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波待ち。  作者: 阿部兄弟
3章 交錯と距離

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25話 「再起」


タイミングは、


来ていたのかもしれない。



ただ、


踏み出す理由も、


踏み出せない理由も、


どっちもあっただけで。




これは、


その“間”にいる話。


車は、ゆっくりと走っていた。



海から離れているのに、


アクセルは踏み切られない。



流れる景色だけが、


同じ速さで過ぎていく。




「波待ち」



「は?」



「波待ち!!!」



澪が身を乗り出す。



「ずっと波待ちしてる感じなの!!」




蒼は何も言わない。



ただ、


ハンドルを握る手に、


わずかに力が入る。




「人生ってさ」



澪が続ける。



「サーフィンに似てるんじゃないのー!!??」




「……は?」




「波来てるのに、ずっと待ってるだけみたいな」



「そんなんじゃ、良い波に乗れないよー??」




「うるせぇなぁ」



「うるさくない」




軽い言い合い。



でも。




その言葉が、


やけに残る。





——「沙耶香さん妊娠中なんだろ」



——「そんな中途半端なら海来んな」



——「やるなら、ちゃんとやれ」




すだけいの声。




一瞬、


空気が重なる。




「……」




あのとき、


蒼は何も言えなかった。





それから。




少しだけ、


変えた。




帰る時間を早くしたり。



朝、ちゃんと起きたり。




当たり前のことを、


ちゃんとやるようにした。





ある日。




「これ、どう思う?」




店の中で、


沙耶香が小さな服を持っている。




「ちっちゃ」



思わず、笑う。




「でしょ?」




少しだけ、


楽しそうな顔。




「まだ早いかな」



「いや、いいんじゃねぇの」




カゴに入れる。





「名前、どうする?」




帰り道、


沙耶香がぽつりと言う。




「まだ早ぇだろ」




「でもさ」




少しだけ笑う。




「考えるの、楽しいじゃん」




「……まぁな」





ポケットの中で、


音が鳴る。




沙耶香のスマホ。




一瞬だけ、


視線が落ちる。




でも。




「ごめん、ちょっと」




そう言って、


少しだけ距離を取る。




蒼は、


気にしない。





ちゃんとやっていれば、


大丈夫だと思っていた。




向き合えば、


伝わると思っていた。




そうすれば、


あいつも——




やめてくれると、


信じていた。





「……」




現在に戻る。




車は、


まだ走っている。




澪は何も言わない。




ただ、


前を見ている。





蒼も、


何も言わない。





波は、


来ている。





それでも。





アクセルは、


踏み切られないままだった。


分かっているのに、


動けない。



それでも、


時間は止まらない。




波は、


また来る。




——次は、どうする。

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