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波待ち。  作者: 阿部兄弟
2章 波紋と余温

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20話「覚悟」

好きだと気づいた、その先で。



初めて、


誰かのことを考える自分に気づく。



でも。



それは、


優しさだけじゃ足りない場所だった。


胸の奥に落ちたままの想いが、


まだ、静かに揺れている。




「波も減ってきたし、そろそろ上がるか」



二人は海から上がる。



濡れた足で砂を踏みながら、並んで歩く。



蒼がふと、笑う。



「あれ感じたら、サーフィンやめれなくなるんだよな」



その顔は、


どこか子供みたいだった。



澪が思わず吹き出す。



「なんだよ」



「いやさ、さっき私のこと“子供みたいな顔”って言ってたけど」



少しだけ笑いながら。



「蒼も今、子供みたいだったよ?」



「うるせーな」



二人で笑う。



少しだけ、間。



蒼が前を見たまま続ける。



「俺もさ」



「初めてテイクオフできたとき」



「時間止まったみたいな感覚になって」



「なんか、不思議な気持ちになったんだよな」



澪が頷く。



「波待ちも重要だよね」



「乗る波、ちゃんと見極めないといけないし」



「そうだな」



短く返す。




防波堤の階段を降りる。



コンクリートに残る水が、光を反射する。




二人はそれぞれ、


男女のシャワー室へと分かれていく。





澪が先に上がる。



髪を軽く拭きながら、辺りを見渡す。



「あれ?蒼いないな…」




少し歩く。




「あっ、いたいた」



少し離れた場所。



蒼が、タバコを吸っている。




後ろから近づく。



少しだけ笑って。



驚かせようとした、そのとき。




蒼の視線の先に気づく。




父。



母。



子供。




三人で笑っている。




その光景を、


蒼はただ見ていた。




その顔は。




虚しくて。



痛くて。



哀しかった。




澪は、動きを止める。




驚かすのをやめる。




何も知らないふりをして、


自然に隣へ歩く。




「おまたせー」




「おう」




「いこっか」




「あぁ」




二人は歩き出す。




澪が、少しだけ視線を横に流す。




さっきの三人。



まだ笑っている。




——そうだよね




蒼だって、


そういうの、あるよね。




私を、


過去から救おうとしてくれてる蒼。




でも。




——あなたは?




誰が、


救ってくれるの。




少しだけ、


息を吸う。




答えは、


もう出ている気がした。




——それは、私しかいない。


踏み込めば、


何かが変わる。



でも。



踏み込まなければ、


何も変わらない。



その間で、


まだ、立ち止まっている。

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