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波待ち。  作者: 阿部兄弟
2章 波紋と余温

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22話 「邂逅」


きっかけなんて、


だいたいこんなものだと思う。



特別でも、


劇的でもない。



ただ、


少しだけ日常が変わる瞬間。



それが、


後から大きな意味を持つこともある。


楓は高校に入学し、


バスケ部に入った。



小学校から続けてきたそれは、


簡単に手放せるものじゃなかった。




「ただいま」



玄関から聞こえる声も、


どこか明るい。




それだけで、


少し救われる気がした。




ある日。



仕事終わり。



そのまま、楓の高校へ向かう。




体育館。




扉を開けると、


音が溢れてくる。




シューズが床を擦る音。



ボールが弾む音。




「キュッ、キュッ」




その中で、


楓が走っている。




汗をかきながら、


ドリブルしている。




無駄のない動き。




「あいつ…」




思わず、


小さく笑う。




そのとき。




「もしかして、楓ちゃんのお兄さんですか?」




後ろから声。




振り向く。




一人の女性。




若い。



多分、同い年くらい。




「あぁ、はい」




軽く頭を下げる。




「妹がお世話になってます」




女性が明るく笑う。




「こちらこそ!」




「私、コーチの山口沙耶香って言います」




はっきりした声。




どこか、真っ直ぐな印象。




「楓さん、すごいですよ!」




少し身を乗り出す。




「一年生なのに、今度の練習試合スタメンなんです!」




「……え?」




思わず、楓を見る。




知らなかった。




そんなに上手かったのか。




少しだけ、


口元が緩む。




「そうなんですね」




照れ隠しのように言う。




「小学校からやってるんで」




「上手くならなきゃ困りますよね、逆に」




少し得意げに。




沙耶香が笑う。




「私、この高校のOGなんですけど」




体育館を見渡す。




「ここ、バスケ部だけ結構レベル高いんですよ」




少し間。




「そこでスタメンって、なかなかないです」




その言葉に、


もう一度楓を見る。




走っている。




必死に。




でも、楽しそうに。




「……そっすか」




短く返す。




でも。




その声は、


少しだけ柔らかかった。





それが、


山口沙耶香との出会いだった。



このときはまだ、


ただの出会いだった。



何も特別じゃない、


どこにでもあるような。



でも、


確実に何かは動き始めていた。



それに気づくのは、


もう少し後の話。

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