かつての大災害
「どうしました、アヤカさん。
彼に会いたかったのではないのですか?」
邪悪な笑みを浮かべる外道。
それを見て、シェシュルは委縮してアヤカは口に手を当てている。
凄惨なものをそれなりに見て来てる私だって息が荒くなる程なんだ
二人には、特にアヤカにはつらいに決まっている。
「アヤカ……」
「だ、大丈夫……い、いつから…そんな事に…」
「いつから……ですか、そうですね。日付こそ忘れましたが
狩りに出かけたあたりからですよ」
「…………ッ!!……ふざけるな、返せ!!王子様を……みんなを返せ!!」
アヤカがそう言って剣を外道に向けると剣が先程よりも光り輝く。
あれで斬ることが出来れば勝負がつきそうなほどの熱量を感じた。
それを見ても外道は動揺を見せずに顎に手を当てている。
まだ余裕があるのかしら?
「……………ふむ、返せと言いますか。いいですよ」
そう言うと王子は腹に付いている王子を前方へと吐き捨てた。
吐き捨てられた王子は肩から上は人の形を保っているがそこから下は
人の形を成しておらず肉塊となっていた。
生きているのかピクピクと痙攣している様が生々しくて流石に吐き気を覚えた。
「……………ッ!!??」
「く、屑め………」
「屑?私はアヤカさんに言われた通りの事をしただけですよ」
馬鹿にするかのような顔をする屑外道。
ここまで怒りがこみあげるなんて初めてだ。すぐに矢を持って放とうとするが
それよりも先に剣の光がより一層強くなる。
それに伴って地響きが起こり始め、アヤカを中心に風が吹き始める。
天変地異の前触れかと思う程の状況になり始める。
「ふざけるな……良くも…良くもぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!!」
アヤカの絶叫と共に剣が振り下ろされ、そこから圧倒的熱量が放たれる。
地を砕き、一直線に屑へ向かって突き進んでいく。
「………ハハ…ハハハハハハハハハ!!!!」
高笑いが聞こえたけど高笑いは光によって屑ごと城の半分以上を消し飛ばし
勢いは消える事無く城の向こう側の街をも消し飛ばした。
同規模の破壊ならラオージュ達極術師でも出来るだろうけど
一瞬でこの規模は出来ないはず………。
「はぁ……はぁ……」
「……大丈夫アヤカ」
「う、うん……だ、大丈夫だよ」
息が荒くなってる所を見るとやっぱり消耗が激しいようね。
後はあの偽執事と何故か睨み合っているだけの化け物。
アヤカが消耗したけど、これならば……
すぐに手に取った矢を偽執事に向けて放つが簡単に叩き落される。
反撃してくるかと思ったけどそんな事はなくただただ突っ立ってるのみ。
「どうしたの、何もしないの?
主がやられたんだから敵討ちか逃走をするもんじゃない?」
「いえ、王子……いえ、この際です。司教様と言いましょうか。
司教様は生きてらっしゃいますよ。その証拠に……」
そう言うと共に地面に無数の光が走る。
な、何よこれ……。
「こ、これは魔法陣……?」
って事は術が何か起動しているって事?
この規模のって事は城どころか街……いや、国自体吹っ飛びかねないわよ!?
「二人共逃げるわよ、自爆攻撃に巻き込まれるなんてたまったもんじゃないわ!!」
「は、はい、わかりました。ア、アヤカさんも早く」
「う、うん!!」
三人で走ってこの場を離れる。間に合うかわからないけど行くしかないわ。
「……何故攻めてこぬ」
敵を前にしてもかつての長の声を聞いても
化け物になり果てた狼は威嚇態勢をとるだけだった。
「それはあなたを止めるためですよ、ルーブの民」
「…何?」
「あなたに邪魔をされたら困りますからね」
「………何が目的だ、貴様ら」
「かつての大災害を呼び出す、それが司教様の考えですよ」
「かつての………まさか、あれを再び……!?」
「はい、あれですよ。さて、私も離れないと……流石に巻き込まれて死ぬ
なんて事にはなりたくありませんので」
そう言うと、執事の姿をした男はその場から早急に姿を消した。
その後に狼は三人の後を追うかのようにその場を離れた。
1頭と一人が消えた後、化け物は光に包まれて光へと分解されていった。
狼はあっという間に3人へと追いつくと
「お主ら、我の背中に乗るのじゃ」
「……いいの?」
「お主らの足では逃げ切れぬ、さぁ…早く」
「わかったわ、二人共乗りましょう!!」
狼は3人を乗せて一気に駆けていく。
(我の考えが正しいのならば……こやつらを…特に聖剣を持つ者を
死なすわけにはいかん!!)
少し遡って……二人の雄によって激闘が繰り広げられた場所にて
「……つまり、お前はキコの親父さんってわけか」
「うむ、娘が捕らわれ返してほしくばと言われてな。
鬼が人に捕まるなどと思ったが、声を聞かされては従わざるを得ん。
こっそり部下に捜索を命じてはいたが、まさかお主が助け出してくれていたとは
ありがたい!!!!」
そう言うと鬼の長は土下座のようなポーズで深々と頭を下げた。
「頭を上げてくれ。俺が無力なばかりにこんなボロボロにさせたんだ
頭を下げるのは俺の方だ」
「ボロボロになったのは僕が友達を助けたかったからなのです。
お父さん、けんを許してあげてほしいのです」
「許すも何も、お前が何の理由でこうなったかなど顔をみればわかる。
……良い顔をするようになったな」
そう言うと大きな手で鬼の雄は娘の頭を撫でる。
「あうぅ……くすぐったいのです…」
「………あかい……」
「あう、言わないでほしいのです」
「……キコ、フィナを頼んだぞ……」
そう言ってボロボロの倒れていてもおかしくない体で人間は立ち上がろうとする。
「けん、その体で行くのはダメなのですよ!!死んじゃうのです!!」
だが、鬼の娘によって抑えられる。本来なら簡単に振りほどけるはずだが
それが出来ないほどにボロボロになっていた。
「お主、その体でまだ戦う気なのか?」
「……当然、先に行った3人が……」
全てを言う前に大きな揺れが起こる。
それを感じて、人間はさらに急ごうとするが押さえられる。
「…キコ、離してくれ」
「ダメなのです!!僕の力を振りほどけないのなら行ったダメなのです!!
そらに言いつけるのですよ!!」
「……今、ソラの名前出すんじゃねーよ…」
「そこまで行きたいのならば、少し時間をくれないか?」
「何を…する気だ」
「貴様の傷を癒す」
そう言うと鬼は彼に大きな手をかざす。
すると徐々に人間の傷が治っていく。
「……ありがとう」
「気にするでない、娘を助けてくれた礼だと思ってくれればいい」
人間の傷はあっという間に塞がり、ひしゃげていた腕も元通りになった。
それを見て、手を開けては閉じてを数回繰り返す。
「……よし、治った。ありがとう」
そう言って人間は立ち上がった瞬間地面に光が走る。
攻撃かと思い、その場の多くか身構えるがその光自体に害が無かった。
だが、多くのものがその光からはただならぬ気配を感じた
「長、もうお嬢もいる事ですし離れた方がよろしいのでは?」
「ああ、みんな今すぐにここから離れるぞ」
それを聞いて、人間だけは奥へと仲間たちが向かった方向へ向かおうとしていた。
が、それを止めるものが二人いた。
「お前ら、離してくれ。あいつらがまだいるかもしれないんだ」
「だとしてもダメなのです、行くのなら僕達も行くのです」
「…………だめ…」
彼は少女二人にそう言われ、ため息をつき
「わかったよ、お前らと行くからそんな顔するな」
そう言って二人を抱きかかえ、鬼達に着いて行った。
2組が範囲外に出た後……
魔法陣を起動し、そこに刻まれた術を使用する者の姿があった。
「極術師並の魔力、世界の力そのものの光の力、そしてかのモノの姿を模した獣
それらがかけ合わされた今こそ再び現れよ!!異界より現れた大災害よ!!!」
異界接続、禁忌と言われた大魔術の中の大魔術が起動する。
圧倒的なまでのエネルギーが周囲に放たれドゥシュムーポは吹き飛ばされる。
城も街も街壁も関所も吹き飛び、瓦礫となる。
煙や蒸気が立ち込める中にかつて偶然現れた黒き大災害が再び世界に降り立つ。
それを街の外で待っていた三人は現れた大災害を見て
「……これは…予想しておらんぞ……」
「確かに破壊して突入を伝えろって言ったけど、こいつはねえだろ……」
「……流石にこれは予想外だ」
大きな狼に乗った3人のうち、二人と狼は
「やはり……黒き大災害であったか……」
「ちょっ…………嘘でしょ?」
「ゆ、夢じゃないですよね………」
巨大な鬼の集団は
「長……あいつはあの………」
「まさか、これを再び呼び覚ますために……我らとしたことがッッ!!!!」
「あれがお父さんが言っていた黒き大災害なのですか……」
そして、この世界のものではない二人は離れた位置で口をそろえた。
「ドラゴンだと……」
「ドラゴンだ………」
その言葉を最後に黒き大災害……ドラゴンは巨大な翼を羽ばたかせ煙を吹き飛ばし
ギギャォォォォォオオオオオオオオォォン
雄たけびを上げた。




