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その武器に何を思う ~愛の先にあったのは絶望の連鎖だった~  作者: 人鳥迂回


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その武器に何を思う〜ケバルライ・サビク2〜


 思い返してみれば、見ず知らずの学園生の詳細を知りたいというシェラタンを素直に信じた状況に違和感を覚えてしまいます。しかし、ゾスマさんの名のもとにお願いをされてしまった私は断る選択肢が脳内から消えてしまったのです。

 シェラタンさんとゾスマさんが話している姿を見ていたことも後押しになっていたのでしょう。あり得ないお願いとはいえ、一度受けてしまったものを辞める選択肢もありませんでした。


 学園でロージスさんの様子を観察していると、訓練場での修行を行うことがあり、リーナさんを武器化して木偶を焼き切っていました。本人の口から「切ったものを燃やす」と言われていたのでありのままをシェラタンさんに報告。

 夏休みにはいると修行を行い、毎日のように保健室へと向かっていきました。扉に耳を当ててなかの声を聞こうとしてもいまいち聞き取れなかったので報告は割愛。


 シェラタンさんにはロージスさんとリーナさんの能力、そして保健室の子を送り届けるために行動を共にしていることを伝えました。


「こんなにも上手くいくとは……」


「上手くいく? 私の成果は上々っすか?」


「ええ。貴方のお陰でまた一歩目的へと近づけましたよ」


「共存派としてのっすよね? あの二人の関係性は共存派が求めているようなものだったっす。シェラタンさんもそれを分かってお願いしたんすよね?」


「そうですそうです。共存派として気になったので。ケバルライさん、これにてお願いは終わりです。誰かに聞かれたら『シェラタンさんに協力した』とちゃんと伝えていいですよ」


「分かったっす」


 その会話以降、シェラタンさんと会うことはありませんでした。王都にある倉庫で爆発があったというニュース程度が騒がれていましたが、共存派の活動をする私達には関係のないこと。


 学園内を歩いていると、生徒会室から出てくるロージスさんとリーナさんを見つけました。彼らがいるということはシェラタンさんと話し合いが終わったのでしょう。

 何日も観察を続けていたことで、私はロージスさんたちに興味を持つようになりました。噂されているようひ忌避することはなく、単純に二人の関係性が良いものに思えたのです。アーティファクトと人間が共存して生きているようで、ゾスマさんの理想に近しいものを感じました。


「ロージスさん!」


 だから私は彼らに声をかけました。


 共存派の事を話すと、彼らは知らないようでした。シェラタンさんも少し抜けているのか組織のことを話していなかったようです。私が懇切丁寧に説明をすると、最初は訝しげだった目線が興味に変化する様子を見ることができました。


「集会に行くだけな」


 私の説得が功を奏したのか、彼らが集会に参加するようになりました。

 その間にロージスさんは国の所有する守護団で修行するようになり、共存派としてすごい人をスカウトしてしまったと心が躍りました。


 そして、ロージスさん達の存在はゾスマさんにとっても大きいもので彼らが参加するとすぐに計画を早めたみたいです。署名を集めて国に嘆願すると。

 ロージスさん達をみて、アーティファクトと人間の共存が現実的であると判断したのでしょう。


 何度も話し合いを重ねて、ついに決行する日になります。

 街から少し離れた倉庫の中へゾスマさんから呼び出された私たち共存派。街で商売を営む人から貴族の方まで分け隔てなく集合していました。勿論、ロージスさんのお兄さんであるダレンズさんの姿もあります。

 倉庫の中心の一段盛り上がったところにはローレンスさんが立っており、時計を細かに気にしていました。ゾスマさんは私たちを集合させていましたが、何かの用事があるのか少し遅れているようです。


 ローレンスさんが何処からともなく取り出した笛を鳴らすと共存派の全員が視線を向けました。これから歴史が動く行動を自分たちが起こすという期待を込めて。


 しかし、その笛の音を合図に入ってきたのは鎧を身にまとった男たち。守護団の紋章を胸に掲げ、既に抜剣をしている団員も見えます。

 私たちはただの王都民であり、攻撃されるようなことは一切していません。入り口の一番近くに居た共存派のメンバーが守護団に話しかけます。


「あの、守護団様がどのような要件でしょうか」


 質問の返答は血しぶきとなって返ってくることはありませんでした。庶民でパン屋を営んでいた青年の身体は、守護団の剣によって切り裂かれ、大量の血が倉庫に舞いました。

 その様子を見ていた共存派は理解が追いついていないのか、その場から動くこともできません。


「それでは粛清を開始します。王命です。一人も残さぬように」


 戦闘にいた男の命令を皮切りに、守護団が共存派の群れへと駆け出しました。

 私は騒ぎ立てる共存派の間をくぐり抜け、すぐに身を隠す場所を探しました。小さく、小柄な体躯であったことをこのときほど感謝したことはありません。ゾスマさんは遅れているだけ、来てくれればどうにかなる一心で悲鳴と騒音の中を一人で隠れていました。


「私達は騙されたのっ!」


「違うっ! 話を聞いてくれ」


「ゾスマッ! 何処にいんだよ!」


 一人、また一人と叫ぶ声がなくなっていきます。

 私は死んでいった人たちの死体に隠れながら出口を目指します。ゾスマさんに伝えなきゃと。出口には守護団員が一人しかおらず、見張りを任されているため油断をしていました。

 私は守護団員の隙をついて、素早く移動して出口を目指します。自分の不手際に気がついたのは団員が後ろから追ってきますが、鎧を着ている団員と生身の私では機動力が違います。

 必死になって、外へと向かい、日の光のもとへ飛び出ると、そこには地面に蹲るロージスさんの姿がありました。共存派の集会に参加する予定だったロージスさんは場所も時間も知っていましたが、少し来るタイミングが遅れていたため、被害には遭わなかった。


「ロージスさん! 助けてくださいっす!」


 私がロージスさんのところへ駆け寄ると、私のことを追っていた守護団員は立ち止まり、ロージスさんに話しかけました。


「ロージス殿。そいつは貴殿の知り合いか?」


 私はこの時気がついてしまったのです。

 この中で共存派が集会を行う場所と時間を知っていた人物。そして、攻めてきた守護団と関わりを持っていた人のことを。

 

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