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波待ち。  作者: 阿部兄弟
4章 愛と代償

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37/38

37話 「青春」


遅かったんじゃない。




全部ここに来るための、


時間だった。


第4章 始まる。



車は走っている。




夕陽はもう沈みかけていた。




オレンジの残りが、


フロントガラスにうっすら映る。




「ねぇ」




「ん?」




「さっきのさ」




少しだけ間。




「ちゃんと覚えとくね」




「……おう」




それだけで、


ちゃんと残る。





「ねぇねぇ」




「お互い色々あって、再会したじゃん?」




「……あぁ」




「なんかさ、意味あったのかもね」





澪は、


窓の外を見ながら続ける。




「私さ、海で蒼見つけた時」




「話しかけなきゃ、一生後悔するって思って」




「私の中ではさ」




「蒼って、あの時退学したままだったから」




「もう二度と会わないって思ってたの」





「だから、話しかけた」





「……だったらさ」




「なんで普通に話しかけてこなかったんだよ」




少しだけ笑う。




「最初はね?」




「そうしようと思ったんだけど」




「顔が怖くてw」




「失礼なやつだな」





「俺もさ」




「話しかけられた時、すぐ分かったよ」




「あ、この顔、あいつだって」




「そうだよね」




「すぐ聞いてきたもんね」





「嬉しかった」




「覚えてくれてたの」





「逆にさ」




「あのクラスでお前のこと覚えてないやついないだろ」




「まぁ確かにw」




「目立ってはいたよね」




「目立ちすぎだろ」





二人で笑う。





「ねぇ」




「ん?」




「私たちってさ」




少しだけ、


言葉を選ぶ。




「今日から付き合ってるでいいんだよね?」




「……まぁ、そうだな」




「ふふっ」




「なんか変な感じ」




「確かに」





「もう大人だしね」




「28だからな」





「大人の青春ってやつだね」




「……あぁ」




「なんかいいな、それ」





また、


笑う。





澪の家に着く。





「よし」




「んじゃあ、ありがとうね」




「おう」





ドアを開ける。





「あ、ちょっと待って」




「後ろ車来てる、ハザードつけて」




蒼がスイッチに手を伸ばす。




その瞬間。





頬に、


触れる。





——チュッ





「……っ!?」




クラクションが鳴る。




「おい!何やってんだよ!」




「えー?w」




「蒼ってさ」




「そんな見た目してて結構シャイだよね〜」




「急にやるからだろ!」





澪が笑いながら降りる。





荷物を下ろす。





蒼が窓を開ける。




「じゃあな」




「またねー」





少しだけ、


間。





「大好きだよー」





蒼は、


鼻で笑う。





でも、


表情が少しだけ崩れる。





車を出す。





サイドミラー越しに、


手を振る澪が見える。





少しだけ、


口元が緩む。





LINEが鳴る。





「これからもよろしくね、蒼」





蒼は、


珍しくオーディオをつける。





流れてきたのは、




懐かしい


ロックンロール。


特別じゃない日々が、


ちゃんと嬉しい。




それが、


今の答えだった。

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