、それを受け取る伊藤。

 珍しく無城と関口の言葉が重なるが二人はそれに気づいていない様子。

 そんな他愛のない日常が居心地がいい。そう思っていた。

 関口はふと少し騒がしくなっている廊下側の方に視線を向ける。


(雪河さんかな?)


 雪河さんはその場所を通るだけで歓声があがったり、皆が盛り上がったりするすごい人だ。

 案の定、雪河さんが来ており……色々な人と話しているのを目に入れる。


「雪河さんって、めちゃくちゃ人気だよな」

「ほんとすごいよ。完璧って言葉がよく似合うよな」

「……」


 伊藤と蒼井はグミを食べながら廊下を眺めるが、席に座っている関口に目が行き二人して目をにやにやさせながら言った。


「お前、雪河さんと仲いいよな?」

「もしかして好きなの?」

「はぁ!?何言ってんだよ!んな訳ねぇだろうが」

「お、祐介が珍しく声を荒げた」


 伊藤の言葉に関口は何も言えず、図星だった。

 視線を逸らし、頬杖を突きながら窓を眺めながら呟くようにして言った。


「そもそも、俺と雪河さんじゃ釣り合わねぇよ」

「そうか?別に俺はお似合いだと思うけど」

「根拠もねぇくせによく言うよ」


 伊藤がそう言い、関口は不機嫌そうに言い返した。

 伊藤とは小学校からの付き合いだ。互いに冗談を言い合える仲だし、普通の幼馴染だ。

 


 もうそろそろ休憩時間が終了する時間だ。

 そのぎりぎりに雪河さんはやってきた。尊敬もされるだろうし、頼りにされている証拠なのだろう。

 嫌な噂なんて一回も聞いたことないし、入試の試験もトップで本当にすごいと思う。

 でも……何故だろうか。完璧とは思えなかった。その理由は分からない。

 当然だ。まだ入学して一か月足らずしか経っていない。むしろその一か月で学校の人気者になっているのがとんでもない。



(そういえばもうすぐ高校に入って最初の試験か……)


 伊藤たちが自分の席に戻っていくのを見ながら関口はそんなことを考える。

 そうこうしているうちに雪河が教室に入り、隣の自分の席に座る。


「どうしたの?関口くん」

「あ、いや……何でもない」


 目が合いパッと逸らす関口を見て雪河は首を傾げる。

 何故目線を逸らしたのか関口自身わかっていないが、パッと後ろの黒板に書いてある時間割を見て次の授業の準備をする。


(次は……化学か)


 机の中から化学の教科書を取り出す。

 そして隣からの目線を感じた関口はゆ~っくりその目線の方を見る。


「なんだよ」

「別に~?」


 にやにやと笑みを浮かべながら見てくる雪河に関口は戸惑うも、やられっぱなしは嫌だったので少しちょっかいを出してみることにした。


「そういえば雪河さん。もう少しで定期テストだけど……テスト勉強の方はどうなの?」

「どうなのって?別に普通だけど……」


 唇に手を当てながら答える雪河。

 関口はふ~んといいながら窓の方に視線を向けようとして……


「もしかして、一緒に勉強したいの?」

「……ッ誰がそんなこと言ったよ!」

「えー、私は一緒に勉強したかったんだけどな……」


 少し悲しそうに言う彼女の姿を見て何故か申し訳ない気持ちになってしまう。

 またもしてやられてしまった。

 額に手を当てる関口。


「わかった……俺の負けだよ。冗談はその辺にして————」

「冗談でもなんでもないけど?」

「はい?」

「だから、一緒に勉強しようよ。せっかくだからさ」

「はい?」


 よくわからないことを言われ思考停止。

 困惑しながら雪河は話しかける。


「あの、だから……一緒に勉強しようって、聞いてる?」

「うん、聞いてる。でも、は?」


 理解はできる。そのままの意味だから。

 でも、はい?こんな急展開があっていいのか?


「いつ勉強会する?今週の土日?それとも学校が終わった放課後とか?」

「う、うん……いつでも合わせるよ」


 とんとん拍子に決まっていく勉強会。関口はこれが人気者の性格か。と考えながらもそれを見ていた周りの人たちの心は同じことを思っていた。


「「「なんでこいつら付き合ってねぇの?」」」


 結果、互いに数人の友達を呼んで勉強会をすることになりました。

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