表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
波待ち。  作者: 阿部兄弟
2章 波紋と余温

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/44

16話 「心凪」

特別なことは、何もない。



ただ、続いているだけ。



どうでもいい会話。


くだらないやり取り。



それなのに。



少しずつ、


何かが変わっていく。

スマホが震える。



休憩時間。



店内のバックヤード。



少しだけざわついた空気。




澪はスマホを見る。



蒼から。




「板を下に潜らせて波を越える方法」




一瞬、止まる。




「……なるほど?」




小さく呟く。




少し考えて、打つ。




「それって私もできる?」




送信。




すぐに返ってくる。




「出来なきゃキツイし」



少し間。



「その為に俺がいんだろ」




澪の手が止まる。




ほんの少しだけ。



口元が緩む。




その瞬間。




「なになに〜?」




横から声。




「“その為に俺がいんだろ”だって〜!!」




耳元で囁くように。




「澪もすみに置けないねぇ〜?」




澪が一気に振り向く。




「ちょっと!」




スマホを隠す。




「違うってば!」




少し焦りながら。




「ただサーフィン教えてもらってるだけ!」




同僚はニヤニヤしてる。




「はいはい」




腕を組んで。




「そういうことにしといてあげる」




悪そうな顔。




澪はため息をつく。




「ほんと違うからね…」




そう言いながらも。




もう一度、スマホを見る。




さっきの一文。




「その為に俺がいんだろ」




胸の奥が、


少しだけ温かくなる。




でも。




同時に、


ほんの少しだけ怖い。




——また、同じになったら




一瞬よぎる。




でも。




首を軽く振る。




「……違うよね」




小さく呟く。




その言葉は、


誰にも聞こえない。



再会したあの日から、二週間。



特別なことは、何もなかった。



ただ。



たわいもないLINEが、


続いている。




天気の話。



仕事の愚痴。



どうでもいい冗談。




それだけなのに。



なぜか、続いていた。




ブー。



スマホが震える。




澪。




「明日休み!コーチの出番だよ!」




蒼は画面を見て、


少し首を傾げる。




「コーチへのリスペクトが足りない。無理。」




すぐに既読。




「嘘です教えてください。」




間髪入れず。




蒼がふっと笑う。




「よろしい。」



少し間。



「7時に迎えに行く。」




送信。




画面の向こうで、


澪もきっと笑ってる。





布団の中。




澪はスマホを胸に置く。




暗い天井。




「……楽しみ」




ぽつりと漏れる。




こんなふうに。



未来を楽しみに思うのは、


いつぶりだろう。




生き甲斐。



やり甲斐。




よく分からないけど。




「こういうことなのかな」




小さく笑う。

ただのやり取りのはずなのに、


それが途切れないだけで、


少しだけ安心してしまう。



名前を見て、


既読を確認して、


返事を待つ。



そんなことの繰り返しが、


少しずつ距離を変えていく。



まだ、はっきりしないまま。


でも、確実に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ