19話 体育祭当日の朝も忙しいです
梅雨の時期も終わりを迎え、本格的に暑くなったなと感じさせる七月五日。
本日は体育祭当日。前日まで練習を重ね問題ない所まで仕上げることができた雪河と関口。
関口はいつも通りの時間に寝ていつも通りの時間に起床し、学校に行く準備を済ませる。
「それじゃ、いってきます」
「「いってらっしゃい」」
姉と母に見送られて家を飛び出し、いつも通り伊藤が待っている場所へと向かう。
そして合流したはいいものの……
「おう……おはよう関口。よく眠れたか?」
「お、おうおはよう伊藤……俺は眠れたけどお前は全然眠れなかったみたいだな」
「楽しみ過ぎて寝れなかった」
「ガキかよ」
げっそりした顔でとぼとぼと歩く幼馴染を見てジト目を向け少し心配する関口。
いつもはそのまま学校へ向かうのだが伊藤がエナジードリンクを買いたいというので近くのコンビニに向かうことに。
コンビニに到着し、二人は少し驚いた。
◇
「おはよう絵美里……って、どうしたの顔色凄い悪いよ」
「……ワクワクしすぎて眠れなかった」
「子供じゃん……」
こちらも同じ会話をしていた。
布瀬はウィダーゼリーを飲みながら歩き、雪河に聞く。
「朱音って紅組だっけ」
「私は白だよ」
「私と同じか……伊藤と関口は?」
「伊藤くんは白で関口くんが赤じゃなかったかな」
「ふ~ん……伊藤と同じか」
布瀬は「けっ」といいながら視線を空に切る。
一応この体育祭にも紅白というものはあるがさほど重要ではない。全校生徒が見ているのはほとんどが個人成績か楽しむかの二択。
教員らもそれらは理解しているので生徒たちに何らかの競争を促すんじゃないかと言われているんだとか。
「あ、やっべ……」
「……?どうしたの?」
「飲み物家に忘れた」
カバンの中をガサゴソと漁り、何かを忘れたことに気づく布瀬。
肩を竦めながら助けを求めるような顔をする布瀬に雪河はコンビニに行くことを提案し二人はそちらへと向かった。
◇
「「「「あ……」」」」
奇しくも全員の第一声は同じだった。げっそりとした顔をしている伊藤と布瀬。
関口と雪河が互いの相方を見てすぐに察する。
「おはよう雪河さん」
「お、おはよう関口くん……奇遇だね」
「そうだねぇ……まさか布瀬さんも伊藤と同じだったとは」
伊藤と布瀬は黙ってコンビニに入っていき、関口と雪河はコンビニの外で会話していた。
いつもなら喧嘩をしている二人だが、朝だからなのか……それとも二人ともそれどころではないからなのか、互いの事を見様ともせず息ぴったりにコンビニに入っていったので関口は少し不思議そうに見ていた。
「まぁ二人は似てるからね」
「似てる……確かに似てるかも」
「いつもは喧嘩してる二人だけど、多分互いの事は互いが一番わかってるんじゃないのかな」
「そうかも」
そう言われてみれば納得ができるかもしれない。
関口は軽く笑いながら言葉を返すのだが……話すことがなくなってしまった二人は少し気まずそうにする。
関口は視線をあちこちに飛ばしたり、雪河は自分の髪の毛の毛先をくるくるとする。
(今まで通学路で関口くんと朝会うことはなかったからすごく嬉しいな……私、今顔がすっごく赤いかも……!)
(まさか雪河さんと会うとは思わなかったけど、なんでだろう。すごく気まずい)
雪河は自分の顔を見られたくないと思いながらも関口の顔を見たいと思考してしまうのだが、関口はどうも雪河の方を見ない。
(……むぅ)
これにはさすがに少しむっとしてしまう雪河。
しかし関口がそう言う人間だというのも知っているので切り替えて話しかける。
「今日、体育祭だけど……調子の方は大丈夫?」
「ん?あぁ、全然大丈夫。むしろいつもより頭が冴えてる感じがするよ。雪河さんは?」
「さすがだね、私は正直……少しだけ緊張してる」
(緊張……まぁ中間テストの時もしてたし珍しいというわけではないか)
この緊張もまた、学年トップからくる緊張なのだろうか。
それとも二人三脚や個人種目の借り物競争なのか。関口は視線を向けることはせずそのまま聞いていた。
「緊張って、二人三脚?」
「……ッ」
この反応はどうやら当たっていたらしい。
頷くように視線を落とし、肩を竦めながら頬を赤らめる雪河。そんな反応を見せられてしまえば関口も少し意識してしまう。
(せっかく考えないようにしてたのに……少し意識しちゃうと心臓がいたくなるんだよ)
関口は頭を軽く掻き、会計している伊藤の方に視線を向けて口にする。
「ま、まぁなんとかなるよ。練習ではかなり良かったんだし……」
「う、うん……そうだね」
雪河は気づいてしまった。二人の大きな課題を。
練習と本番では天と地の差がある程の違いがあることを理解していた。
じっと見つめてくる雪河の視線に関口は気づきそちらの方へと向く。
すると目が合わないようにすっと逸らす雪河。はたから見れば初々しいカップルにも見えてしまうその行動はコンビニから出てきた二人の目にも留まり、ジト目を向けられてしまう始末。
「何やってんのよバカップルじゃん」
「ほんとそれな。二人のそれ見てると目が覚めそうだぜ」
「「……ッ」」
伊藤と布瀬のコンビネーションアタックに二人は悶絶するように攻撃をくらう。
関口は軽く赤面しながらも慌てて訂正する。
「ち、違うだろ!なんでそうなるんだよ!ね?雪河さんからも何か言ってやってよ!」
「私は別にいいけどね?」
「あ、もうだめだこれ……」
手をもじもじさせて上目遣いで気恥ずかしそうに言う雪河を見て関口は諦める。
朝から何をやってんだよと思いながらも学校に向かう四人。
門をくぐると大きな文字で体育祭と書かれ、中学生とは比べ物にならない程の大型イベントが始まるとワクワクさせる程だった。
眠そうに門をくぐっていた布瀬と伊藤がものすごくテンションを上げていつも通りに戻る。
「すっげ~!はやく教室行こうぜ!」
「何言ってんだよ伊藤、今日は教室行く予定はねぇぞ?」
「あれ?そうだっけ?」
「このまま私達は指定された場所に向かって席で待つらしいよ」
「あ、そういえば昨日先生がそんなこと言ってたな」
「はぁ……あんたってホントにバカよね」
「あ!?お前今バカって言ったな!」
「バカバカバカ!」
先程までおとなしかったのに……と雪河と関口は思うのだが人がどんどん集まっているのを見て二人も少しテンションが上がる。
と、そのタイミングで集合時間になり……体育祭の最初の挨拶が始まろうとしていた。
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