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波待ち。  作者: 阿部兄弟
3章 交錯と距離

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34/49

34話 「寄道」


帰るだけの日に、


しなかった。




少しだけ、


遠回りした。


海から上がる。



濡れたまま、


並んで歩く。




手は、


繋いだまま。




何も言わない。



でも、


離さない。




足音と、


波の音だけが響く。




「……腹減った」



「分かる」




少しだけ、


笑う。




「またコーヒーでも行くか?」



「いいね」




車に向かう。




その途中で、


ふっと手が離れる。




どっちからでもなく、


自然に。




「……」




少しだけ、


物足りない。




でも、


何も言わない。





駐車場。




シャワーを浴びる。




水が、


体を流れていく。




さっきの感触も、


一緒に流れていくはずなのに。




「……」




なぜか、


残っていた。





着替えて外に出る。




澪が待っている。




「おそーい」




「お前が早ぇんだよ」




「ちゃんと洗った?」




「ガキか」





軽く笑う。





目が合う。




ほんの一瞬、


間ができる。





「……行くか」




「うん」





車に乗る。




エンジンがかかる。




「どこ行く?」




「この先にいいとこある」




「へぇ」




車が走り出す。




窓の外に、


海が流れる。





「さっきさ」




「ん?」




「びっくりした」




「何が」




「一緒に乗ったやつ」




「普段はやらねぇって言ったやつな」




「でもさ」




少しだけ間。




「楽しかった」




「……そっか」




それだけ返す。





信号待ち。




ふと、


横を見る。




澪が、


外を見ている。




髪が、


少し揺れる。




「……」




少しだけ、


見てしまう。





「なに?」




「……別に」





すぐに視線を戻す。





カフェに着く。




店内。




「にが」




澪が顔をしかめる。




「ブラック飲めねぇのかよ」




「飲めるよ!」




「顔に出てる」




「うるさいなー」





砂糖を入れる。




「それブラックじゃねぇだろ」




「気分はブラックなの!」





笑う。





少しだけ、


静かになる。





「ねぇ」




「ん?」




「今日さ」




少しだけ、


考えるように。




「なんかいい日だね」




「……そうだな」





コーヒーを飲む。





静かな時間。





でも、


気まずくはない。




むしろ、


落ち着く。





「……」




ふと、


思う。





これ、


普通じゃないな。





「ねぇ」




「ん?」




少しだけ身を乗り出す。





「このあとさ」





一瞬、


間。





「買い物付き合ってよ!」


終わらせなければ、


続いていく。




その時間が、


心地よかった。

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