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波待ち。  作者: 阿部兄弟
6章 夢と生活

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68/84

68話 「追風」

人生って、

動き出す時は驚くくらい一気に進む。


日中


⸻


⸻


鉄工場の休憩室には、

機械油の匂いが染み付いていた。


⸻


⸻


蒼は缶コーヒーを片手に、

スマホをぼんやり見ている。


⸻


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午前の作業が長かった。


⸻


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耳の奥にまだ、

鉄を削る音が残っている。


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その時。


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スマホが震えた。


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『すだけい』


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蒼は少し笑って電話に出る。


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「もしもし」


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『蒼!!』


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相変わらず声がデカい。


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「うるせぇ」


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『この間のテナント!』


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「ん?」


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⸻


『社長が格安で貸すってよ!』


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蒼の動きが止まる。


⸻


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「……は?」


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⸻


『いやマジで!』


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『若い奴が海の近くで店やるなら応援してぇって』


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⸻


蒼は思わず座り直す。


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「いやちょっと待て」


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『しかもお前らが思ってるより安いと思う』


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「いくら」


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すだけいが金額を言う。


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蒼は数秒黙った。


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「……マジ?」


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『マジ』


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「いやそれかなりデカいぞ」


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『だろ!?』


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休憩室の窓の外。


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冬の空が白かった。


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でも蒼の中だけ、

急に現実が動き始める。


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本当に、

出来るかもしれない。


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そんな感覚だった。


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夜。


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「ただいまー」


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澪が帰ってくる。


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蒼はいつもより少し落ち着かない。


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「おかえり」


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「なにその顔」


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「いや今日さ」


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澪はコートを脱ぎながら、

蒼を見る。


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「ん?」


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「すだけいから電話来て」


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「え」


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「テナント、格安で貸してくれるらしい」


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⸻


澪の動きが止まる。


⸻


⸻


「……え?」


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⸻


蒼が金額を言う。


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⸻


澪は目を丸くした。


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「安っ……」


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「だろ」


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「え、そんな下がるの?」


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「俺もビックリしてる」


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2人とも少し黙る。


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嬉しい。


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でも。


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現実が急に近付いてきた。


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澪が小さく息を吐く。


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「……本当に大丈夫かな」


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蒼はその声を静かに聞く。


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「怖い?」


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「うん」


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少し笑いながら頷く。


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「こんな早く進むと思わなかった」


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⸻


蒼も苦笑いした。


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「俺も」


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それから少しだけ真面目な顔になる。


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「だけどまぁ」


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「?」


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「貯えはそれなりにあるし」


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澪が蒼を見る。


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「心配するなって言っても、無理かもしんないけど」


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⸻


蒼は少し照れくさそうに笑った。


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「安心して着いてきてほしい」


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澪はしばらく何も言わなかった。


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それから小さく笑う。


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「……うん」


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数日後。


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2人でテナントへ向かった。


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海の近く。


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冬の風。


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そこには、すだけいと社長がいた。


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「おー来た来た!」


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すだけいが手を振る。


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⸻


社長は50代くらいの、

日に焼けた男だった。


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「どうも」


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蒼と澪が頭を下げる。


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大家は2人を見ながら笑った。


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「本当にやる気なんだな」


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「はい」


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蒼が答える。


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「海の近くで、カフェとサーフショップを」


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大家は何度も頷いていた。


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「いいじゃねぇか」


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「若い時なんて、やりたい事やった方がいい」


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「……ありがとうございます」


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「覚悟あるか?」


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蒼と澪は顔を見合わせる。


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それから、

ちゃんと頷いた。


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大家が笑う。


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「よし!」


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「もっと安くしてやる!」


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「えっ」


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「頑張れよ2人とも!」


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「若いって本当に素晴らしいんだから」


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「好きな事、好きにやれ!」


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帰り道。


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車の中。


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澪はスマホを見つめていた。


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「……電話する」


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「親?」


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「うん」


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少し緊張した顔で、

母親へ電話を掛ける。


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『もしもしー?』


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⸻


「もしもし」


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⸻


澪は事情を説明した。


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店の事。


今の仕事の事。


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⸻


少し沈黙。


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⸻


そして。


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『あのさぁー』


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「……うん」


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『あんたってなんでそんな事後報告多いわけ?』


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「え」


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『お母さんそんなに信用無い?』


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⸻


澪が苦笑いする。


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⸻


『いいじゃないの!』


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『やりたい事やりなよ!』


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遠くで父親の声が聞こえる。


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『ねぇお父さん!』


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その音漏れを聞いて、

蒼が少し笑った。


⸻


⸻


『ほら、お父さん』


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電話が代わる。


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⸻


『澪』


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⸻


「うん」


⸻


⸻


『好きな事で稼ぐって簡単じゃないぞ』


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⸻


「……うん」


⸻


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『けど、それ以上にやり甲斐はあるよな』


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澪は少し笑った。


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「うん」


⸻


⸻


『蒼君任せにしないで、お前もちゃんとやるんだぞ』


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「うん」


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⸻


『あと、大人なんだから責任は伴う』


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『それは分かってるよな?』


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優しい声だった。


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「うん。ありがとうお父さん」


⸻


⸻


また母親へ代わる。


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『そうそう!』


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『それで?』


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『いつ結婚するのよ!』


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「え!?」


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「いやまだその話してない!」


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『なんでよ〜!』


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『お父さんとお母さんは全然オッケーよ〜?』


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「分かったから!」


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「とりあえず切るね!」


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「その内ご飯食べに行くから!」


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『はーい』


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通話が切れる。


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澪は深く息を吐いた。


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「……はぁー疲れた」


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蒼が笑う。


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「でも良かったな」


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「うん」


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少し沈黙。


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窓の外には、

冬の海。


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⸻


澪が小さく言う。


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「良い両親だな」


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蒼が前を見たまま笑う。


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「……あぁ」


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それから澪が静かに続けた。


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⸻


「蒼のお父さんにも、報告しに行かなきゃね」


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⸻


蒼は少しだけ目を細める。


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「あぁ、だな」


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応援してくれる人の声は、

思っていたよりずっと熱かった。

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