7. イケメンは正義
そして二週間後。待ちに待ったハーシェル父子の衣装が完成し、私とマリア、ベルは出来立ての衣装とともに再びハーシェル家を訪れた。
三人とも、私の言いつけを守って、この二週間ちゃんとヘアスタイリングの練習を続けてくれていたらしい。前回はやや初々しい感じもあった髪型も今はしっくり馴染んでいる気がする。
「皆さん、お久しぶりです。その後いかがですか?」
私が尋ねると、イライアスさんが困惑ぎみに答えた。
「それが、なんだか以前とはいろいろ変わってきまして……」
「もしかして、街で嫌がらせを受けなくなってきたとかですか?」
「! そうです、なぜ分かったのですか!? 最初はいつもの人たちから悪口を言われたりもしたのですが、親切なご婦人方が注意してくださって……」
「ふふ、それはありがたかったですね。ちなみに、お店でおまけしてもらえたりもしてませんか?」
「は、はい、それも仰るとおりです……! 昨日も父とエディが買い出しに行った際に、精肉店のおばあさんが少し多めに包んでくださったそうで……」
「あら、またまたラッキーでしたね」
「はい、最近は本当に幸運続きで驚いています……」
イライアスさんは不思議そうな顔をしているけれど、私にしてみたら何も不思議なことはない。すべて想定どおりだ。
「さて、今日は皆さんに新しい衣装を持ってきました。さっそく着替えていただけますか?」
私の目配せに反応して、3つの大きな箱を抱えたマリアとベルがスッと前に出る。
「着方が分からないかもしれないから、マリアとベルも手伝ってあげて。あと、よかったらシンシアさんも」
「はい、ぜひ! さあみんな、早く着替えましょ!」
そうしてウキウキのシンシアさんに先導され、みんなが着替えにいってから約15分後。私が待機する部屋にベルが楽しげな顔で飛び込んできた。
「コーデリア様、着替え完了いたしました! では皆さん、ご入場ください!」
ベルの号令で男性陣が部屋に入ってくる。
前回と同じように横並びになった彼らは、今度は眩しいくらいに真っ白な騎士服に身を包み、神々しいほどのオーラを放っていた。
「これは……まさにアイドル級の輝き!」
つい何らかの光る棒を振り回したくなる。
すると、イケオジ担当のクレイグさんが一歩前に進み出た。
「コーデリア様、この衣装は一体……?」
「ご覧のとおり、皆さんのためにオーダーメイドした騎士服ですよ。これからは警備の仕事時はこちらの衣装を着るようにしてください」
「もしや、これも前に仰っていたイメージ作りのひとつですか?」
「はい、そのとおりです。悪く思われてしまっている墓守りの印象を、明るく神聖なものに変えたくて。そのためにこの騎士服を製作しました」
「なるほど……。でも大丈夫でしょうか。俺たちは聖騎士じゃないのに」
「問題ありません。実際の聖騎士の服とはデザインを変えていますし、〈聖騎士〉という呼称を使わなければいいのですから。今後は〈聖衛士〉と名乗ってください」
「聖衛士……」
ポカンとする三人の横で、シンシアさんが「あら素敵〜」と喜んでいる。
「ああそれから、警備ではなく清掃作業などをする際は、こちらの作業着に着替えてください。動きやすくおしゃれなデザインにしてもらっているので」
私の説明に合わせてマリアとベルが作業用のつなぎを見せる。するとイライアスさんが思わしげな顔で手を挙げた。
「たしかに作業着にしては洒落ていますが、イメージ作りのほうは大丈夫なのですか? 常に騎士服を着用したほうが印象がよさそうな気がしますが……」
「問題ありません。表と裏のギャップを狙ったプランなので」
イケメンたちが表舞台で見せるキリッと凛々しい騎士服姿に、やや裏方的で緩い雰囲気のある作業着姿。ファンであれば、どちらの姿を見たとしてもテンションが上がること間違いなしだ。
「さて、これでプラン2も終わりです。次はプラン3と4に入る予定なので、ご協力をお願いしますね」
「わ、分かりました」
私はプロジェクトの進捗に手応えを感じながら、次のフェーズへと舵を切ることに決めたのだった。




