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魔法感染  作者: 正午
10/10

通信

申し訳としか言いようがないです(唐突)遅筆で本当にすみません。魔法感染の続きです。楽しんでいただければ幸いです。誤字、誤用、脱字等ありましたらコメント欄で指摘していただければ幸いです。

  ――――暗い部屋の中で黒髪の少女は鎖と複数のコードに繋がれていた。少女の前には複数の研究者の様な者達が立っている。部屋のドアから外套を着てフードを被った男が入ってくる。


  「彼女の様子はどうですかぁ?」


  男の質問にタブレット端末で少女をモニターしていた白衣の女が答える。


  「バイタルは問題ありません。精神面がやや不安定ですが問題はないかと」


  女の言葉に外套の男は満足気に頷く。


  「では始めましょうかぁ...」

 

  男は懐から赤い宝石を出し少女へと近づいて行く......


~~~~~~~~~~~~~~~


  ――――アヤメはそこで目が覚める。額からは汗が滲み、息は荒い。辺りを見回すと廃ビルの薄暗い部屋だった。


  (さっきのは昔の...)


  息を整えて汗を拭うと少し離れたところから声が掛けられた。


  「おはよう、と言いたいところだがまだ夜だ。うなされてたけど大丈夫か?」


  声のした方を向くとユウが少し離れたところに座っていた。

  アヤメは少しずつ目が覚めてきて、昨日の事を思い出す。


  「...我は、そうじゃ狼型は?」

 

  「まだ見つかってないから大丈夫だ。それよりもうなされていたのは大丈夫なのか?」


  ユウの質問でアヤメは先程まで見ていた夢を思い出す。外套の男、繋がれたコード、赤い宝石、それらを忘れるように頭を振り。努めて普段通りの声を絞り出す。


  「...いや、なんでもない。気にしなくて良い」


  アヤメのその言葉にユウは頭を掻きアヤメの目を見て言う。


  「こっちも護衛としての立場がある。もし体調を崩していたり。何か問題があれば言ってくれた方が良い」


  ユウはそう言ったがアヤメは目を伏せて黙ってしまう。そんなアヤメにユウは嘆息してアヤメから目を逸らす。


  「まぁ言いたくねぇならしょうがないけどさ...本当にヤバかったら言えよ」


  「すまんな...迷惑をかける」


  「気にすんな仕事だしな」


  あっけらかんとユウが言ったためかアヤメも少し気が楽になる。アヤメが窓の外を見るとまだ暗く月と星しか見えない。


  「我はどのくらい眠っていた?」


  ユウは自分の時計を月明かりで照らし時間を確認する。時計の針は頂点を少し過ぎたところでカチカチと時を刻んでいる。

 

  「ここに入ったのは日が暮れてからそんなに経ってなかったし、お前が寝たのも直ぐだったから。6時間ちょっとってとこかな。日の出までは時間があるしまた寝ててもいいぞ」


  しかしアヤメは首を横に振る。


  「いや、我はもう充分に睡眠が取れた。ユウの方は眠らなくても大丈夫なのか?」


  「俺くらいの年齢だと徹夜は余裕なんだよ。そうじゃなくても渋谷の調査で野宿なるような時もあったし鍛えてるから問題無い」


  ユウは手をヒラヒラと振りながら答える。するとアヤメはポカンとした後フッと花が咲くように笑った。


  「おっやっと起きてから笑ったな。お前はその方が良いよ。」


  アヤメの顔を見てユウが笑うとアヤメは顔を赤くする。


  「そ、そうか...」


  とアヤメが言った時部屋の外から何かが倒れた様な音が聞こえた。ユウはすぐさま体を起こしアヤメを庇うように立つ。


  「おっとお客さんか。呼んだ覚えはないけど...アヤメ、声を出すなよ」


  そう言ってユウも息を殺す。ここで見つかって戦闘になればこの周辺の魔物が集まってくる危険性がある。ただでさえ暗く危険な夜に魔物に囲まれては溜まったものではない。段々と近づいてくる音に2人の緊張が高まる。入口を見るとネズミを大きくしたような魔物が横切って行った。幸い見つかってはいないようだ。しっかりと魔物が離れていったタイミングを見計らってユウは言葉を発する。


  「アヤメ、ここから離れるぞ」


  「しかし危険ではないか?この暗さで移動するのは...魔物に見つかる可能性もある...」

 

  ユウはアヤメの言葉に首を横に振り説明する。


  「今通ったやつ、ネズミの形してただろ?あれ、1匹見たら100匹は近くにいるって類のやつだからここは離れた方がいい。狼型のことも考えると余計な戦闘をしてる余裕も無いしな。今まで見つかってなかったの奇跡だぞ...」


  説明を聞いたアヤメは首肯する。

 

  「それでなんだけど、アヤメ魔力強化はできそうか試してみてくれないか?」


  ここから出来るだけ離れるために、と付け加えてユウがアヤメに言う。アヤメは少し躊躇うが1度深呼吸をして魔力を練る。


  「────ッ!」


  アヤメから魔力が溢れるがアヤメは苦悶に満ちた顔になる。それを見て直ぐにユウがアヤメに声を掛ける。


  「アヤメ、もういい大丈夫だ」


  ユウの言葉を聞きアヤメは魔力を抑えた。そこでユウが怪訝そうにアヤメに聞いた。


  「アヤメ、お前の魔力の流れ方、おかしいって言うか違和感がある。とにかく普通じゃない。魔力操作が苦手だったりするのか?」


  「いや...その、まぁそんなところじゃな」


  (アヤメの魔力...なんだ?この違和感は。それに制御もおぼつかない感じだし...)


  「...何かおかしかったのかの?」


  ユウが考えこんでいるとアヤメが声をかけた。


  「あぁ、いや何でもない。魔力強化ができない以上、また俺が運ぶことになるけど大丈夫か?」


  「すまん、迷惑をかけてばかりで...」


  「それじゃ失礼して...っと」


  ユウはアヤメを担いで窓から外を見る。外は暗くて見ずらいが目を魔力で強化して視覚を得る。


  「外に魔物はいなそうだな。よし、行くぞ」


  ユウは窓から出て脚に電気を纏い外壁を移動し始めた。まだ日が登るまでには数時間はかかる、辺りはまだまだ暗いため周囲の警戒を強化しながらユウは壁を走る。


  「とりあえずある程度の距離を移動したらまた隠れられそうな場所を探そう」


  「うむ、それにしても本当に凄いな、この壁を走るのは...ユウは魔力の操作が上手いんじゃな」


  アヤメの言う通り壁を走行するのにはかなりの技術がいる。壁を走る際は体が地面に対して平行になっているので普通に地面を走るのとでは勝手が違う。その上かなりの魔力操作の実力が必要なことに加えユウの様な電気系の魔法か磁力、重力操作系の魔法を扱えなくては出来ないような技だった。

  しかしアヤメの言葉にユウは苦笑し謙遜する。


  「いやいや、これはたまたま俺が電気系の魔法使えたからできるようなもんだよ。魔力操作に関してもまだ無駄が多いせいで消費もそれなりだしな」


  「それでもこれだけの技術があるのは羨ましく感じる、我ではそうはいかんからな...」

 

  アヤメの声が尻すぼみに小さくなる。そこでユウがアヤメに聞く。


  「なぁ、アヤメの魔法ってどんなのなんだ?」


  「我の魔法か?そうじゃな我は火の魔法、と言いたいところじゃが魔力操作のせいでまともに扱えん...」


  アヤメの表情が曇る。その顔を見てユウがアヤメに言う。


  「そうか、じゃあ無事に帰れたら俺で良ければ簡単な魔力操作くらいなら教えようか?」


  「なに?良いのか?」


  「まぁ無事に帰れればな。っとこれは死亡フラグになるのか?」


  「なにを訳のわからんことを言っているのか知らんが、魔力操作件、是非ともお願いしようかの」

 

  「了解。じゃ、魔物に見つからない程度にとばしていきますかね」


  ユウは壁を走る速度を上げ風を切りながら夜の廃墟を駆ける。


~~~~~~~~~~~~~~~


  「さてとここでいいかな」


  それから幾らか走り続け、これ以上の不用意な行動は危険だと判断し、程良い建物にガラスが割れている窓から入る。そして右肩に担いだアヤメに聞く。


  「おーい、大丈夫か?」


  「......うーん」


  アヤメは目を回していた、完全にグロッキーだ。壁を走っていた影響で平衡感覚がおかしくなっているのだ。


  「とりあえず朝まで休憩だから寝てろ」


  「うむ...」


  2度目となるとアヤメも慣れたもので直ぐに眠ってしまう。アヤメが眠りについたのを見てユウは少し離れた場所に腰掛け、通信機をいじる。他の護衛隊のメンバーに繋がるのではと淡い期待を抱いて通信機を見る。


  「さっきのとこよりは横浜地区に近づいたからな、上手くいけば...」


  何度か通信機で通信を試みるが繋がる気配がない。


  「畜生、寝てんのかあいつら...いや時間的にはしょうがないけど」

 

  時間は既に3時を回り、完全に深夜帯になっている。悪態をつきながら何度も通信機を操作する。


  「......ダメか?」


  諦めて朝まで待とうかとすると通信機から途切れ途切れの声が聞こえる。


  『――ユ―さん――か?』


  「おっ、繋がったか!」


  急いで通信を繋ぎ通信機に声をかけた。

 

  「その声はセラか?聞こえるか?」


  『......はい、聞こえてます』


  少しの間の後ややノイズ混じりではあるがセラの声が聞こえる。


  「そっちはどうなった?」


  ユウは状況確認のためセラに聞く。


  『こちらはもう横浜地区に着きました。交代で通信が来るかもしれないということで待機をしてたところです』


  「そうかそっちは大丈夫だったか...」


  向こう側の無事の報告を聞きユウは安堵のため息をつく。するとセラの方から声が掛かる。


  『こっちの事よりもそっちの方は大丈夫なんですか?こんな時間まで連絡が無かったので心配していたんですよ?』


  「あぁ、ちょっと狼型から逃げる時に横浜地区から離れちまってな通信が届かなかった。今は少し移動して届く程度の距離にはいるってとこだな」


  『了解しました。必要なら連絡もついたことですし今からでも救助隊を出しますか?』


  セラの提案にユウは首を振って否定する。


  「流石にまだ暗いくて視界も悪い。無理な行動は危険すぎる。それに夜にあの狼型に襲われたらヤバい辛な。救助は欲しいとこではあるが日が出てからでいいよ」


  『わかりました。ではお二人の無事は他の護衛の方々にも伝えておきます』


  「おう、よろしくな。こっちは何かない限りは動くつもりはないから日が出たら合流してくれると助かる。座標は通信位置で割り出せるか?」


  『はい、大丈夫です。でもやっぱり距離がありますね。通信がギリギリで届くくらいです』


  その言葉を聞いてユウは嘆息する。


  「それは運が良かったな。じゃあとりあえず後のことは頼んだ。こっちも周り警戒してなきゃいけないからな」

 

  『わかりました。では無事を祈ってます』


  その言葉とともに2人同時に通信を切る。通信機を仕舞いユウは辺りを警戒しつつ腕を組んで考え込む。


  (とりあえず、日が出れば救助は来る。運が良ければ安全に横浜地区に行けるだろう。でも、気になるのはアヤメの魔力操作と狼型の行動だ。アヤメの魔力操作についてはあいつがどうにも言わないからしょうがないとして、狼型は何故俺達と言うよりアヤメを狙った?奴ら完全にアヤメを狙ってた。理由がわからねぇ...。一番戦えなさそうな奴を集中的に狙ってきた?でもあの短い時間で判断できたとは考えられないし...何か別の理由があるのか?あぁ、クソっわからねぇな...)


  ユウは頭をガリガリと掻く。考え込んでいる間にも時間は進み気がつけば夜明けはすぐそこまで来ていた。

今回の魔法感染を読んで頂いてありがとうございます。遅筆で申し訳ないです。まだ細々と続いていく予定なので読んでいただければ嬉しいです。

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