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隣の席の雪河さんと関口くん、早く付き合ってもらっていい?  作者: Mini


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17/33

17話 体育祭に向けての練習は完璧らしい

 体育祭まで残り三日になった。

 一応毎日練習はできて徐々に良くはなってきている……と思う。

 四百メートルリレーの順番も決まった。

 第一走者蒼井、二走者目に無城……そして伊藤にアンカー関口と言った所だ。この話し合いも中々に苦労したものだが雪河の介入もあり穏便に済ますことが出来た。

 しかし問題は……やはり二人三脚だった。今日も初めに紐で結ぶという事はせず雪河が「いける!」というタイミングですることに。


「そういえば借り物競争の方の練習は大丈夫なの?」


 関口がそう尋ねると雪河は笑いながら言葉を返す。


「前日にちょっとしたリハがあるくらいでがっつり練習はないから大丈夫だよ!逆にリレーの方は大丈夫なの?」

「まぁ伊藤からバトンを受け取るだけだし、その練習ならちょくちょくしてるから平気かな」

「そっか、にしてもすごいよねぇ……無城くんと蒼井くん、初日は結構苦戦してたみたいだけど今かなり完璧に近いじゃん?」

「俺らもあれぐらい完璧にするでしょ」

「できるかな~」


 雪河は肩を竦めながら苦笑する。

 実際、関口は鼓舞するつもりで言ったがはたから見てもほとんど練習はできていないしそれは本人たちが一番理解していた。


(まぁ運動神経は悪くないし、俺も雪河さんも変に意識してるからだと思うんだけどな)


 体は密着し、互いの手が体に触れるあの感じ……意識しないはずがない。

 昨日は一応二十メートル進むことに成功したがまだまだ足りない。あと三十メートルは進めなきゃダメでそれをなるべく早くしないといけないので時間が足りない。

 関口は頬杖を突き解決策を考え雪河はその横顔を眺める。


(私達のために色々考えてくれてる関口くん……可愛いなぁ、そして横顔も可愛くてかっこいい。いや、そんなこと考えてる暇はないよ私……でもあとちょっとだけ……)


 罪悪感はあるかと問われたら当然ある雪河……なるべく意識しないように、考えないようにはしているがそれでも二十メートルしか持たなかった。

 もっといい解決策を考えても中々思いつかない。

 正直に言ってもうあとは慣れ……そう思っていた。

 ……と、そこで部活動を終えた伊藤と布瀬が喧嘩しながら登場する。


「絵美里、もう部活は終わったの?」

「うん!体育祭も近いからね~、早めに上がらせてもらったの!」

「おう関口!練習の方はどうよ?」

「まぁ見ての通り、変わらずって感じだな。急ぐ必要はないと思うけど」

「けど?お前のその感じじゃ、そろそろ練習に集中できずに解決策を考えてるんじゃないの~?」

「……茶化しに来ただけならお前も蒼井と無城の所行ってバトンの受け渡しして来い」


 頬杖をつきながら視線を向けずに話すが、見なくてもわかるにやけ顔を向ける伊藤にようやくジト目を向ける関口。


「なんだよそんなにきもちわりぃ顔して」

「そんなことを言う子には教えてあげません!」

「何その親みたいな言い方は……んで、なんだよ?」

「知りたい?知りたいか?知りたいよなぁ!いいだろうこの伊藤くんが教えてあげましょう」


 むかつく言い方をする伊藤だがそれには触れず黙って聞くことにした。

 すると伊藤は布瀬と雪河の方に視線を向けて話し出す。


「結局のところ君らの悩みってさ、互いを意識することでしょ?体が触れたり密着したりするからって」

「うん……まぁそうだけど」

「布瀬と話してたんだけどさ、それをしなきゃいいんじゃねって思って」

「それ?」


 素っ頓狂な顔になる関口……まだ何を言われているのかわからない。

 しかし、隣にいた布瀬も口を開き説明を始める。


「要するに、体を密着させたり触れたりしなければいいって事」


 布瀬のいう事に納得した関口は顎に手を当てて思考を始める。


(なるほど、確かにその理論ならいけるか)


「それに二人は運動神経もいいっしょ?だから全速力じゃなくてもある程度の速さは出ると思うんだよね」

「いや~でもそれ結構難しいんじゃない?」

「雪河さんならいけるって!」

「聞いてよ!朱音!伊藤がさ……」


(確かにタイミングや互いの速さを色々と調整しないといけないが、布瀬さんと伊藤が言ってたやつは試す価値がある)


 伊藤と布瀬は何やらまた言い合いをしているが関口はそんなのに構わず口を開く。


「やってみようか。雪河さん」

「え?ほんとにやるの?」

「まぁ無理だったらまた考えればいいよ。今はどんな策でも試してみるほかはないと思う」

「そう、だね。確かに……時間もあるわけじゃないしね」


 関口の言葉に納得した雪河は紐を持ち、互いの足を結ぶ。


「結びながら聞いてほしいんだけど、これはかなり難しい……互いの走り出すタイミング、足の速さ、全部がかみ合わないと失敗する。最初は七十パーセントくらいの力で走ってみてほしい」

「わかった……よしっ、できた」


 結び終わった二人はスタート位置に立ち、軽く深呼吸をする。


(関口くんの言う通り、今は色んな事を試さないといけない。でも……こんな時なのに、いやこんな時だからこそ……真剣になってる関口くんがかっこよすぎてやばい!)


 そんなことを考えながらも体は真剣だった。

 絶対に失敗できない状況に近いはずなのに、先程の関口の言葉があったからか……体は妙に落ち着いている。


「ほんとに大丈夫なの?結構無茶ぶりだと思うんだけど」

「一応提案したのは俺らだけどね」

「わかってるけど、策の一つだよって伝えただけなのに」

「関口はそういう人間だよ。どんな無茶な策でもとりあえずやる。もしだめでもどこかを修正したらできるかもしれない。面白いでしょ?」

「かなりね」


 布瀬は腕を組みながら二人を見守り、伊藤はスタートの合図を出すため関口と雪河に近づく。

 そして伊藤は手をあげて、勢いよく振り下げ二人は走り出した。


(よしっ……出だしは順調……)


 雪河の速さに関口が合わせる感じでスタートし徐々に慣れてきたら速くするスタイル。

 十メートル行く頃には二人はすっかり慣れていた。

 互いの体は密着ではないが触れそうな距離感……そして腕は回さない。

 腕を回すタイミングは互いが互いの事を頭から外した時。


(え、できてる!走れてる!なんか……行ける気がする!)


「お、おい……無城見てみろよあれ……」

「……お、すごい」


 バトンの受け渡し練習をしていた二人も手を止めて関口と雪河の走りを見届ける。

 二十メートルを超えたところで二人はさらに加速して失速することはなかった。

 そして三十メートル付近でほぼ同時に二人は腕を回す。今までは腕を回すだけで緊張していた二人だがそんなことはなく、走りだけに集中でき四十メートル……五十メートルを走り切る。


「ゴール!すごいじゃん二人とも!しかもめちゃくちゃ早いし!」

「……やった。できた!ゴール出来たよ関口くん!」

「うん!ナイス走りだったよ!雪河さん!」


 そこで二人はようやく腕を回していることに気づき、赤面し視線を逸らす。


「いや~本当にできちゃうとはね」

「今みたいな感じで本番も走れば大丈夫そうだね!」


 布瀬と蒼井もそう話し、紐をほどきながらも雪河は一つの提案をする。


「私もう少し早めに走れるけど今みたいな感じでよかった?」

「うん、今のでいいと思う。二人三脚は一人で走るのと当然違うからほとんどの人が遅い。それをこの速さで走れてたら十分だよ」

「それもそうだね」


 雪河の心臓はもうバクバク……赤面させながらも関口の言葉に納得してすぐ布瀬の所に近寄る。


「はいはい。よく頑張りました」


 布瀬は雪河の頭を撫でる。

 ひとまず走れたという事が一番大きい。あとは何回か走ってなれる……これが課題だ。

 関口は一通り頭の中で整理し、体育祭の練習はほとんど完璧といえるほどまで成長した。


 まだ、重要な課題があると二人は知らずに……。

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