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目的を前にしたからこそ動く

全身ボロボロだが、息は絶え絶えに近いが体は動く。

動くからこそ手刀を振るい、拳を振り下ろし、足刀を繰り出して

目の前のキメラ共を蹴散らしていく。


[ケンさん、体貫かれたりでもしたら終わりだと思ってくださいね]


んな事言われなくてもわかってるっての。

真正面から跳びかかって来た四足歩行のキメラを蹴り上げる。


「こいつらを素手でこうもあっさりと………。

という事は司教様がおっしゃっていたのはこいつか……なら…」


そう言う王様の手が光るのが見えた。

見えたのなら問題はない、即座に横に動いて躱す。

街を襲ったデカいやつが爪を振り下ろすが爪が当たる前に掌底で吹き飛ばす。

地があるのならこいつらなんて敵じゃあない。


「こ、こうなったら!!防衛魔術起動!!」


王様がそう言った瞬間、目に見えない何かにぶつかる。

ぐ………こ、これは……魔力壁とかいうやつか……。

動きが止まった事で周りのキメラ達が束になって襲い掛かってくるが

後ろ回し蹴りと裏拳の二連撃で吹き飛ばす。

さて、邪魔者はいなくなった。魔力壁ならば対処するすべはある。

掌底で衝撃を貫通させるのみ、そう思い構えたところで王様はあいつに近寄っていった。

こ、こいつ……ッ!!


[相手さんも頭回りますね、油断してくれてその場にいてくれたら楽だったんですけど]


「ふっ、やはりそうか。お前はおおよそこいつを…フィナを助けに来たんだろう。

ならば、こいつを傷つけるような事は出来まい」


そう言いながら王様はあいつ……フィナの髪を掴んで顔を無理やり上げる。

………あの野郎…!!


「だが、油断は出来ん。突き破るすべを持っているかもしれないからな。

………予定より速いが司教様なら問題あるまい」


そう言うとフィナに繋がった装置が光が付き始めた。

俺は魔術にはからっきしだが、フィナを利用してあの装置が動いているのは明白だ。


[あの装置、あの子から魔力を吸い上げてます]


やっぱり利用する系か……クソったれ……!!

ダメもとで魔力壁に拳を叩きつけるがビクともしない。

やはり、衝撃でないと対処出来そうにない。

いや……あれなら破壊できるかもしれないがダメだ

向こうにいるフィナも一緒に吹き飛んでしまう。

このまま指をくわえて待つ事しか出来ないのか?


「フハハハハハハ万事休すのようだな、良かった良かった。

さて、安心したところで用を催してきたわ。おい」


そういうと王様はフィナの髪を引っ張りながら自分の下腹部へ顔を近づける。

それによってフィナは自分からあいつの服へと手を伸ばし始める。


[……うわっ…]


「……てめえッッ!!」

「ハハハハハハハハ良い顔だ。何、安心せい。用が済めば返してやる。

その時にお前もやって貰えば良いだろう。何本も銜えただけあってこいつの

口は格別だぞ」


久しぶり……いや、恐らくは初めて、そう思う程に頭に血が上る。

冷静な判断なんて出来ないほどに怒という感情で心が埋め尽くされる。

意味がないとわかっているのに拳を魔力壁に叩き付ける。


[ちょっとケンさん、無理です。魔力を纏ってない以上は破壊できませんよ]


アンジュの静止がかかるが、拳が砕け始めて痛みが走るが

破壊できるかもしれないという希望にかけて殴り続ける。


「フィナやめろ!!!!そんな事するんじゃねえ!!」

「無駄だ、そうしなければならないと心と体に刻み込まれている。

お前がこいつとどう過ごしてきたかは知らんが無駄な叫びだ」


クソったれが!!クソったれが!!これほど自分の無力さを呪った事はない。

魔術が何故使えない、何故こんな壁如き突破出来ないんだ!!

残った拳がついに砕け、激痛が走る。

こんなに殴ったのに……なんで……ッッ!!


ドボゴォォォン!!


「今度は何事だ!?」


後ろの俺が突き破って来た壁が破壊され、土煙が立ち込める。

そして、土煙から出てきたのは……


「けん、大丈夫なのですか!!」

「……キコ……」

「なっ……あいつは鬼の………!?」


あいつがキコを見て動揺している……って事はキコなら…


「あ、見つけたのです!!ケンあの子ですよ!!」

「わかってる、キコ!!この壁を破壊出来るか!!」

「出来るのです、すぐにでも叩き割ってやるのです」


出来るのか、流石は鬼だ。

油断したな、あのクソ生ごみ野郎……ッ!!


「ま、まずい……さらに予定の時間より早まるが……!!」


ごみ屑野郎が装置に何かしたのか装置の光が強くなり始める。

そして、それに伴いフィナが少し辛そうな顔をし始めた。


[あの装置……吸い上げた魔力をどこかに送ってるみたいですけど……どこに?]


「すまん、急いでくれ。キコ」

「了解なのです!!」


キコの拳が見えない壁に突き刺さる。

一発じゃ破壊できなかったみたいだが、キコは連続で魔力壁を殴り始める。


「まずいまずい……こうなったら、最終防衛魔術起動!!」


カス野郎がそう言うと装置から光が強まったと思った瞬間

キコの腹部が光に貫かれる。


「……キコ!!」

「……ッ…大丈夫なのです。僕は鬼なのですよ。こんなのへっちゃらなのです」


腹に風穴があいてもキコは構わず魔力壁を破壊するために拳を振るうが

そのたびに光がキコを貫く。

キコを守ってやりたい、助けてやりたいがそうするとフィナを助けられない……。

崖を破壊出来ても、迫りくる溶岩の波を吹き飛ばせても、鬼と殴り合えても

こんな女の子一人も守れも助け出す事も出来ないのか………!!


[まずいです、破壊するよりもキコさんが倒れてしまいますよ]


「………ッ!!…無理するな、キコ……。こうなったら…」

「けん、僕は大丈夫なのです。だからあの隣の男は任せたのですよ」


ニコリと笑いながらキコはそう言うと右腕を振り上げる。

振り上げた右腕は急に膨らみ、巨大化する。

これは……さっきの鬼がやってたのとそっくりだ。


「これでぶっ壊すのです!!なんちゃって山壊岩砕撃!!」

「なっ……」


巨大化した右腕が振り下ろされるとまるでガラスが割れたかのような音がした。


[魔力壁破壊、消滅しました]


破壊出来たか……なら、俺がやる事は……!!

即座に駆け、一気にごみ屑カス野郎に向かって行く。


「まままままままずい、こうなったらフルパワーだ!!間に……」


言葉を言い切る前に射程圏内に入ったごみ屑カス野郎を蹴り上げる。

宙に浮いたところを連続で蹴りを放って最高のごみに撃ち込む。

肉を、内臓を、骨を破壊する感覚が伝わってくる。

ほぼ肉塊同然まで蹴りを打ち込んだ後に

最後は自分も跳び上がってドロップキックで装置に叩きつける。

装置にヒビが走って行き、煙を上げ始める。


[こ、これはまずいです。その子から吸い取った魔力が]


それはまずい、すぐにフィナを拘束しているものを踏み壊す。


「ほれ、さっさと帰るぞ……」

「……………ん…」

「もうあんな事しなくてもいいようにしてやるから、な」


動く片腕で抱きかかえてすぐに離れる。

両腕はともかくとしてまだ体は動くようだ。

ボロボロになって膝をついているキコへ近づく。


「キコ、走れるか?」

「ちょ、ちょっと厳しいのです……」

「なら、捕まれるか」

「それなら出来るのですよ」


それを聞いてすぐにしゃがみ、キコが背中に乗ったのを確認して

すぐにキコが壊して作った道を進んでいく。

鬼達がいたが……キコがいるし多分大丈夫だろう。



















「…カ……ハ……。ご、合成……魔術で体を補強しているというのに……

これほ…どまで破壊されるとは………。

そして、足りない……後僅か足りない……。

これでは………かつての…ガハッ……を呼び…出すための……

……接続のための…エネルギーが足りないではないか………。

これ………では助からない……のならッ!!!!」


ボロボロのほとんど肉塊同然までに破壊された男は残る魔力全てを

壊れかけた装置に流し込み、息絶えた。

それによって足りない分の魔力が送られていった。

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