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第12話「水の魔法大会」

 魔法大会は、年に一度行われる大陸規模の大会だった。


 水魔法の部門では、ガルダ大陸全土から選ばれた学生が集まる。各学校の代表が技を競い、採点基準は威力、制御精度、応用力の三項目。審査員は大陸中から招いた一流の魔法使いたちが務める。


 中央魔法学校からは、水グループの二年生と三年生が代表として出場する。一年生は全員応援席だった。


「来年は出られるんだよな」俺はボタ→マリに聞いた。


「らしいな」ボタ→マリは腕を組んで答えた。目だけは真剣だった。


 会場は王都の中心にある大きな闘技場だった。観客席には他校の生徒や教師、一般市民まで集まっていた。石造りの壁に囲まれた舞台は広く、魔法の余波を受け止めるための結界が張られているらしく、空気がわずかに歪んで見えた。大陸全土から集まった選手たちは、制服も雰囲気も様々だった。砂漠地帯から来たらしい日焼けした選手、北の国から来たらしい白髪の選手、見たことのない外見の亜人種の選手もいた。


 これがガルダ大陸の広さか、と思った。


 ヤス=スギは引率教師として観客席の端に立っていた。腕を組んで、無表情のまま舞台を見つめていた。


 二年生の試合が始まった。


 懸命に魔法を繰り出しているのはわかる。でも大陸全土から集まった選手たちを相手に、制御が荒く、威力も安定しない。出るので精一杯、という言葉がそのまま当てはまるような内容だった。


「俺たちも来年ああなるのか」俺は呟いた。


「ならないようにするだけだ」ボタ→マリは短く言った。


 三年生の試合が始まった瞬間、空気が変わった。


 最初の選手が水を操り始めた瞬間、会場が静まり返った。


 水球の大きさが違う。動きの精度が違う。そして何より、魔法に無駄がない。一つ一つの動作が洗練されていて、見ているだけで圧倒される。


 複合魔法を披露する選手もいた。水と土を組み合わせた泥流の壁、水と風を混ぜた霧の幕。どれも実戦で使えるレベルの技だった。


 大陸全土から集まった強豪たちを相手に、中央魔法学校の三年生は一歩も引かなかった。国立の選手と真っ向から渡り合い、会場から歓声が上がる場面もあった。


 審査員たちが静かに頷いた。


「すごいな」ボタ→マリが珍しく呟いた。


 俺も同じ気持ちだった。これが三年間、ヤス=スギの下で基礎を積み重ねた結果か。


 ふとヤス=スギを見ると、相変わらず無表情だった。でもその目が、わずかに細くなっていた。


 大会が終わって、帰り道にボタ→マリが言った。


「来年、出るか」


「出る」俺は即答した。


「俺もだ」ボタ→マリは口の端を少し上げた。「お前に負けるつもりはないけどな」


「こっちもだ」


 それだけだった。でもその一言で、来年に向けての気持ちが固まった気がした。


 スキルツリーを確認すると、魔法適性の矢印が今日より少し強く上を向いていた。


 来年の大会まで、一年ある。地図は正直だった。

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