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波待ち。  作者: 阿部兄弟
3章 交錯と距離

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34/84

34話 「寄道」


帰るだけの日に、


しなかった。


⸻


⸻


少しだけ、


遠回りした。


海から上がる。


⸻


濡れたまま、


並んで歩く。


⸻


⸻


手は、


繋いだまま。


⸻


⸻


何も言わない。


⸻


でも、


離さない。


⸻


⸻


足音と、


波の音だけが響く。


⸻


⸻


「……腹減った」


⸻


「分かる」


⸻


⸻


少しだけ、


笑う。


⸻


⸻


「またコーヒーでも行くか?」


⸻


「いいね」


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⸻


車に向かう。


⸻


⸻


その途中で、


ふっと手が離れる。


⸻


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どっちからでもなく、


自然に。


⸻


⸻


「……」


⸻


⸻


少しだけ、


物足りない。


⸻


⸻


でも、


何も言わない。


⸻


⸻


⸻


駐車場。


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⸻


シャワーを浴びる。


⸻


⸻


水が、


体を流れていく。


⸻


⸻


さっきの感触も、


一緒に流れていくはずなのに。


⸻


⸻


「……」


⸻


⸻


なぜか、


残っていた。


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⸻


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着替えて外に出る。


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澪が待っている。


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「おそーい」


⸻


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「お前が早ぇんだよ」


⸻


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「ちゃんと洗った?」


⸻


⸻


「ガキか」


⸻


⸻


⸻


軽く笑う。


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⸻


⸻


目が合う。


⸻


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ほんの一瞬、


間ができる。


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⸻


⸻


「……行くか」


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「うん」


⸻


⸻


⸻


車に乗る。


⸻


⸻


エンジンがかかる。


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⸻


「どこ行く?」


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⸻


「この先にいいとこある」


⸻


⸻


「へぇ」


⸻


⸻


車が走り出す。


⸻


⸻


窓の外に、


海が流れる。


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⸻


⸻


「さっきさ」


⸻


⸻


「ん?」


⸻


⸻


「びっくりした」


⸻


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「何が」


⸻


⸻


「一緒に乗ったやつ」


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「普段はやらねぇって言ったやつな」


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⸻


「でもさ」


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⸻


少しだけ間。


⸻


⸻


「楽しかった」


⸻


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「……そっか」


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⸻


それだけ返す。


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⸻


⸻


信号待ち。


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ふと、


横を見る。


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澪が、


外を見ている。


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髪が、


少し揺れる。


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「……」


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少しだけ、


見てしまう。


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⸻


「なに?」


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⸻


「……別に」


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⸻


すぐに視線を戻す。


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⸻


カフェに着く。


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店内。


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「にが」


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⸻


澪が顔をしかめる。


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「ブラック飲めねぇのかよ」


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「飲めるよ!」


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「顔に出てる」


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「うるさいなー」


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⸻


⸻


砂糖を入れる。


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⸻


「それブラックじゃねぇだろ」


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⸻


「気分はブラックなの!」


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⸻


⸻


笑う。


⸻


⸻


⸻


少しだけ、


静かになる。


⸻


⸻


⸻


「ねぇ」


⸻


⸻


「ん?」


⸻


⸻


「今日さ」


⸻


⸻


少しだけ、


考えるように。


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⸻


「なんかいい日だね」


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「……そうだな」


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⸻


コーヒーを飲む。


⸻


⸻


⸻


静かな時間。


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⸻


⸻


でも、


気まずくはない。


⸻


⸻


むしろ、


落ち着く。


⸻


⸻


⸻


「……」


⸻


⸻


ふと、


思う。


⸻


⸻


⸻


これ、


普通じゃないな。


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⸻


⸻


「ねぇ」


⸻


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「ん?」


⸻


⸻


少しだけ身を乗り出す。


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⸻


⸻


「このあとさ」


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⸻


⸻


一瞬、


間。


⸻


⸻


⸻


「買い物付き合ってよ!」


終わらせなければ、


続いていく。


⸻


⸻


その時間が、


心地よかった。

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