14話 好きっていう定義難しくね?
雪河と遊んでから一週間以上が経過した現在。梅雨シーズンに入り天気の悪い日が続いていた。
「今日の体育、体育館で隣のクラスと合同なんだってよ」
「ふ~ん、まぁ外は雨だしな」
「それで?なんで俺達は教室にいかずにこんな所にいて黄昏てんのよ」
「……」
少し長めの昼休憩……関口、伊藤、蒼井、無城……基いつものメンバーは旧校舎の渡り廊下で並んで外の景色を見ていた。
沈黙した空気が続く中、いつも通り伊藤が携帯を触りながら意味の分からないことを口にする。
「なぁ、お前らって好きな人出来たことあるか?」
「まぁそりゃね」
「俺はねぇな」
「……俺も」
「まぁ関口は分かるけど……え!?無城お前、好きな人出来たことないのか!?」
驚く伊藤……他の面々は「こいつにあると思うのか?」と失礼なことは言わずにそのやり取りを黙ってみていた。
これ以上は変に気まずい雰囲気が流れてしまうと感じ取った蒼井は食い気味に話す。
「それで?その好きな人がどうしたの?もしかして、伊藤にも出来たのかよ?布瀬?」
「死ね」
蒼井の言葉に瞬時に暴言を返す伊藤。溜息を吐き視線を逸らしながら口を開いていた。
「なんであいつの話が出るんだよ。ちがぇよ……ただふと思ったんだよ」
「思った?」
「何が?」
「……」
「好きっていう定義ってクソ難しいなって」
「「「……」」」
「何で黙るんだよ!」
伊藤からかけ離れた定義という言葉に三人は黙りこくり、伊藤は怒鳴るように言った。
蒼井は苦笑しながら言葉を返す。
「いや~……ねぇ?何でそんな急に定義とか考えてんのよ」
「簡単な話だよ。好みイコール好きだけどそれが絶対付き合いたい相手にはなり得ないってこと」
「ふ~ん……確かに、たまには面白い事を言うんだな。関口はどう思う?」
「どうって……まぁ言いたいことは分かるよ」
「……」
蒼井が関口に投げかけ、関口は考えるように手を顎に当てる。
(好きっていう定義か……確かに考えたこともなかったかもしれない)
伊藤の話したことは正直かなり共感できる。
見た目の好み、性格の好みの人がいても付き合いたい相手かどうかはまた話が変わってくる。
「伊藤のを見て毎回思うのがさ、好みのタイプでは決してないわけじゃん?」
「確かに!清楚が好きって言ってたのにギャルっぽい人と付き合ってたよな」
「それって、何で?」
蒼井と関口はそう話し、視線は伊藤に集まる。
伊藤は考える動作などしずに即答で答えていた。
「好きになったから」
「そう。結局はそこなんだよ。好みは好みでも結局好きになった人が好き。ってこいつを見てて思う。もちろん全員が全員そうじゃないけど」
「なるほど……だから伊藤は好きっていう定義を話にあげたのか」
「まぁなんか俺の話になっているのはおいといて……そういうことだよ。男女の友情が成立するしない論争あるだろ?あれに近いもんだと思ってる」
そこまで話したことで、いつも話に入ってこない無城が珍しく口を開く。
「……結局のところ下心の問題じゃないかな。そうなった時点で終わりというか」
「ハハハ確かに!その点伊藤は下心しかねぇけどな!」
「は!?お前恋愛舐めんな!」
「伊藤~、蒼井に恋愛面で喧嘩売るのはやめた方がいいぞ。こいつ結構モテるから」
「マジで!?」
関口の発言に伊藤は目を丸くしながら驚く。そして蒼井の方へと視線を向けるととんでもないむかつく顔でサムズアップ。
伊藤は「ぐぬぬ」と歯ぎしりを立てながら悔しそうにする。
蒼井は伊藤の様子を気にも留めることはなく空に視線を切って話していた。
「でも確かに、あの子いいなとかこの子いいかもって思っても付き合いたいなって思った事はあまりないかも」
「今から革新的なことを言ってやろうか?」
関口は何かを悟ったようでジト目を向けながら話す。
他三人は少し期待した様子で見ており……
「恋愛に興味があるかどうか。要は人次第って事だ」
期待した視線は一気になくなり、雨というのも相まってどんよりとした雰囲気が四人を囲っていた。
「お前、それ言っちゃおしまいだろ」
「会議とかそういうの絶対に向いてないな」
「……俺もそう思う」
話しているうちに昼の休憩時間は終わりを迎えようとしており、四人は教室に戻る。
その道中、あんな切り方をした関口は一人考え込んでいた。
(好きっていう定義……か。みんなの言いたいことは分かる。でもまぁ俺好きな人とか出来たことないからな……)
そう心の中で呟き、一人の人物が脳裏にちらつく。
(……雪河さんはそういうのじゃないし!)
少し頬を赤らめながら視線を逸らす。
我ながら何をやっているのだろうか。
(友達……そう!雪河さんも俺の事友達だって言ってた。それだけの事じゃないか)
自分の頭にそう言い聞かせる。しかし……以前遊びに行った記憶……そして聞き取れなかった言葉を思い出す。もし仮に、あれがそう言うものだったらどうしようと……そこまで考えて軽く首を振る関口。
(いや、ないな。もしそうだったらまたいうだろうし)
四人は自分たちの教室のフロアまで到着し、前方から歩いてくる雪河に視線が行く。
「雪河さんだ!」
「お、伊藤くん!ご飯は食べ終わったの?」
「まぁね~!」
「相変わらず人気者だねぇ雪河さんは」
「そんなことないよ!無城くんもやっほ!」
「……」
一通り挨拶を交わし、雪河達はこの後の体育の授業に向けて別教室へと向かう。
そして雪河と関口はすれ違った。
「(また後でね、関口くん)」
「……ッ!?う、うん……また後で」
どうして今こんなにドキドキしたのだろう。
自分でもわからないまま関口は自分の教室へと戻り、着替えを始めた。
◇
何事もなく数週間が経過し、また一回り熱くなった現在。
一学期最後のイベントが始まろうとしていた。
担任の先生が壇上に立ち、発表をする。
「お前たちには今から、体育祭の話し合いをしてもらう。」
「体育祭?先生!体育祭って二学期からじゃないんですか?」
一番前の席に座っていた生徒が先生に質問をする。
全員体育祭は二学期に行うと思っていたのだが、どうやら生徒会の議題でそれが変更になったらしい。
「生徒会で話し合いが行われてな……体育祭を一学期のこの何もない期間にするのがいいと判断した。理事長も賛成しているので決定事項だ」
先生の発言に全員、テンションが爆上げ。
「よっしゃ~!確かに二学期は文化祭もあるし超大変だからこの変更はいいな!」
その中でも一番嬉しがっているのは伊藤康彦……関口の幼馴染だった。
伊藤は喜びを分かち合おうと関口の方に視線を向けるが、視線を逸らすという事はせずただじっと見つめているだけだった。
「(楽しみだね……体育祭)」
「(うん、そうだね)」
肩を竦めながら嬉しそうに言う雪河を見て関口は思わず心の中でこぼしてしまう。
(かわい)
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