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無自覚聖女のモフモフ山籠り生活 〜婚約破棄されたので山にこもったら、なぜか信仰対象になりました〜  作者: なな日々
第1章:お山スローライフの基盤作り編

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第14話 ロッジを作ろうとしたら口出しが多すぎる

 朝から、エリオはやる気だった。

「今日は拠点をちゃんと作るぞ。昨日の結界もあるし、ここをセラを守る鉄壁のロッジにする」

「もうあるよ? 快適なマイホームが」

 私は木々の間に吊るしたハンモックを指さした。

「どこがホームなんだ!? っていうかただの布だろ!」

「失礼な。私のお気に入りなのに」

「そんなんじゃダメ。ちゃんとした雨風凌げる場所が必要なんだ」

 エリオは周囲を見回す。

 地形、木の配置、風の流れ。――騎士見習いとして野営の訓練は受けているのか、手慣れた様子で確認していく。

「ここがいいな」

 少し開けた場所を指した。

 私はそこを見て、即座に首を横に振る。

「そこ、日当たりはいいけど、雨が降ったら水の通り道になるよ。ぬかるんで床が腐っちゃう」

「えっ」

「それに風が抜けすぎる。冬になったら凍死するよ」

「厳しいな、おい……」

 早くも、エリオの親切心が粉砕され始めた。

 エリオは一本の木の前に立った。

「よし、これを使う。太さもちょうどいい」

「それ、まだ若いよ。成長期なんだから切っちゃだめ」

「でも真っ直ぐだし、柱にするには最高だろ」

「だめ」

 食い気味に答えた。

 エリオが振り返る。

「なんでだよ。一本くらい」

「山を歩くなら、山の未来を考えなきゃ。その子は十年後にこのあたりの主役になる子だよ」

「……お前、視点が長期的すぎてついていけないんだけど」

 エリオは少しだけ言葉に詰まった。

 前世の経験からすれば、使える木と守るべき木の区別は絶対だ。

「じゃあ、どれならいいんだよ」

 私は少し歩いて、一本の、お世辞にも立派とは言えない木を指す。

「これ」

「それ、曲がってる上に、なんかカサカサしてないか?」

「中がスカスカになり始めてるから、今のうちに切ってあげたほうがいいの。乾いてるからまきには最高だよ」

 エリオは近づいて確認し、呆れたように笑った。

「よく分かるな。お前、本当に俺の妹か? ……まあ、昔から庭の隅で変な火の起こし方したり、キャンプごっことか言って実験に明け暮れてたけどさ」

「なんとなく。家で試してたことの応用だよ」

「あの『ごっこ遊び』を応用したら、山を鑑定できるようになるのかよ。怖っ!」

 作業は進む。だが、私のダメ出しは止まらない。

「そこ、切りすぎ。断面から病気になる」

「いや、これくらいないと組み合わないだろ!」

「力ずくすぎ。木が泣いてる」

「……はい」

「それ、地面削りすぎ。あとで池になるよ」

「……へえ。お前、家で泥遊びの延長みたいな実験ばっかりしてたのに、意外とちゃんとした理屈があるんだな」

「趣味だよ。極めるとここに行き着くの」

 エリオの手が止まる回数が増えていく。

 家の用事で来ているはずなのに、もはや厳しい師匠に弟子入りした新米の構図だ。

「口出し多いな、セラ」

「気になるんだもん。山を壊すのは一瞬だけど、戻すのは大変なんだよ」

「……それは、否定できないけど」

 エリオがため息をついた、その時。

「あちらは触るな」

 低い声がした。

 振り返ると、ノクスがいつの間にか近くに座り込んでいた。

 指し示された先には、まっすぐで使いやすそうな一本。

「あれ、柱にぴったりなんだけど。だめ?」

「精霊どもが好んで集まる木だ。あれがなくなれば、連中が騒がしくなる」

「……そんなの分かるのかよ」

「騒々しいのは好かぬ。静かに過ごしたいのでな」

 エリオはしばらくその木を見て、がっくりと肩を落とした。

「じゃあ、やめとく。お前と山の主にダメ出しされたら、俺に拒否権なんてないわ。……っていうか、精霊の好みにまで配慮しなきゃいけないのかよ、この山」

「いいじゃない。ノクスがそう言うなら、大事な木なんでしょ」

「お前、本当に楽しそうだな。……ノクスの言うことには、あっさり従うし」

 セラは少しだけ笑った。

 エリオの「普通」と、私の「こだわり」と、ノクスの「ことわり」。

 三つの意見がぶつかり合って、山に賑やかな音が響く。

 夕方。

 骨組みだけだが、なんとなく形は見えた。

「今日はここまでだな。全身筋肉痛になりそうだ」

「お疲れ様、エリオ。明日は屋根の材料を集めようね」

「また明日も来る前提かよ」

「え、来ないの?」

「……来るよ。ほっといたらお前、自分で木に登って落ちそうだもん。父さんにも怒られるしな」

 エリオは少しだけ笑った。

 ノクスは何も言わない。

 でも、その場を離れず、完成しかけた骨組みを満足げに見つめていた。

 壊しすぎず、奪いすぎず。

 山の一部として溶け込みそうなその小さなロッジを、山の主は静かに受け入れたようだった。

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