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無自覚聖女から始まる辺境山暮らし 〜婚約破棄されたけど、神獣と精霊に愛されています〜  作者: なな日々
第3章:山の恵みは規格外編

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第47話 書物の記述と、広がり始めた異変

 最近になって、王都では妙な報告が増え始めていた。


 最初は些細なものだった。


 肌が赤く腫れる。

 痒みが続く。

 水に触れた部分だけが爛れる。


 原因不明の皮膚病。


 治療院へ運ばれる者は日ごとに増えており、軽症で済む者もいれば、酷い者は皮膚がひび割れ、熱を出すこともあるという。


 だが奇妙なことに、皮膚症状を訴える者がいる一方で、発熱や腹痛を訴える者も混在していた。


 感染症とも断定できない。神官たちの浄化でも改善しない者が多かった。


「……共通点は、水辺ですか」


 エリオは資料から顔を上げた。


 向かいに座るルシアンが、小さく頷く。


「今のところは、ね。川沿い、井戸周辺、水運を使う街……報告場所を並べると偏りがある」


 机の上には、各地から届いた報告書が広げられていた。


 黒花の発見場所。

 皮膚病の発生地点。

 井戸水の状態。


 ひとつひとつは小さい。


 だが並べてみると、不気味なほど線が重なっていた。


「黒花との関連を疑ってるんですか」

「疑ってはいる。でも、まだ断定はできないな」


 ルシアンは疲れたように目元を押さえた。


「皮膚への接触なのか、口から入ったものが原因なのか……症状が違いすぎて条件が見えない。ただ、水辺に近い者ほど症状が重い傾向はある」


 エリオは静かに資料をめくった。


 脳裏に浮かぶのは、あの古い文献だった。

 ――留まり花が教会の外へと広がり始める時、それは世界の均衡が再び乱れ始める兆しである。


 まるで、書物の記述をなぞるように現実が動き始めている。


「……嫌な一致ですね」


「ああ」


 ルシアンも同じことを考えていたらしい。


 短く息を吐くと、新たな資料を手元へ引き寄せる。


「僕はもう少し黒花と水質の関連を調べる。接触と経口、どちらが主な感染経路なのかも絞り込みたい」


「俺は現地の情報を集めます。実際に症状を見た者の話も聞きたい」


 役割を確認するように、互いに視線を交わした。

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