2.
「ラスボスへの道を開こうとするって、今考えたらワニ顔の教祖みたいなことしてるよね」
最も、ボクは太っちゃいないし、拒否をするつもりもない。なぜなら、これはあらかじめボクが彼に頼んだことだからだ。
しかし、こうして会うのが久しぶりだと思うと、このボクであっても少々緊張した。
こんなに長い間離れ離れ、と言うのは今までなかった。空白の期間が何をもたらすか。日常生活上なら、そんな心配に想いを馳せていたことだろう。
しかし、今はそんな日常とは違う。あの頃とは見ている風景も周囲を取り巻く摂理も異なり、ボク自身の意思とは言え、カナトとは敵対する間柄だ。
「ちょ、ちょっとあのクソヨロイカメン何やってんのよ!?」
「何、って?」
玉座へと座る僕と、傍らに立つニコバルトカリ。彼女は、僕が映し出した中空の映像を見て、ヒステリックな声を上げた。
ちなみに、彼女はボクの命令でプリンを運んできた直後である。
「あ、あれ、どう考えてもこの城にあいつらを招いてるじゃない!? 裏切り行為じゃない!」
「もぐもぐ。そうだね」
「な、何をのんきに――」
「もぐもぐ。だって、ボクが命じたことだもん」
「ああ、なるほど――……って、ちょ、ちょっと、それこそどう言うことよ!?」
ああ、もう。耳元でキンキンうるさいなァ。今、ボクはプリンを食べてるんだけど。
「それは、アタシからもききたいわァん」
すると、分厚い門を容易く片手で開けはなち入ってきたソルフェリーノが、壇上のボクを見上げて問いかけてくる。
「サイカちゃん、アナタ。何を企んでいるのォ?」
「もぐもぐ。別に、企んでいるなどと言うほどの事なんてないさ」
「ウソつけ! あんたはいっつもそう! 何でもできるクセに、何を考えてるかわからない! とんでもないことを平然とやりながら、それが本当の目的じゃないようなカンジさえ、」
「だったら疑えばいいじゃないか。信じないのは得意だろう、踊魔王ニコバルトカリ」
「――っ!」
「キミのその直感は当たってるさ。全ては、とある小義を成すがための布石。後は他がどうなろうと、知ったことじゃない」
「っ、じゃあ、あの話も――あたしのための国を作るという、のも……っ」
「必要とあれば作ってあげたかもしれないけど、今となっては必然性を感じないね」
「――っ!」
ニコバルトカリは、あからさまにショックを受けたような顔をした。まあ、彼女の深層心理を読む能力はボクには通じないしね。
「サイカちゃん、それは冗談でも言ってはいけないわよォ!」
「なんだい? キミは、ボクのやることには賛同してくれていたんじゃないのかい?」
「ニコバルトカリを傷つけることとは、話が違うわよォ!」
「違わないさ。彼女の存在が、カナトへの目的達成のためにもはや必要なくなった。これ以上、敢えてご機嫌取りする労力は不要だろう?」
「…………」
「随分と反抗的な目じゃないか」
ソルフェリーノは、珍しくボクを恨みがましそうな目で見ている。
「喧嘩なら、買うよ?」
「っ、」
だが、ボクがこう睨み返すだけでこの通りだ。
ソルフェリーノも、ニコバルトカリも。そして、サイアノも。このボクの目的を達するために、利用していたにすぎない。彼らが、つられそうな甘言を言葉巧みに敷いて。
けれども、僅か一か月でここまで来れたカナトに、これ以上の舞台づくりは必要ない。後は魔王たちがどこへなりと行こうが、知ったことじゃない。
まあ、そんな舞台装置となってくれたことに関しては、彼らに感謝しなくてはね。




