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波待ち。  作者: 阿部兄弟
3章 交錯と距離

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35/84

35話 「意識」

変わったのは、


距離じゃない。


⸻


⸻


見え方が、


少しだけ変わった。


ショッピングモール。


⸻


蒼と澪が並んで歩く。


⸻


⸻


「こっちこっち」


⸻


澪が先に進む。


⸻


⸻


「秋服欲しかったんだよね〜」


⸻


⸻


「女の服って、みんな同じに見えるよな」


⸻


⸻


「蒼、パパと同じこと言ってるーw」


⸻


⸻


「モテないよ?w」


⸻


⸻


「別にモテようとしてねーよ」


⸻


⸻


「そう?」


⸻


⸻


少しだけ、


含みを持たせて笑う。


⸻


⸻


「私は色々考えてるけどね〜」


⸻


⸻


「……」


⸻


⸻


その言葉の意味を、


考えかけてやめる。


⸻


⸻


⸻


「あーこれこれ」


⸻


⸻


何着か手に取る。


⸻


⸻


「ちょっと着てくるね」


⸻


⸻


試着室へ消える。


⸻


⸻


⸻


しばらくして、


カーテンが開く。


⸻


⸻


店員と一緒に出てくる。


⸻


⸻


「どう?これ良くない?!」


⸻


⸻


「……普通だな」


⸻


⸻


「え?」


⸻


⸻


「似合っては、いる」


⸻


⸻


「最初からそう言えよ!」


⸻


⸻


店員が、


くすっと笑う。


⸻


⸻


二人が同時に見る。


⸻


⸻


「あ、すいません」


⸻


⸻


「仲良いカップルさんだなって思って」


⸻


⸻


「そんなー恥ずかしい〜」


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⸻


澪は、


否定しない。


⸻


⸻


⸻


「あとこっちも着るから待っててね」


⸻


⸻


また消える。


⸻


⸻


⸻


もう一度、


出てくる。


⸻


⸻


「どう?」


⸻


⸻


「さっきの方がいいかもな」


⸻


⸻


「やっぱり?」


⸻


⸻


「私もそう思った」


⸻


⸻


「これにしよ!」


⸻


⸻


「すいません、これお願いします」


⸻


⸻


「はーい」


⸻


⸻


⸻


会計を済ませる。


⸻


⸻


袋を受け取る。


⸻


⸻


⸻


「ねぇ蒼」


⸻


⸻


「ん?」


⸻


⸻


「やっぱり私たちってカップルに見えるのかな?」


⸻


⸻


「……」


⸻


⸻


一瞬、


言葉が詰まる。


⸻


⸻


「まぁ……歳も同じだし」


⸻


⸻


「側から見たらそうなんじゃね?」


⸻


⸻


「本当は師弟関係なのにね〜w」


⸻


⸻


「……そうだな」


⸻


⸻


笑う。


⸻


⸻


⸻


でも、


さっきの店員の言葉が、


残っている。


⸻


⸻


否定しなかったことも。


⸻


⸻


⸻


「あー!」


⸻


⸻


「ここインスタで見たとこだ〜」


⸻


⸻


クレープ屋を指差す。


⸻


⸻


「ねぇ蒼も食べない?」


⸻


⸻


「食べる」


⸻


⸻


「食べるのかい!」


⸻


⸻


⸻


「いらっしゃいませー!」


⸻


⸻


「ただいまカップル割やってまして」


⸻


⸻


「カップルで2つ頼むと1個割引されるんですよ〜」


⸻


⸻


「よかったらどうぞ!」


⸻


⸻


「……」


⸻


⸻


「じゃあこのイチゴチョコひとつ」


⸻


⸻


「蒼は?」


⸻


⸻


「……あー、これ」


⸻


⸻


「バナナカスタードですね!」


⸻


⸻


「少々お待ちください!」


⸻


⸻


⸻


並んで待つ。


⸻


⸻


⸻


(今日はやけに……)


⸻


⸻


(周りに意識させられるな)


⸻


⸻


⸻


「お待たせしましたー!」


⸻


⸻


「have a nice day〜!」


⸻


⸻


クレープを受け取る。


⸻


⸻


⸻


「……」


⸻


⸻


さっきの言葉が、


頭から離れない。


⸻


⸻


カップル。


⸻


⸻


否定しなかった澪。


⸻


⸻


⸻


「あのさ」


⸻


⸻


「あのさ」


⸻


⸻


声が重なる。


⸻


⸻


「え、なに?いいよ先言って」


⸻


⸻


「……」


⸻


⸻


「私、クレープって美味しいよねって言おうとしただけだし」


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⸻


「……ふん」


⸻


⸻


少しだけ、


笑う。


⸻


⸻


⸻


(分かりやすい)


⸻


⸻


先言っていいよって言いながら、自分で言うんだよな澪は。


⸻


⸻


⸻


「てか」


⸻


⸻


「てか」


⸻


⸻


再会したあの日と重なる。


あれから色々と変わったな。


⸻


⸻


「いいよいいよ!」


⸻


⸻


「私サーフィン何年やってるんですかって聞こうとしただけだしw」


⸻


⸻


「……そうか」


⸻


⸻


⸻


小さく、


息を吐く。


⸻


⸻


⸻


「このあと」


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⸻


「ちょっと付き合ってくれよ」


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⸻


「え?」


⸻


⸻


「いいけど」


⸻


⸻


「珍しい〜」


⸻


⸻


「行きたいとこある」


⸻


⸻


⸻


二人で車に向かう。


⸻


⸻


⸻


クレープのチョコが、


少しだけ溶けていた。


名前をつけた瞬間、


戻れなくなる。


⸻


⸻


それでも、


目を逸らさなかった。

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