黒き大災害その1
タカの様な鋭い目を持ち巨大な二本の黒き頭角を生やし、黒い翼を携えた
鎧の様な漆黒の鱗や甲殻を纏いし異界から召喚された大災害大災害の咆哮が世界中に響き渡る。
それを聞いて、すぐさま少しでも離れまいと小鳥は飛び立ち、小動物は駆ける。
今すぐに逃げるためにと家畜は声を上げて暴れ狂う。
「ブボォォォォオオオ!!!」
「きゅ、急にどうしたのじゃ」
「ブボォッ!!ブボォォォ!!」
「落ち着け、何も怖いものはないぞい」
北東にあるとある国で一頭の獣が慌てふためく。
それを見て、畑仕事をしていた老夫婦はすぐに落ち着かせようとする。
「副隊長!!観測班からの緊急連絡です。
ドゥシュムーポにて突如魔力反応と思わしき巨大なエネルギーを観測しました!!」
「巨大なエネルギー?どういう事だ」
「わ、わかりません!!突如大きな魔力反応が消失したかと思ったら突然現れたとの事です」
「……わかった、恐らくは召喚魔術だ!!こちらにも召喚される可能性がある!!
皆の者警戒をよりつよ――――」
「かかかかか観測班からの追加連絡です!!」
「追加連絡だと?」
「はい!!過去のデータと合わせたところ
かつての大災害のものと非常に酷似しているとの事です!!
それを聞いたその場は凍り付いた。
国々が一致団結し、全力を投下してなお多くの兵士の命、4名もの極術師の命を奪われた
その上でようやく送り返せた最悪中の大最悪。
それと酷似しているというだけでその場がパニックになるのは十分な情報だった。
「落ち着け!!!!まだ決まったわけじゃないんだ
民を守る我々がパニックになってどうする!!」
「も、申し訳ありません、副隊長」
「今は警戒をより強める、それだけを考えろ!!」
「わかりました!!」
鶴の一声の元、その場をなんとか収められられたようだが
それでも各自の不安が消えるわけではなかった。
副隊長は憧れの隊長、尊敬する先輩、頼りになる仲間の安否をただ祈っていた。
山奥に住まう巨大な蛇は咆哮を聞いた同時にその方向への警戒を強めた。
自らの内側で怯える我が子を守るために………。
東南にある国では緊急事態を伝えるサイレンが鳴り響いていた。
「……本当か、間違いなのだな!!」
「はい、我らが同志ヴォンカ殿に預けたブーンから届いた映像
そして酷似している反応からして黒き大災害で間違いないと思われます」
「まさか、ドゥシュムーポ如きが背伸びした程度敵ではないと踏んでいたが
まさかここまで巨大な爆弾を持っていたとは……」
「いかがなされますか、総帥」
「仕方あるまい……同志ヴォンカに伝えよ。
デストリュクカノンをそちらに向けて使用すると!!」
「い、いいのですか!?あれは我が国の切り札、使えば全国に知らしめることになりますよ」
「構わぬ、黒き大災害相手に出し惜しみなど不要だ。
辛酸を嘗める事になったのを忘れたのか」
「わ、わかりました!!すぐに準備します!!」
すぐに部屋から出て行った兵士を見て、総帥と言われた男は一息ついた後に
勢いよく椅子へと腰を下ろす。
ただただ、黒き大災害が切り札で倒せることを祈るのみだった。
兵士達が口々に言う話を聞いて獄炎の魔術師の弟はただただ、兄の無事を祈っていた。
「兄者……死なねーよな……」
別の世界にて状況を確認している少女が見ている画面では
「世界脅威……B……A…AA……AAA……S………嘘……」
世界の秩序の崩壊を超えた世界そのものの崩壊の危機を意味する
ランクにただただ少女は絶句していた。
召喚者は最大の目的を達成し、ただただ笑っていた。
「フ、フハハハハハハハハハ、成功だ、成功です!!
これこそが世界を一つに纏めた大災害、これを用いて私は平和を実現してみせる!!」
そう言うと召喚者は空高く跳び立ち、自らの体を変化させる。
まるでアメーバの様な姿になって体を広げ、黒き大災害へ襲い掛かる。
伸ばした体は甲殻や鱗にへばりついて、合成魔術を用いて取り込もうとする。
彼がへばりついてからようやく黒き大災害は気づいたようでそちらへ目を向ける。
「ハハハハハハハ!!!!遅い、遅い、遅い!!
黒き大災害と言われようとも所詮は獣ですか、ハハハハハハハハ!!!」
高笑いする召喚者だが、すぐに違和感に気づいた。
鱗も甲殻も形を一切変えておらず、自らの魔術が一切通っていなかった。
「な、なぜだ!?……何故通じないのですッッ!!!」
通じない事に疑問を抱いているとへばりついている箇所が熱を持ち始めて
体を焼かれて始めた。
「ぐぅぅ……!?」
全身が焼かれるような痛みにすぐさま離れて、体を人型へと戻す。
「ど、どうい――――」
全てを言う前に黒き大災害は手を蒼く光らせながら
召喚者を押しつぶさんとばかりに振り下ろす。
召喚者は召喚魔術の応用ですぐさまその場から離脱し、空ぶった手は
そのまま地へ触れるや否や地を砕き、砕いた周囲を蒼く発光させ、爆発を引き起こす。
爆発が起こるや否や黒き大災害は背びれを蒼く発光させ始めある方向へ
振り向きながら口から蒼き光を熱線として撃ちだす。
「く………ッ!?」
自らの魔術が通じない謎を疑問に持ちながら、現れた召喚者は反応も出来ずに
悲鳴の一つも上げる事無く蒼き熱線に飲み込まれる。
多くの生物を取り込み、多量に抱えた命を一瞬にして蒸発させ彼はこの世から消えた。
目的を達成した熱線は止まることなく地へ着弾すると
地を焼き溶かしながら突き進んで行き、大爆発を引き起こす。
唸り声をあげながら敵を仕留めたのを確認した大災害は次の相手……
近くに感じる反応へと体を向ける。
大きく息を吸い込むと背びれを蒼く発光させていく。
口から同質の光をこぼしながら狙いを定める。
敵をまとめて焼き尽くすがために――――――――――――。




