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波待ち。  作者: 阿部兄弟
4章 愛と代償

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37/84

37話 「青春」


遅かったんじゃない。


⸻


⸻


全部ここに来るための、


時間だった。


第4章 始まる。



車は走っている。


⸻


⸻


夕陽はもう沈みかけていた。


⸻


⸻


オレンジの残りが、


フロントガラスにうっすら映る。


⸻


⸻


「ねぇ」


⸻


⸻


「ん?」


⸻


⸻


「さっきのさ」


⸻


⸻


少しだけ間。


⸻


⸻


「ちゃんと覚えとくね」


⸻


⸻


「……おう」


⸻


⸻


それだけで、


ちゃんと残る。


⸻


⸻


⸻


「ねぇねぇ」


⸻


⸻


「お互い色々あって、再会したじゃん?」


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⸻


「……あぁ」


⸻


⸻


「なんかさ、意味あったのかもね」


⸻


⸻


⸻


澪は、


窓の外を見ながら続ける。


⸻


⸻


「私さ、海で蒼見つけた時」


⸻


⸻


「話しかけなきゃ、一生後悔するって思って」


⸻


⸻


「私の中ではさ」


⸻


⸻


「蒼って、あの時退学したままだったから」


⸻


⸻


「もう二度と会わないって思ってたの」


⸻


⸻


⸻


「だから、話しかけた」


⸻


⸻


⸻


「……だったらさ」


⸻


⸻


「なんで普通に話しかけてこなかったんだよ」


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⸻


少しだけ笑う。


⸻


⸻


「最初はね?」


⸻


⸻


「そうしようと思ったんだけど」


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⸻


「顔が怖くてw」


⸻


⸻


「失礼なやつだな」


⸻


⸻


⸻


「俺もさ」


⸻


⸻


「話しかけられた時、すぐ分かったよ」


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⸻


「あ、この顔、あいつだって」


⸻


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「そうだよね」


⸻


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「すぐ聞いてきたもんね」


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⸻


⸻


「嬉しかった」


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⸻


「覚えてくれてたの」


⸻


⸻


⸻


「逆にさ」


⸻


⸻


「あのクラスでお前のこと覚えてないやついないだろ」


⸻


⸻


「まぁ確かにw」


⸻


⸻


「目立ってはいたよね」


⸻


⸻


「目立ちすぎだろ」


⸻


⸻


⸻


二人で笑う。


⸻


⸻


⸻


「ねぇ」


⸻


⸻


「ん?」


⸻


⸻


「私たちってさ」


⸻


⸻


少しだけ、


言葉を選ぶ。


⸻


⸻


「今日から付き合ってるでいいんだよね?」


⸻


⸻


「……まぁ、そうだな」


⸻


⸻


「ふふっ」


⸻


⸻


「なんか変な感じ」


⸻


⸻


「確かに」


⸻


⸻


⸻


「もう大人だしね」


⸻


⸻


「28だからな」


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⸻


⸻


「大人の青春ってやつだね」


⸻


⸻


「……あぁ」


⸻


⸻


「なんかいいな、それ」


⸻


⸻


⸻


また、


笑う。


⸻


⸻


⸻


澪の家に着く。


⸻


⸻


⸻


「よし」


⸻


⸻


「んじゃあ、ありがとうね」


⸻


⸻


「おう」


⸻


⸻


⸻


ドアを開ける。


⸻


⸻


⸻


「あ、ちょっと待って」


⸻


⸻


「後ろ車来てる、ハザードつけて」


⸻


⸻


蒼がスイッチに手を伸ばす。


⸻


⸻


その瞬間。


⸻


⸻


⸻


頬に、


触れる。


⸻


⸻


⸻


——チュッ


⸻


⸻


⸻


「……っ!?」


⸻


⸻


クラクションが鳴る。


⸻


⸻


「おい!何やってんだよ!」


⸻


⸻


「えー?w」


⸻


⸻


「蒼ってさ」


⸻


⸻


「そんな見た目してて結構シャイだよね〜」


⸻


⸻


「急にやるからだろ!」


⸻


⸻


⸻


澪が笑いながら降りる。


⸻


⸻


⸻


荷物を下ろす。


⸻


⸻


⸻


蒼が窓を開ける。


⸻


⸻


「じゃあな」


⸻


⸻


「またねー」


⸻


⸻


⸻


少しだけ、


間。


⸻


⸻


⸻


「大好きだよー」


⸻


⸻


⸻


蒼は、


鼻で笑う。


⸻


⸻


⸻


でも、


表情が少しだけ崩れる。


⸻


⸻


⸻


車を出す。


⸻


⸻


⸻


サイドミラー越しに、


手を振る澪が見える。


⸻


⸻


⸻


少しだけ、


口元が緩む。


⸻


⸻


⸻


LINEが鳴る。


⸻


⸻


⸻


「これからもよろしくね、蒼」


⸻


⸻


⸻


蒼は、


珍しくオーディオをつける。


⸻


⸻


⸻


流れてきたのは、


⸻


⸻


懐かしい


ロックンロール。


特別じゃない日々が、


ちゃんと嬉しい。


⸻


⸻


それが、


今の答えだった。

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