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波待ち。  作者: 阿部兄弟
4章 愛と代償

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39/84

39話 「共有」

楽しいだけじゃ、


続いていかない。


⸻


⸻


だから、


隠さないでいたかった。



夜。


⸻


⸻


仕事終わり。


⸻


⸻


蒼は車を走らせながら、


携帯を耳に当てていた。


⸻


⸻


「でさ〜今日さ、店長またやらかしてて」


⸻


⸻


澪が笑いながら話す。


⸻


⸻


「いつも通りだな」


⸻


⸻


「ほんとそれw」


⸻


⸻


⸻


他愛もない会話。


⸻


⸻


でも、


それが心地いい。


⸻


⸻


⸻


「……あ、そういえばさ」


⸻


⸻


少しだけ、


澪の声が止まる。


⸻


⸻


「ん?」


⸻


⸻


「……いや、なんでもない」


⸻


⸻


「そうか?」


⸻


⸻


「うん」


⸻


⸻


⸻


少しだけ、


引っかかる。


⸻


⸻


でも、


蒼はそれ以上聞かなかった。


⸻


⸻


⸻


「てか次の休みさ」


⸻


⸻


「凪っぽいね」


⸻


⸻


「あぁ」


⸻


⸻


「サーフィンできなそう」


⸻


⸻


「まぁ自然相手だしな」


⸻


⸻


⸻


少しだけ間。


⸻


⸻


⸻


「……じゃあデートする?」


⸻


⸻


「……」


⸻


⸻


蒼が少し黙る。


⸻


⸻


「なんで黙るのーw」


⸻


⸻


「いや、なんか」


⸻


⸻


「デートって言われると変な感じだな」


⸻


⸻


「彼氏さん?」


⸻


⸻


「うるせ」


⸻


⸻


⸻


澪が笑う。


⸻


⸻


⸻


「どこ行く?」


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⸻


「古着屋とか?」


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⸻


「私アパレルだから選んであげるよ」


⸻


⸻


少し得意げに言う。


⸻


⸻


「……じゃあ楽しみにしてるわ」


⸻


⸻


「任せなさい」


⸻


⸻


⸻


電話を切る。


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⸻


⸻


静かになる。


⸻


⸻


⸻


澪は、


少しだけ表情を落とす。


⸻


⸻


⸻


(……大丈夫だよね)


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⸻


⸻


自分に言い聞かせるように、


小さく息を吐いた。


⸻


⸻


⸻


後日。


⸻


⸻


休みの日。


⸻


⸻


蒼が迎えに行く。


⸻


⸻


⸻


「おはよー」


⸻


⸻


「おう、おはよう」


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⸻


⸻


車に乗る。


⸻


⸻


⸻


「なんかさ」


⸻


⸻


「サーフィンじゃないと変な感じするね」


⸻


⸻


「そうか?」


⸻


⸻


「うん」


⸻


⸻


「なんかデートしてるって感じ」


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⸻


⸻


蒼が少しだけ照れた顔をする。


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⸻


⸻


「古着屋どこ行く?」


⸻


⸻


「ここがいいとかある?」


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⸻


「いつも行ってるとこ以外がいいかも」


⸻


⸻


「じゃあアーケードの方行くか」


⸻


⸻


「あぁ」


⸻


⸻


⸻


店に入る。


⸻


⸻


⸻


「これとかどう?」


⸻


⸻


「……あんま着ないから抵抗あるな」


⸻


⸻


「いや絶対似合うって」


⸻


⸻


⸻


ただ服を見ているだけ。


⸻


⸻


なのに、


不思議と楽しい。


⸻


⸻


⸻


「ズボンは?」


⸻


⸻


「今育ててる途中だから、なるべくこれ履きたい」


⸻


⸻


「なるほどね!」


⸻


⸻


「じゃあズボンはいいか〜」


⸻


⸻


⸻


「あ、待って」


⸻


⸻


「私も見たい」


⸻


⸻


⸻


結局、


澪の方が服を持っている。


⸻


⸻


⸻


「ありがとうございましたー」


⸻


⸻


⸻


店を出る。


⸻


⸻


「結局お前の方が買ってんじゃん」


⸻


⸻


「良い物に巡り会えたって感じw」


⸻


⸻


「気にしない気にしない」


⸻


⸻


「蒼も買えたんだし!」


⸻


⸻


⸻


「そしたら次、靴見よ!」


⸻


⸻


⸻


靴屋に入る。


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⸻


⸻


革靴コーナー。


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⸻


一瞬、


澪の表情が曇る。


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⸻


⸻


正利。


⸻


⸻


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頭をよぎる。


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⸻


⸻


蒼は、


それを見逃さなかった。


⸻


⸻


でも、


何も言わない。


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⸻


⸻


「あ!これとかよくない?」


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⸻


「さっきのTシャツに合いそう」


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⸻


「……あー、いいかもな」


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「でしょでしょ!」


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⸻


「可愛い〜」


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⸻


「私も欲しくなってきたw」


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⸻


⸻


「いいよ」


⸻


⸻


「一緒に買ってやる」


⸻


⸻


「え?」


⸻


⸻


「お揃いだけどいいの?」


⸻


⸻


「別にいいよ」


⸻


⸻


「それがいいと思ったんだろ?」


⸻


⸻


⸻


「……うん」


⸻


⸻


「じゃあ、お言葉に甘えて」


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⸻


⸻


お揃いのスニーカーを買う。


⸻


⸻


⸻


店を出る。


⸻


⸻


⸻


「なんかさ」


⸻


⸻


「私たち高校生みたいw」


⸻


⸻


⸻


蒼が笑う。


⸻


⸻


⸻


「大人の青春だろ」


⸻


⸻


「歳なんて関係ねーよ」


⸻


⸻


「俺らにとって、それが今だったってだけだ」


⸻


⸻


「澪がサーフィン始めたのと一緒」


⸻


⸻


⸻


「なんか詩的〜w」


⸻


⸻


⸻


前から、


高身長の七三分けの男が歩いてくる。


⸻


⸻


澪は、


すぐに目を逸らす。


⸻


⸻


⸻


でも、


別人だった。


⸻


⸻


⸻


蒼は、


それも見ていた。


⸻


⸻


⸻


「……澪」


⸻


⸻


「この店入るか」


⸻


⸻


⸻


古い喫茶店。


⸻


⸻


⸻


席に着く。


⸻


⸻


「コーヒー二つ」


⸻


⸻


「かしこまりました」


⸻


⸻


⸻


少し静かになる。


⸻


⸻


⸻


「で」


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⸻


「なんかあったのか?」


⸻


⸻


「……え?」


⸻


⸻


「今日会ってから変だぞ」


⸻


⸻


「この前の電話の時から」


⸻


⸻


「自分から言うまで待ってたけど」


⸻


⸻


「言わなそうだったから聞く」


⸻


⸻


⸻


澪が、


少しだけ苦笑いする。


⸻


⸻


「……鋭いね」


⸻


⸻


⸻


「前の旦那がさ」


⸻


⸻


「この間、職場の近くうろついてたらしくて」


⸻


⸻


「人違いかもしれないんだけど」


⸻


⸻


「それ聞いてから、なんかモヤモヤしてる」


⸻


⸻


⸻


「……そうか」


⸻


⸻


「なら尚更言えよ」


⸻


⸻


「ごめん」


⸻


⸻


「謝んな」


⸻


⸻


⸻


コーヒーが置かれる。


⸻


⸻


⸻


「とりあえず」


⸻


⸻


「今から言うことやれ」


⸻


⸻


「こういうのは初動が大事なんだよ」


⸻


⸻


⸻


蒼が、


静かにプランを話す。


⸻


⸻


⸻


「……なるほど」


⸻


⸻


「分かった」


⸻


⸻


「とりあえずやってみる」


⸻


⸻


「ありがとう」


⸻


⸻


「いいって」


⸻


⸻


⸻


少しだけ、


間。


⸻


⸻


⸻


「……こういうのも」


⸻


⸻


「大人の青春なのかもなw」


⸻


⸻


「やめてよ〜w」


_____


_____


嬉しいことも、


不安なことも。


⸻


⸻


分け合えるなら、


それはきっと、


ひとりじゃない。

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