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波待ち。  作者: 阿部兄弟
6章 夢と生活

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66/84

66話 「模索」

夢だったはずなのに、

気付けば現実の話ばかりしていた。


夜。


⸻


⸻


外はかなり冷えていた。


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窓ガラスが少し白く曇っている。


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⸻


風呂上がりの澪は、

ソファに座りながら髪を乾かしていた。


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⸻


ローテーブルの上。


⸻


⸻


ノート。


スマホ。


メモ。


電卓。


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⸻


蒼は夕飯を食べ終わってからずっと、

何かを調べ続けている。


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「まだやってたの?」


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「見れば見るほど出てくる」


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「なにがー?」


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「金掛かる物」


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澪が笑う。


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「これが現実って感じだねぇ」


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「普通に怖くなってきた」


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蒼はノートを見ながら呟く。


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そこには、

細かい文字と数字が並んでいた。


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⸻


『内装』


『冷蔵庫』


『エスプレッソマシン』


『製氷機』


『テーブル』


『看板』


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⸻


「看板高くね?」


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蒼が真顔で言う。


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⸻


「そんなすんの?」


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「普通に何万とか」


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「え、板じゃん」


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「ただの板じゃねぇんだろ」


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澪が吹き出す。


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「じゃあもう作ればいいじゃん!」


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「ん?」


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「自分達で塗ったりさ!」


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蒼が少し考える。


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「あー……」


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「いいじゃん」


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「絶対楽しい」


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澪は少し笑う。


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「蒼ペンキまみれになりそう」


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「お前もだろ」


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「私はセンス担当だから」


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「絶対めんどくさいやつ」


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2人で笑う。


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少し前まで。


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未来の話なんて、

もっと重たいものだと思っていた。


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でも今は、

ちゃんと生活の延長にある。


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澪はノートを覗き込む。


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「資格とかもいるんだ」


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「食品衛生責任者とか」


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「なにそれ」


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「俺も今日知った」


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「急に難しそう」


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「あと保健所」


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「うわ、ちゃんとしてる……」


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蒼が苦笑いする。


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「店やるってすげぇな」


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その言葉に、

澪は少し真顔になる。


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本当に、

現実なんだ。


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まだぼんやりしているけど、

少しずつ形になっている。


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「ねぇ」


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「ん?」


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「家具とかどうするんだろ」


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⸻


「中古とかじゃね?」


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「でもちょっと拘りたいよね」


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「まぁな」


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⸻


「あと私、アパレルの取引先の人に聞いてみようかな」


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⸻


蒼が顔を上げる。


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⸻


「なにを?」


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⸻


「内装とか詳しい人いそうじゃん」


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⸻


「あー……たしかに」


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「照明とかも絶対大事だよ」


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⸻


澪は少し楽しそうだった。


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⸻


それを見て、

蒼も少し笑う。


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⸻


「なんか本当にやるみたいだな」


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「今更?」


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「いやまだ半信半疑」


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⸻


澪が笑う。


⸻


⸻


でも少しして、

ふと真顔になった。


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⸻


「でもさ」


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「ん?」


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⸻


「すだけいの話、通らなかったら意味無くない?」


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⸻


部屋が少し静かになる。


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蒼は少しだけ考えた。


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それから、

ノートを閉じる。


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⸻


「……まぁ」


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「?」


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「ここまで来たら、あそこ無理でも他探すだろ」


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⸻


その言葉は、

思っていたより自然に出てきた。


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⸻


澪は少し驚いた顔をする。


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⸻


蒼自身も、

少しだけ驚いていた。


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⸻


前なら。


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一つダメだった時点で、

諦めていたかもしれない。


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でも今は違う。


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ちゃんと、

先を見ている。


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澪は小さく笑った。


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「……いいじゃん」


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「なにが」


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⸻


「ちゃんと前向いてる感じ!」


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蒼は少し照れくさそうに、

コーヒーを飲む。


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「なんか文化祭の準備みたい」


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蒼が首を傾げる。


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「わかんねぇ」


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「え?」


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「文化祭前に辞めたから」


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一瞬、

空気が止まる。


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澪が目を逸らした。


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「あ……すみません……」


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蒼が吹き出す。


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「なんで敬語なんだよ」


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「いやなんか……」


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⸻


「別にいいって」


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⸻


蒼は少し笑いながら、

またノートを開く。


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⸻


「でもまぁ、ちょっと楽しいのは分かる」


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⸻


澪も笑った。


⸻


⸻


外は寒い。


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⸻


未来もまだ、

どうなるか分からない。


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⸻


それでも。


⸻


⸻


同じノートを見ながら笑える夜が、

ちゃんとここにあった。


⸻

不安もある。


でも、

誰かと一緒に悩める未来は、

少しだけ楽しそうだった。


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