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波待ち。  作者: 阿部兄弟
6章 夢と生活

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72/84

72話 「蒼と澪」

何者でもなくなる朝は、

少しだけ怖くて、少しだけ自由だった。


朝。


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「今日絶対泣く〜……」


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開店前。


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ラック整理をしながら、

しほがもう半泣きだった。


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「いや早いって」


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⸻


澪が笑う。


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「まだ営業始まってもないじゃん」


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「だってぇ……」


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「澪いなくなるの普通に嫌だもん……」


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そこへ店長も来る。


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「あ、私も泣くよ?」


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「店長までやめてくださいよ」


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「無理無理」


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「だって寂しいもん」


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笑いながら、

でも少しだけ目が赤かった。


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店内には、

いつも通り音楽が流れている。


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いつもの朝。


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でも今日で最後だった。


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開店。


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「いらっしゃいませー」


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何度も言ってきた言葉。


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服を畳む。


レジを打つ。


接客する。


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いつも通り。


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なのに、

全部少し違って見えた。


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常連客にも、

何人か声を掛けられた。


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「辞めちゃうの?」


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「はい」


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「でも店やるんです」


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「えー!すごいじゃん!」


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「絶対行くね」


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その言葉が、

素直に嬉しかった。


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夕方。


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工場。


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蒼はロッカーの前に立っていた。


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長年使ったロッカー。


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傷だらけの扉。


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作業着を畳む。


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中から、

古い手袋や工具が出てくる。


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名札を外す。


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『萩原』


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その文字を見て、

少しだけ止まる。


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十一年。


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長かったのか、

短かったのかよく分からなかった。


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怒鳴られた日。


喧嘩した日。


辞めたくなった日。


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でも。


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ここで生きてきた。


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「蒼さん」


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後輩が来る。


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「これ、もう使わないですよね?」


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工具を見て言う。


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蒼は少し笑った。


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「欲しいならやるよ」


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「え、いいんすか?」


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「使ってやって」


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後輩が嬉しそうに笑う。


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その顔を見て、

少しだけ昔の自分を思い出した。


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その時。


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「ほらよ」


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先輩が、

缶コーヒーの箱を持ってきた。


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「蒼、頑張れよ」


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蒼は少し笑う。


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「ありがとうございます」


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先輩が吹き出した。


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「なんだお前気持ち悪りぃな」


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「いつもみたいに “あざす”でいいんだよ」


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周りも笑う。


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蒼も照れくさそうに笑った。


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それから。


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蒼はみんなの前に立つ。


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少し静かになる。


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「みなさん」


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「この十一年間、本当にお世話になりました」


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頭を下げる。


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拍手が響く。


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「頑張れよ!!」


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「店出来たら行くからな!」


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「潰れんなよー!」


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「縁起悪ぃわ!」


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笑い声が広がる。


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スマホが震えた。


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澪からLINE。


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『今日送別会だから』


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『夜ご飯適当にお願いね!』


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蒼は少し笑う。


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『了解』


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夜。


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居酒屋。


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「澪ぉ〜……」


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しほがもう泣いていた。


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「辞めないでよぉ〜……」


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「入った時から一緒じゃ〜ん……」


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「いやまだ早いって」


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澪が苦笑する。


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店長が笑いながら、

しほの背中を叩いた。


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「ほらほらしほ」


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「困らせないの」


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「澪は夢の為に辞めるんだよ?」


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「別にもう会えなくなる訳じゃないじゃん」


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「お客さんとして来てもらえばいいのよ」


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「ね?澪?」


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「もちろん行きますよ」


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澪がしほを見る。


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「しほ、ちゃんと行くから。ね?」


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「うん〜……」


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「でもお店楽しみだね〜」


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「いつ頃完成なの?」


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「多分一ヶ月半くらいですかね」


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「テナントだから、内装と外観だけなので」


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「いいねぇ〜」


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一時間後。


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「澪ぉ〜〜……」


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今度は店長が泣いていた。


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「辞めないでよぉ〜〜……」


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「店長まで何してるんですか」


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しほも横で泣いている。


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⸻


「澪ぉ〜……」


⸻


⸻


他の先輩達が止めに入った。


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「ほらほら」


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「店長もしほも、澪困らせないの」


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「もう一回乾杯しましょ!」


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「はいはい!」


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グラスが持ち上がる。


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「んじゃあ!」


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「巣立っていく澪に!」


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「乾杯!!」


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笑い声が響く。


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店の外。


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冷たい夜風。


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澪は深く頭を下げた。


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「本当に今までありがとうございました」


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「これからもよろしくお願いします!」


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店長としほはもうぐだぐだだった。


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店長が酔った顔で笑う。


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「澪〜!!」


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「かっこよく生きろよ〜!!」


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「はい!」


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澪は笑う。


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でも、

その目には少し涙があった。


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次の日の朝。


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カーテンの隙間から、

冬の光が入ってくる。


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澪はぼーっと天井を見た。


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それから、

ふと思う。


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「あ」


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「そうだ」


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「仕事辞めたんだ」


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隣で、

蒼が少し笑う。


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「なんか変な感じだな」


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「だなぁ」


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澪がニヤッとする。


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「ニート?」


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「もしかして」


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「やめろ」


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蒼が笑う。


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「今から何者かになるんだよ」


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その言葉に、

澪は少し止まった。


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何者かになる。


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今はまだ、

萩原蒼と一ノ瀬澪。


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でもこれから。


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二人の店が始まる。


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『澪!かっこよく生きろよ〜!』


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昨夜の店長の声を思い出す。


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澪は小さく笑った。


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かっこよく生きよう。


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後悔しないように。


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⸻


第6章  完

別れは寂しい。

でも、その先に進みたいと思える場所があった。

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