35話 「意識」
変わったのは、
距離じゃない。
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見え方が、
少しだけ変わった。
ショッピングモール。
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蒼と澪が並んで歩く。
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「こっちこっち」
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澪が先に進む。
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「秋服欲しかったんだよね〜」
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「女の服って、みんな同じに見えるよな」
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「蒼、パパと同じこと言ってるーw」
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「モテないよ?w」
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「別にモテようとしてねーよ」
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「そう?」
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少しだけ、
含みを持たせて笑う。
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「私は色々考えてるけどね〜」
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「……」
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その言葉の意味を、
考えかけてやめる。
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「あーこれこれ」
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何着か手に取る。
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「ちょっと着てくるね」
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試着室へ消える。
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しばらくして、
カーテンが開く。
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店員と一緒に出てくる。
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「どう?これ良くない?!」
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「……普通だな」
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「え?」
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「似合っては、いる」
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「最初からそう言えよ!」
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店員が、
くすっと笑う。
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二人が同時に見る。
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「あ、すいません」
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「仲良いカップルさんだなって思って」
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「そんなー恥ずかしい〜」
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澪は、
否定しない。
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「あとこっちも着るから待っててね」
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また消える。
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もう一度、
出てくる。
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「どう?」
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「さっきの方がいいかもな」
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「やっぱり?」
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「私もそう思った」
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「これにしよ!」
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「すいません、これお願いします」
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「はーい」
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会計を済ませる。
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袋を受け取る。
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「ねぇ蒼」
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「ん?」
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「やっぱり私たちってカップルに見えるのかな?」
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「……」
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一瞬、
言葉が詰まる。
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「まぁ……歳も同じだし」
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「側から見たらそうなんじゃね?」
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「本当は師弟関係なのにね〜w」
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「……そうだな」
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笑う。
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でも、
さっきの店員の言葉が、
残っている。
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否定しなかったことも。
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「あー!」
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「ここインスタで見たとこだ〜」
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クレープ屋を指差す。
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「ねぇ蒼も食べない?」
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「食べる」
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「食べるのかい!」
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「いらっしゃいませー!」
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「ただいまカップル割やってまして」
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「カップルで2つ頼むと1個割引されるんですよ〜」
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「よかったらどうぞ!」
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「……」
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「じゃあこのイチゴチョコひとつ」
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「蒼は?」
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「……あー、これ」
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「バナナカスタードですね!」
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「少々お待ちください!」
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並んで待つ。
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(今日はやけに……)
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(周りに意識させられるな)
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「お待たせしましたー!」
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「have a nice day〜!」
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クレープを受け取る。
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「……」
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さっきの言葉が、
頭から離れない。
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カップル。
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否定しなかった澪。
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「あのさ」
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「あのさ」
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声が重なる。
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「え、なに?いいよ先言って」
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「……」
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「私、クレープって美味しいよねって言おうとしただけだし」
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「……ふん」
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少しだけ、
笑う。
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(分かりやすい)
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先言っていいよって言いながら、自分で言うんだよな澪は。
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「てか」
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「てか」
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再会したあの日と重なる。
あれから色々と変わったな。
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「いいよいいよ!」
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「私サーフィン何年やってるんですかって聞こうとしただけだしw」
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「……そうか」
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小さく、
息を吐く。
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「このあと」
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「ちょっと付き合ってくれよ」
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「え?」
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「いいけど」
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「珍しい〜」
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「行きたいとこある」
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二人で車に向かう。
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クレープのチョコが、
少しだけ溶けていた。
名前をつけた瞬間、
戻れなくなる。
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それでも、
目を逸らさなかった。




