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番外編:カスパールとローゼリアの『はじめて』の異世界デート


佐倉家での日本滞在も中盤に差し掛かった、ある日の午後。


白亜の城では考えられないほど賑やかな日本の街の喧騒に、私たち五光の勇者もすっかり慣れてきていた。


そんな中、私の目に止まったのは、こっそり、いや、本人たちは必死に隠してるつもりだろうけど、見てるこっちからしたらもうバレバレな、我らが推しカップル、カスパール君とローゼリアちゃんの甘酸っぱい恋模様だった。彼らの間から漂う、甘く初々しい空気は、隠しきれるものではない。





―――事の始まりは、カスパールが普段の彼からは想像できないほど、内心ではそわそわと落ち着かない様子で、アルドロンの書斎を訪れたことだった。


「アルドロン…その、少々、相談したいことがある」


「ふむ。珍しいな、カスパール。一体どうした?」 アルドロンは、インスタントラーメンの空き容器を片付けながら、怪訝な顔でカスパールを見た。


和室に漂う、独特の化学薬品と、わずかなラーメンの匂いが、二人の間の緊張感をさらに高めるようだった。


カスパールは、顔をわずかに赤らめ、普段よりも低い声で呟いた。


「ローゼリアが…日本の『可愛い』ものに目を輝かせているのを見て、その…奴を、もっと、この世界の…ええと、娯楽施設に…連れて行ってやりたい、と…思案している」


冷静沈着を装うカスパールの口調が、少しだけども乱れている。

その言葉の選び方から、彼がどれほどこのことに心を砕いているかが伝わってきた。


アルドロンは、その様子にニヤリと口角を上げた。


「なるほど。それは実に興味深い『社会的行動』の研究テーマだ。任せておけ、カスパール。最高のプランを立案しよう。お主の琴線に触れるような、効率的かつ合理的なデートプランをな!」 そう言い放つアルドロンに、カスパールは「…チッ、頼む」と短く応じ、そそくさと自室へと戻っていった。


彼の足取りは、いつになく軽やかだった。その背中からは、隠しきれない喜びがにじみ出ているようだった。




そして数日後、待ちに待ったデートの日がやってきた。


佐倉家の玄関に現れた二人の姿に、皆が目を見張った。

玄関に差し込む午後の光が、彼らの姿を一層輝かせている。


「カスパール君!今日は楽しみね!」


ローゼリアは、日本滞在中にショッピングモールで選んだ、桜色の可愛らしいワンピースに、白いカーディガンを羽織っていた。


柔らかな生地が彼女の肌に優しく触れているのが見て取れる。


髪には、日本の雑貨店で購入したキラキラのヘアピンが、彼女の淡いピンク色の髪によく映えている。


全身から、今日という日への期待と喜びが溢れ、その笑顔は春の陽光のように眩しかった。



カスパールも、いつものワイルドなテイストでなく、ネイビーのジャケットに、白いシャツを着こなしている。


首元のボタンを一つ開けているのが、彼なりの抜け感を演出しているようだった。


普段の彼からは想像できないほど、少しだけ口角が上がっているのが見て取れた。


「ああ。特に、その…場所が広いだろ…迷わないようにしろよ!俺から離れるなよ、お前…」 カスパールの言葉はぶっきらぼうだが、その眼差しは優しくローゼリアに向けられている。


彼の瞳の奥には、彼女への深い気遣いが宿っていた。


「ふふ、大丈夫よ!カスパール君がいてくれるなら!」 ローゼリアはそんなカスパールの言葉をものともせず、嬉しそうに彼の腕に自分の腕をそっと絡ませた。


彼女の柔らかな腕の温かさが、カスパールの腕にじわりと伝わる。カスパールは一瞬肩を震わせたが、それを振り払うことはなく、そのままローゼリアの熱を腕に感じていた。


彼の頬が、わずかに赤く染まっているのが見えた。




二人が向かったのは、帝都中央にある屋内型テーマパーク、『〇〇ジョイポリス』だ。


アルドロン曰く、「天候に左右されず、日本の最先端技術と娯楽を凝縮した、デートに最適な施設」とのことだった。


「わぁ!カスパール君!見て!あそこ!光がキラキラしてて、とっても綺麗!まるで、夜空を閉じ込めたみたいだわ!」 施設に入ると、ローゼリアはすぐに目を輝かせ、まるで幼い子供のように興奮して辺りを見回した。


色とりどりの光が彼女の瞳に反射して、さらに輝きを増している。

耳元には、アトラクションの歓声や、ゲームの効果音が賑やかに響いてくる。


「チッ。まあ、見た目だけはな。これは…視覚を刺激する魔術の一種か?いや、物理的な光源とレンズの組み合わせか。しかし、これほどの規模を再現するとは…」


カスパールは、彼女の隣で、相変わらず冷静な口調だが、その口元はわずかに緩んでいる。彼の心の中では、日本の技術への驚きと、ローゼリアの喜びが混じり合っているようだった。



「カスパール君!あれに乗りましょう!『〇〇アトラクション』!とっても速そうよ!日本の乗り物、どんな感じか試してみたい!」 ローゼリアが指差したのは、VRゴーグルを装着して高速で移動する、いわゆる絶叫系アトラクションだった。轟音と共に、叫び声が聞こえてくる。


「…なっ。ローゼリア、お前…あれに乗るとでも?あれは、俺の専門分野ではない、というか…」 カスパールの顔から、さっと血の気が引くのが見て取れた。

彼の表情は、普段の冷静な彼からは想像できないほど、明らかに動揺している。

その顔色は真っ青で、冷や汗が額に滲んでいるようだった。


「あら?大丈夫よ!私がカスパール君の手をしっかり握っているから!さあ、行きましょう!」 ローゼリアは、怯むカスパールの手をグイッと掴み、アトラクションの列へと引っ張っていった。


彼女の掌の温かさが、カスパールの冷え切った手に伝わる。彼女の表情は、純粋な好奇心に満ち溢れ、まるで悪戯を企む子供のように輝いていた。



アトラクションから出てきた二人は、対照的な様子だった。


「はぁ…はぁ…」 カスパールは壁に手をついて、肩で息をしていた。顔色は真っ青で、いつも完璧に整えられている前髪も乱れている。彼の足取りは、まるで千鳥足のようにふらついていた。


「カスパール君!大丈夫?!でも、私、とっても楽しかったわ!まるで空を飛んでいるようだったもの!」 ローゼリアは、少し息が上がっているものの、満面の笑みでカスパールの背中をポンポンと優しく叩いた。彼女の瞳は、興奮でキラキラと輝いている。


「…チッ。まさか、俺がこれほどまでに、三半規管というものに弱いとはな…新たな発見だった。だが、お前が楽しんでいたのなら…それも悪くない」 カスパールは悔しそうに舌打ちをしながら呟いた。


その言葉とは裏腹に、彼の視線は楽しそうに笑うローゼリアに注がれていた。彼の瞳の奥には、彼女の笑顔を見ることができた満足感が宿っていた。



「あっ!カスパール君!見て!あそこの『クレーンゲーム』!あのピンクのフワフワしたぬいぐるみ、フワワに似ててとっても可愛いわ!」 次にローゼリアが目をつけたのは、カラフルなぬいぐるみがぎっしり詰まったクレーンゲームだった。


ガラスケースの中に並べられた、柔らかな手触りを感じさせるぬいぐるみに、彼女の目は釘付けになった。

彼女は、以前セラフィナと訪れたゲームセンターで、他の日本のゲームを体験していたことを思い出し、目を輝かせた。


「…あれか。アームの動きは単純な仕組みだ。魔力の制御とは異なるが、俺が取得できないはずがない」


カスパールは、プライドを取り戻そうとするかのように、自信満々にコインを投入した。

彼の瞳は、獲物を狙う鷹のように鋭い。 しかし、アームはローゼリアが指差したぬいぐるみには届かず、空振り。ガコン、と虚しい音が響く。


「チッ…なぜだ。これはアームの初期設定に問題があるのか?それとも、この機械の構造が…俺の予想と、実際の挙動に誤差が生じている。まさか、物理的な干渉が…いや、そんなことはありえない」


二度、三度と挑戦するが、結果は同じ。カスパールは、どんどん真剣な顔になる。額には汗が滲み、眉間に深い皺が刻まれる。彼は、まるで難敵を前にした戦士のように、アームの動きと景品の配置を凝視し始めた。この奇妙な機械の攻略法を、彼は必死で探っているようだった。


「カスパール君、頑張って〜!もう少しよ!」 ローゼリアは、そんなカスパールの姿を見て、クスッと笑いながら応援している。その笑顔は、彼が頑張る姿を見ているだけで幸せだと言っているようだった。


結局、何回か挑戦したものの、目当てのぬいぐるみは取れず、カスパールは「…チッ、今日のところは、この辺にしておいてやろう。この機械の仕組みは、改めて対策を練る必要がありそうだな」と、苦渋の表情で諦めていた。


彼の表情には、悔しさと、そしてわずかな疲労が浮かんでいる。


ローゼリアは「ふふ、カスパール君らしいわ!」と、愛おしそうに彼を見上げていた。彼女の瞳には、彼への深い愛情が宿っていた。




テーマパークを満喫した二人は、少し歩いたところにある、可愛らしいカフェに入った。店内は、甘い香りが漂い、優しい光が満ちていた。


テーブルに置かれた花瓶には、可憐な小花が生けられている。


「わぁ!カスパール君、見て!このパフェ、お花が乗っていて、とっても綺麗!まるで食べられる魔法みたいだわ!」 ローゼリアが指差したのは、色とりどりのフルーツとクリームで飾られた、芸術品のようなパフェだった。


ガラスの器の向こうには、鮮やかな色彩が踊っている。


「チッ!これは…視覚的な美学と味覚の組み合わせか。確かに、この層の構成は面白いな」 カスパールは、パフェを前にして、いつものように冷静な口調だが、その瞳の奥には、わずかながら期待の色が宿っている。


一口食べると、ローゼリアの顔がパッと輝いた。


「美味しいわ!このクリーム、甘すぎなくて、でもフワワで…異世界のスイーツって、本当に素晴らしいわね!」 その声には、心からの喜びが満ちていた。


カスパールも、恐る恐る一口。スプーンが彼の唇に触れると、彼は一瞬身構えたようだった。そして、彼の表情が、ほんの少し緩んだのが見て取れた。


「…チッ。悪くないな。この、舌の上でとろける感覚は、この世界特有のものか。やはり、日本の食文化は奥が深い」 彼は、珍しくゆっくりと、そして美味しそうにパフェを味わっていた。


彼の意外な一面を、ローゼリアは微笑ましく見つめていた。その表情は、愛おしさに満ちていた。




パフェを食べ終え、温かいお茶を飲みながら、二人は今日の出来事を語り合った。湯気の立つカップが、二人の手のひらを温める。


「今日のテーマパーク、本当に楽しかったわ!まさかカスパール君が、あの高速で移動する乗り物が苦手だなんて、意外!」 ローゼリアが楽しそうに笑うと、カスパールは少し眉を下げた。彼の耳の先が、わずかに赤くなっている。


「…チッ、うるせぇ。あれは、俺の魔力制御の範疇外の事象だっただけだ…だが、お前が楽しんでいたのなら…それも悪くない」


「ふふ、とっても楽しかったわ!クレーンゲームも、カスパール君が一生懸命になってくれて…それが一番嬉しかった…」 ローゼリアが優しく微笑むと、カスパールは顔まで赤くして、そっぽを向いてしまった。彼の心臓が、少しだけ早く鼓動しているのが、彼自身にも聞こえているようだった。



「カスパール君、あの…」 ローゼリアが、少し改まった様子で切り出した。彼女の瞳には、真剣な光が宿っていた。


「もうすぐ、日本には『クリスマス・イブ』という特別な日があるの。もし、カスパール君がよければ…その日も、私と二人で、過ごしてくれる?」 ローゼリアの問いかけに、カスパールはピクッと顔を彼女の方に戻した。


彼の瞳が、カフェのロウソクの光のように揺らめいている。その奥には、戸惑いと、それ以上の喜びが混じり合っているのが見て取れた。


「…チッ!ローゼリア…お前が、そこまで望むのなら…仕方ないな。俺も…お前とこの世界の『特別な夜』というものを経験するのも悪くない…」 彼は、いつものツンデレ口調でそう言ったが、その顔は喜びを隠しきれていなかった。

彼の頬が、わずかに紅潮している。


「ありがとう!カスパール君!」 ローゼリアは満面の笑みを浮かべ、二人の間に、これから訪れるクリスマス・イブへの期待が、ふんわりと舞い降りてきたのを感じた。


カフェの窓から見える街の光が、二人の未来を祝福しているようだった。





***





そして、日本での滞在も終わりに近づいた、十二月二十四日。


街は煌びやかなイルミネーションで彩られ、どこからかクリスマスソングが流れてくる。冷たい冬の空気の中に、甘いケーキの匂いや、人々の賑やかな声が混ざり合っている。


カスパールとローゼリアは、この特別な夜を二人で過ごすために、再び街へ繰り出していった。


二人が向かったのは、帝都中央で有名な、光のトンネルが続くイルミネーションスポットだった。通りを歩く人々の顔も、光に照らされて楽しそうに輝いている。


「わぁ…!カスパール君!まるで宝石のようね…!異世界の星空も美しいけど、これもまた格別だわ!」


ローゼリアは、思わず息を呑んだ。無数の電球が織りなす光の芸術は、異世界では決して見ることのできない輝きだった。彼女の瞳には、色とりどりの光が映り込み、キラキラと輝いている。


「…チッ。この光の制御技術、魔力を使わずしてこれほどの規模を再現するとは…日本の技術は侮れないな」 カスパールは、ローゼリアの隣で、いつものように冷静な口調だが、彼の瞳もまた、いつもより深く、その光を映し出していた。彼の口角は、わずかに緩んでいた。



二人は光のトンネルをゆっくりと歩き、互いの手の温もりを感じていた。ローゼリアがカスパールの腕に絡ませた指先から、温かい電流が伝わってくる。


「勇者たちと…カスパール君…と日本で、本当にたくさんの素敵なものを見ることができて、うれしいわ。まるで、夢のような時間ね」


ローゼリアが、はにかむように呟いた。その声には、心からの幸福感がにじみ出ていた。




その時、二人の視界に、煌びやかな光を背景に、3人の若い女子生徒の姿が飛び込んできた。


彼女たちは佐倉花の通う学園に留学中だったとき、カスパールに、以前「私にひどいことを言ってください!」と話しかけてきた『ドM』グループだった。


「あ、カスパール先輩にローゼリアさんじゃないですか!こんなところで偶然ですね!」


一人の女子生徒が、悪びれる様子もなく、にこやかに声をかけてきた。他の二人も、面白がるようにニヤニヤと笑っている。彼女たちの声は、澄んだ夜空に響き渡った。


カスパールは眉をひそめ、舌打ちをした。


「チッ…お前たち、なぜこんなところにいる」


「えー、私たちもイルミネーションを見に来たんです!先輩とローゼリアさんもですか?あらあら、二人で…デートですか?お似合いですねぇ!」


もう一人が、少し探るような目で二人の間に視線を送った。



ローゼリアの瞳から、それまでのはしゃいでいた光がすっと消えた。彼女の顔から、みるみるうちに笑顔が消え、おしとやかな面影が消え失せていく。代わりに、きりっとした、まるで氷の女王のような表情が浮かび上がった。


彼女の白い肌が、怒りと嫉妬でほんのりと赤く染まっているのが、光のトンネルの中で鮮やかに見えた。



「わたくしたちは、今、とても大切な時間を過ごしています。あなた方には、ご遠慮いただけますでしょうか」


普段の丁寧な口調からは想像できないほど、毅然とした、冷たく研ぎ澄まされた声で言い放った。はっきりと、迷いのない言葉。その場にいた全員が、ローゼリアのまさかの宣戦布告に息を呑んだ。



カスパールですら、目を見開いてローゼリアを見つめている。彼の瞳には、驚きと、そしてわずかな高揚感が混じり合っていた。 女子生徒たちは、ローゼリアの迫力にたじろぎ、顔を見合わせた。一歩、二歩と、無意識に後ずさりしている。



「え!?先輩、私に、何か、きつい一言を…!」



「チッ。おい、お前ら…」 カスパールが低い声で言いかけたが、ローゼリアは彼の腕をしっかりと掴み、女子生徒たちを睨みつけた。



「カスパール君の傍にいるのは、わたくしです。これ以上、この場を騒がせないでください」



その迫力に、女子生徒たちはあっけにとられ、しどろもどろになりながらも、やがて「は、はい…」と答えて、そそくさとその場を立ち去っていった。


彼女たちの背中からは、明らかな敗北感が漂っていた。




女子生徒たちが去った後、カスパールは、ローゼリアを呆然と見つめた。


「…ローゼリア…」 ローゼリアは、まだ頬を赤らめながらも、真っ直ぐにカスパールを見上げた。


彼女の瞳は、潤んで、揺れている。その奥には、彼への強い想いが溢れていた。



「…カスパール君が、他の女性に軽々しく話しかけられているのが…我慢ならなかったの。私、カスパール君のことが…本当に、大好きなの…」



彼女の瞳は、潤んで、揺れている。その言葉には、普段の穏やかさからは想像できないほどの、強い感情が込められていた。


カスパールの胸に、温かいものが込み上げてくる。


彼の心臓が、今まで感じたことのない熱を帯びて、激しく鼓動している。

彼は、微かに赤らんでいるローゼリアの頬に、そっと手を伸ばした。彼の指先が、彼女の温かい肌に触れる。



「そうか…」



カスパールは、ローゼリアの瞳を真っ直ぐに見つめた。


彼の頬が、微かに赤らんでいるのが、イルミネーションの光に照らされて分かった。



「ローゼリア。お前が、楽しんでくれたのなら…俺も、この世界に来て、良かったと…」 そう言って、彼はゆっくりと、ローゼリアの顔に近づいていく。


ローゼリアは、カスパールがいつもと違う真剣な表情を浮かべるのに、ドキリと胸が高鳴るのを感じた。


心臓の音が、自分にも聞こえるほどに響く。初めての経験への戸惑いと、期待が入り混じった甘い感情が、胸いっぱいに広がった。



彼の唇が、ローゼリアの頬にそっと触れる。 温かくて、優しい感触。それは、今まで感じたことのない、微かな熱と、胸の奥をくすぐるような甘さだった。


ローゼリアは、ふわりと目を閉じ、その瞬間を、全身で味わった。まるで、時が止まったかのような、静かで、それでいて鮮烈な感覚だった。



カスパールは、すぐに顔を離し、照れたようにそっぽを向いた。



「…チッ。これで、クリスマス・イブの目的は達成されたな」


(正直、あのルシアンとセラフィナの『頬への接触』には理解に苦しんだものだが…日本には、この他にも奥深い愛情表現の文化が多数存在するらしい。この頬への接触も、その一端か…いや、これは……)


彼の突然の頬へのキスに、ローゼリアは、目を見開き、顔を真っ赤に染めた。全身に、熱い血液が駆け巡るような感覚に陥った。



「カスパール君…!」



驚きと、喜びと、そして恥ずかしさが一気に押し寄せ、彼女は言葉を失った。

まだ頬に残る温かい感触と、愛おしそうに自分を見つめる彼の視線が、彼女の心を震わせた。



ローゼリアは、喜びのあまり、そっと指を伸ばし、カスパールとその想いを確かめ合った証として、彼が首元につけている、自分が贈ったチェーンネックレスに触れた。


ひんやりとした金属の感触が、彼女の指先に伝わる。



「ふふ、カスパール君。そのネックレス、ずっとつけてくれてる…私だけのカスパール君だもの」



ローゼリアの指が、カスパールの首筋にわずかに触れた。カスパールは、くすぐったそうに、わずかに身じろぎながら、フイと視線を逸らした。



「…チッ、当たり前だろ。お前が贈ったものだ。それに、いちいち動揺するな、手のかかる女だ」 彼の言葉とは裏腹に、その頬は赤く染まっている。彼の心臓も、まだ高鳴りを止められないでいるのが、彼自身にも分かっていた。



こうして、カスパールとローゼリアの、日本での甘酸っぱいデートは幕を閉じた。



彼らもまた、この異世界で、そして日本という特別な場所で、着実に愛を育んでいたのだった。


光り輝くイルミネーションの下、二人の影が寄り添い、長く伸びていた。




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