魔王チョコレート
「ありがとう。ちゃんとお礼はするからね」
僕は四人の女の子たちにお礼を言う。アンジュとその仲間たちだ。
今日はバレンタインデー。僕の前には義理チョコがたくさん置かれている。
毎年毎年、なぜかこの日はトラブルが多いから、今年は僕は一日中家のリビングにいて、女の子たちがチョコを持って来てくれるという事になった。まあチョコいっぱいもらってなんかハーレム主人公みたいだけど、全部義理だしなー。朝一マイからは手作りのを貰った。手作りだからもしかしてとは思ったけど、アンにもジブルにもあげてるから自惚れない方がいいだろう。にしても、ずっとマイもアンもリビングにいる。暇なのか? アンジュたちが帰ったあとは、ラパンを筆頭にメイド軍団もやってくる。もうチョコの数が十個は超えている。こりゃお返しが大変だな、マイにも手伝ってもらおう。みんな帰ったので、今から食べるとするか。まあ、全部少しづつは食べるけど、さすがに多いからマイとアンにもおすそ分けしよう。
「久しぶりだなザップ。今日は妾もチョコレートを持ってきたのだ!」
自称魔王のリナが飛び込んでくる。扉を壊さんばかりの勢いだ。相変わらず冬なのに金のビキニしか着けていない。なんか手や足が赤くなってるから実は寒いんじゃないのか?
「見てろザップ。今から召喚するのだ」
リナが床に手のひらを向ける。召喚? チョコを? もしかして魔国のチョコレートって生き物だったりするのか? 床に魔法陣が現れ、黒い塊が出てくる。頭? せり上がってきたのは黒い女の子の彫像。あ、リナだ。腰に手を当ててふんぞり返ってるリナの彫像だ。全く同じポーズをリナがとる。うん、凄くいい出来だ。強いて言うなら彫像の方が胸が大きくてウエストが細いような? 見栄なのか?
「ザップ。受け取れ。チョコだ!」
「は?」
「『は』じゃない。チョコと言ってるだろ。残さず食べろよ」
まじか! チョコなのか? じゃ、食べ物を床に直置きするなよな。けど、リナも多分頑張ったんだろう。プレゼントを貰ったらちゃんと笑顔でお礼を言わないとな。
「あ、うん、ありがとう」
笑顔、引きつってないよな?
「じゃ、お返し楽しみにしてるからな。またな!」
リナは背を向けると勢い良く帰って行った。
コンコン。
マイがリナチョコの頭を、小突いている。
「うわ、中までぎっしり詰まってるわよこんなものどうやって作ったのかしら?」
「んー、魔国の人は、なんでもデカければいいって思ってるのか?」
リナから昔買った大剣も馬鹿デカかったし、これもチョコレートだとしたらずいぶんな量だ。
「ご主人様、食べてもいいですか?」
「まだ待て、曲がりなりにも俺がもらったんだ。だからなんか気持ち悪いが、どこか食べないとな……」
けど、こんなのどうすればいいんだ?
マイが僕をじっと見てる。どこを食べるか? いや、どこを食べても不正解な気がする。だって水着の女の子型だもんな。僕が食べてる姿を想像する。うん、変態にしか見えないだろう。こんな時はマイに聞くに限る。
「マイ、どこから食べればいいかなー」
「んー、可愛いからどこを食べてもなんかもったいないわよねー。可愛い動物のチョコとかもあるけど、あれってどこから食べるか迷うわ。壊れるのがなんか可愛いそうで」
「じゃ、マイ姉様、そういう時はどうするんですか? もしかして溶けるまでペロペロするんですか?」
溶けるまでペロペロ? リナチョコを? リナチョコを見る。どこを舐めても変態だ。
「そんな事する訳ないでしょ。割ってから食べるわよ」
そうか正解は割って食べるか。
破片が飛び散ってもいいように、風呂場にシートを敷いて、その上で割る事にした。床に触れてた足の裏はぬれタオルで綺麗にしたけど、リナチョコを持ち上げて拭くのをマイが複雑そうな顔で見てた。なんでこんなにチョコに振り回される事に……足はアンにあげよう。
「「……」」
うん、最低だ。
目の前には割れたリナチョコ。バラバラ死体にしか見えない。
「マイ、どこ食べたい?」
「強いて言えば腕ね……」
「じゃ、俺がこっちで、マイはそれな」
僕とマイの収納フォルダにリナチョコの腕を入れる。手首は外してる。指はたべやすそうではあるが、精密なのでなんかやだ。
「じゃ、あとはアン食べてもらっていいか?」
「はい、もーまんたいですぅ」
もーまんたいなのか?
なんかズーンとした気分で、アンのフォルダにリナチョコを収納する。
「リナにはちゃんとお返ししないとな」
「そうね。けど、これより凄い事思いつかないわ」
なんかマイも疲れている。
どうでもいいけど、アンがリナチョコを食べる姿を思い浮かべるだけでホラーだな。うん、想像しないようにしよう……
うう、鍋島先生が書いた魔王リナ、見てみたいです。という訳で今年のバレンタインはリナちゃんです。




