72話 「蒼と澪」
何者でもなくなる朝は、
少しだけ怖くて、少しだけ自由だった。
朝。
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「今日絶対泣く〜……」
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開店前。
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ラック整理をしながら、
しほがもう半泣きだった。
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「いや早いって」
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澪が笑う。
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「まだ営業始まってもないじゃん」
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「だってぇ……」
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「澪いなくなるの普通に嫌だもん……」
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そこへ店長も来る。
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「あ、私も泣くよ?」
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「店長までやめてくださいよ」
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「無理無理」
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「だって寂しいもん」
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笑いながら、
でも少しだけ目が赤かった。
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店内には、
いつも通り音楽が流れている。
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いつもの朝。
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でも今日で最後だった。
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開店。
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「いらっしゃいませー」
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何度も言ってきた言葉。
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服を畳む。
レジを打つ。
接客する。
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いつも通り。
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なのに、
全部少し違って見えた。
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常連客にも、
何人か声を掛けられた。
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「辞めちゃうの?」
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「はい」
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「でも店やるんです」
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「えー!すごいじゃん!」
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「絶対行くね」
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その言葉が、
素直に嬉しかった。
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夕方。
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工場。
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蒼はロッカーの前に立っていた。
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長年使ったロッカー。
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傷だらけの扉。
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作業着を畳む。
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中から、
古い手袋や工具が出てくる。
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名札を外す。
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『萩原』
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その文字を見て、
少しだけ止まる。
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十一年。
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長かったのか、
短かったのかよく分からなかった。
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怒鳴られた日。
喧嘩した日。
辞めたくなった日。
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でも。
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ここで生きてきた。
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「蒼さん」
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後輩が来る。
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「これ、もう使わないですよね?」
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工具を見て言う。
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蒼は少し笑った。
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「欲しいならやるよ」
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「え、いいんすか?」
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「使ってやって」
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後輩が嬉しそうに笑う。
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その顔を見て、
少しだけ昔の自分を思い出した。
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その時。
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「ほらよ」
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先輩が、
缶コーヒーの箱を持ってきた。
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「蒼、頑張れよ」
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蒼は少し笑う。
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「ありがとうございます」
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先輩が吹き出した。
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「なんだお前気持ち悪りぃな」
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「いつもみたいに “あざす”でいいんだよ」
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周りも笑う。
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蒼も照れくさそうに笑った。
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それから。
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蒼はみんなの前に立つ。
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少し静かになる。
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「みなさん」
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「この十一年間、本当にお世話になりました」
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頭を下げる。
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拍手が響く。
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「頑張れよ!!」
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「店出来たら行くからな!」
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「潰れんなよー!」
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「縁起悪ぃわ!」
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笑い声が広がる。
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スマホが震えた。
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澪からLINE。
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『今日送別会だから』
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『夜ご飯適当にお願いね!』
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蒼は少し笑う。
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『了解』
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夜。
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居酒屋。
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「澪ぉ〜……」
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しほがもう泣いていた。
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「辞めないでよぉ〜……」
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「入った時から一緒じゃ〜ん……」
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「いやまだ早いって」
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澪が苦笑する。
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店長が笑いながら、
しほの背中を叩いた。
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「ほらほらしほ」
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「困らせないの」
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「澪は夢の為に辞めるんだよ?」
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「別にもう会えなくなる訳じゃないじゃん」
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「お客さんとして来てもらえばいいのよ」
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「ね?澪?」
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「もちろん行きますよ」
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澪がしほを見る。
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「しほ、ちゃんと行くから。ね?」
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「うん〜……」
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「でもお店楽しみだね〜」
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「いつ頃完成なの?」
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「多分一ヶ月半くらいですかね」
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「テナントだから、内装と外観だけなので」
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「いいねぇ〜」
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一時間後。
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「澪ぉ〜〜……」
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今度は店長が泣いていた。
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「辞めないでよぉ〜〜……」
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「店長まで何してるんですか」
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しほも横で泣いている。
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「澪ぉ〜……」
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他の先輩達が止めに入った。
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「ほらほら」
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「店長もしほも、澪困らせないの」
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「もう一回乾杯しましょ!」
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「はいはい!」
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グラスが持ち上がる。
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「んじゃあ!」
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「巣立っていく澪に!」
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「乾杯!!」
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笑い声が響く。
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店の外。
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冷たい夜風。
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澪は深く頭を下げた。
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「本当に今までありがとうございました」
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「これからもよろしくお願いします!」
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店長としほはもうぐだぐだだった。
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店長が酔った顔で笑う。
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「澪〜!!」
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「かっこよく生きろよ〜!!」
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「はい!」
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澪は笑う。
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でも、
その目には少し涙があった。
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次の日の朝。
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カーテンの隙間から、
冬の光が入ってくる。
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澪はぼーっと天井を見た。
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それから、
ふと思う。
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「あ」
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「そうだ」
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「仕事辞めたんだ」
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隣で、
蒼が少し笑う。
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「なんか変な感じだな」
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「だなぁ」
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澪がニヤッとする。
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「ニート?」
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「もしかして」
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「やめろ」
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蒼が笑う。
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「今から何者かになるんだよ」
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その言葉に、
澪は少し止まった。
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何者かになる。
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今はまだ、
萩原蒼と一ノ瀬澪。
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でもこれから。
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二人の店が始まる。
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『澪!かっこよく生きろよ〜!』
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昨夜の店長の声を思い出す。
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澪は小さく笑った。
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かっこよく生きよう。
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後悔しないように。
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第6章 完
別れは寂しい。
でも、その先に進みたいと思える場所があった。




