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3. ケガレ者の少年

「汚ねえ奴は街に来るんじゃねえよ! ケガレ者がよぉ!」

「や、やめてよ……! 僕は買い出しに来ただけで……」

「うるせえ! おい、コイツを街から追い出そうぜ!」

「はい! オレたちで街を守りましょう!」


 親分とその取り巻きのような子たちが、正義のヒーローのような台詞を吐きながら、泣いている男の子をよってたかって痛めつけている。


「何なの、あの子たち……」


 ふいに前世で虐められたときの記憶が蘇る。

 私は居ても立っても居られず、男の子のもとに駆け寄った。


「あなたたち、何してるの! やめなさい!」


 大声で叱りつけると、親分のような子が不遜にもこちらを睨みつけてきた。


「うるせー! オレたちは今、この街を守ってんだ。こいつはケガレ者だからな!」

「ケガレ者ですって?」


 泣いている男の子は、少し髪が伸びっぱなしになっているくらいで、不快になるほど汚れているわけでもない。


「別に大して汚れてないじゃない。服の土汚れだって、あなたたちが蹴ったせいなんだし」

「ハッ、ちげーよ! こいつのケガレは洗ったって落ちねえんだからな!」

「はぁ? どういうこと?」

「こいつは墓守りの子だから、体に穢れが染み付いてるんだ! こいつは不浄の一族なんだよ!」

「墓守りの子……不浄の一族……?」

「ああ、こいつが来ると街が穢れる! だからオレたちが追い払ってやってんだ!」


 親分が得意げに言い放つと、取り巻きたちが「よっ! 街の英雄!」と囃し立てた。


「……なるほど。分かったわ、馬鹿らしい」

「はあ!? 誰が馬鹿だと!?」

「要するに、私たちのご先祖様のお墓を守ってくれてる人たちに感謝するどころか、暴力を振るって虐めてるってことでしょう? それが馬鹿じゃなくて何だっていうの?」

「な、な……」

「ウォルター、ちょっとこのイジメっ子たちを追い払ってもらえる?」

「はっ、かしこまりました」


 陰で待機させていた護衛を呼ぶと、さっきまで威勢のよかった親分と取り巻きたちは、明らかに顔色を変えて冷や汗を流し始めた。


「な、なんだよ、別に虐めてたわけじゃねーし! おいみんな、行くぞ!」


 そう捨て台詞を吐いて、ウォルターの手を煩わせることなく自ら退場してくれた。楽に済んでよかった。


「あなた、大丈夫? さあ、手を貸して」

「あ……」


 男の子の手を掴んで立ち上がらせ、どこか怪我はないか確かめる。


「血は出てないみたいだけど、痛むところはない?」

「えっと……大丈夫です。お姉さんがすぐに助けてくれたので……。僕なんかのために、ありがとうございます」


 男の子がお礼の言葉とともにペコリと頭を下げる。

 その礼儀正しさと「お姉さん」という響きに、そんな場合じゃないのにキュンとしてしまった。


 見た感じ、年齢は10歳くらいだろうか。アーサーと同じくらいの背格好で、つい世話を焼きたくなってしまう。


「気にしないで。当然のことをしただけだから。そういえば、さっき街には買い出しに来たって言ってたわね。また変なのに絡まれると悪いから、私たちもついていくわ」

「えっ、でもご迷惑では……」

「全然。ちなみに私はコーデリアというの。あなたの名前は?」

「僕は……エディといいます」

「そう、エディね。富や幸せを意味するいい名前だわ。それじゃあエディ、買い出しリストを教えてちょうだい。軽いものから順に買っていくわよ」

「は、はい……!」


 私はエディの手を握り、まずは裁縫用の糸と布を買いに向かったのだった。



◇◇◇



 買い出しを終え、エディを家まで送る途中の馬車の中。

 私はお利口に足をそろえてちょこんと座っているエディを微笑ましい気持ちで眺めていた。


「あの、コーデリア様……今日は本当にありがとうございます。買い出しを手伝っていただいたうえに、美味しいデザートまでご馳走になってしまって……」

「いいのよ。私がちょうど甘いものを食べたくなったの。付き合ってくれてありがとう」

「いえそんな……! 本当にすごく美味しかったです。甘くてふわふわで、いろんなフルーツものってて。あんなの初めて食べました」

「気に入ってもらえてよかったわ。お土産のクッキーもご家族と一緒に食べてね」

「はい、みんなきっと喜びます。何から何までありがとうございます……!」


 大きな目を見開き、頬を上気させて何度もお礼の言葉を繰り返す姿から、エディの心からの感謝が伝わってくる。


 これほど礼儀正しく、心根の真っ直ぐな子だ。きっと家族の人たちも優しく、きちんとした人たちなのだろう。


 まだ見ぬエディの家族に思いを馳せていると、エディが「あ!」と声をあげて窓の外を指差した。


「あそこが僕の家です」


 街からだいぶ離れた場所で、人目を忍ぶようにひっそりと佇む家。あばら屋というほどではないが、あちこちに自力で修繕したような跡が見られ、慎ましい暮らしぶりがうかがえた。


 私は御者に頼んで、家のすぐ近くに馬車を停めた。

 エディと一緒に馬車を降り、ウォルターに荷台から買ってきた荷物を運び出してもらう。


 すると、どこからか慌てた様子で駆け寄ってくる人がいた。


「あ、イライアスお兄ちゃん! おかえりなさい!」

「ただいま……じゃなくてエディ、これは一体どういうことだ?」


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