表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
波待ち。  作者: 阿部兄弟
4章 愛と代償

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/46

38話 「平熱」


特別じゃない朝が、


少しだけ違って見えた。




それが心地よかった。



アラームが鳴る。




目を開ける。




ぼんやりしたまま、


携帯を見る。




LINEが入っていた。




「昨日、私のこと考えて寝れなかった?」




「……」




思わず、


笑う。




テレビの黒い画面に、


自分の顔が映る。




その笑った顔を見て、


すぐに表情を戻す。




「……」




少しだけ、


照れる。




「別にそんなことねーよ」




送る。





既読。




すぐに返ってくる。




「ふふっ、シャイボーイ君」




「……」




昨日のことを、


思い出す。




頬に残る感触。




無意識に、


触れる。




「……ふん」




携帯を置く。





歯を磨く。




コーヒーを飲む。




タバコに火をつける。




煙が上がる。





なんでもない朝。





なのに、


少しだけ違う。





日常に、


花が咲いたみたいな。





何してても、


少しだけ楽しい。





「……こんなの、いつぶりだ」





会社に着く。





「うぇい!蒼!」




「朝から機嫌いいじゃねーか」




「別に普通っすよ」




「ほんとかぁ?」




先輩が、


ニヤニヤしながら小指を立てる。




「……はい」





「えぇ!?」




「マジかよお前!」




「どんな子だ!?」




蒼はそのまま、


無視して歩く。





休憩中。




「工場長!」




「蒼のやつやっぱりこれでしたよ!」




「やっぱか!」




「認めたのか!?」




「はい!」





「蒼、ちょっと来い」




「なんですか」




「どんな子だ」




「顔見せなさい」




「嫌ですよ」




「なんで見せなきゃないんですか」




「上司として責任がある」




「関係ないでしょ」




「頼むって!」




「俺からも!」




「写真持ってないんすよ」




「はぁ!?」




「今どき一緒に自撮りとかすんじゃねーのか!?」




「いやもう30すよ」




「写真ぐらい持ってないとダメだろー!」




「男として恥ずかしいぞ!」




「……そうなんすかね」





蒼は少し考える。







携帯を開く。




「澪、顔写真送って」




「なにそれww」




すぐに、


何枚か送られてくる。





蒼が見る。




その横に、


先輩と工場長が顔を寄せる。




「おいおいおい!」




「めっちゃ可愛いじゃねーかよお前!」




「どこで出会った!?」




「高校の同級生で」




「ちょっと前に海で再会して」




「って感じです」




「いいねぇ〜!」




「俺もサーフィンやろっかな〜」





笑いが起きる。





その時、


またLINEが鳴る。




「蒼の写真も送ってよ」






一方その頃。





「ねぇ澪〜」




「この冬服なんだけどさ」




「見てよ〜」





同僚が、


バックヤードに入ってくる。




目が合う。




「……なにニヤけてんの?w」




「え?」




「ニヤけてないよ?」




「ニヤけてたよ!」




「めちゃくちゃ!」




「あー!彼氏できたんでしょー?」




「この間の人?」




「付き合ったの!?」




「……うん」




「きゃー!!」




「おめでとう!!」





「いいなー」




「なんかキラキラしてるわー」




「そんなことないよー」





「でもいいじゃん」




「大人の恋って感じでさ」





少しだけ、


間。





「……そういえばさ」




「浦部さんとはもう連絡取ってないよね?」




「……うん」




「この間さ」




「店の近くで見たって店長が言ってて」




「え……」




「別れてから担当変えてもらったじゃん?」




「それから来てないと思ったらさ」




「そんな話聞いて」




「……そうなんだ」




「でも、たまたまじゃない?」




「だよね!?」




「もし来てもさ」




「愛しの彼氏がなんとかしてくれるよ!」




「もうやめてよ〜」





笑いながら、


流す。





でも、




少しだけ、


引っかかった。

変わらない日々の中に、


ちゃんと残るものがある。




それを、


見逃さないでいたい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ