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下水道その2


「ひぃッ!?!?」

「いちいち声上げるな、お前の声でこっちも驚いちまう」

「で、でもぉ……」


さっきから害虫を見ては声を上げるアヤカが泣きそうな声で弱音を吐く。

こりゃあ相当苦手なんだろうなぁ。

だが、苦手であってもここは進んで貰わないと置いていくことになる。


「不安がって周りを見るから見つけちゃうのよ」

「で、でも見てないと……」

「大丈夫、こんなに人がいるのよ。

一人ぐらい見てなくてもなんとかなるわ。そうでしょ、ケン」

「そうだな、なんとかなるように気を配ってるから

お前は悲鳴を上げないように心がけてくれ」

「うん……わかった」


こう言った以上はなんとかなるように周りに目を向けていく。

が、そのせいで色んな気分の悪くなる形の虫が見える。

俺だって耐性が高いわけじゃないから群れを見るとどうしても背筋に寒気が走る。

臭いもきついし、さっさと抜けたいものだが……


「う……どんどん腐った肉の臭いが強くなるのです」

「強くなっているだと?」


強くなってるって事は臭いの発生源が近くにあるって事だ。

何かの生物が行きついた果てに息絶えたか…

あるいはあのキメラの実験体が捨ててあるとか……

そう思って進んでいくと明かりがあるものを照らす。

こいつは……なんだ?


「こ、これから腐った肉の臭いがするのですぅ」


腐った肉だと……?

もうピンク色のヘドロにしか見えないぞ。

それほど腐敗が進んでるって事か。

調べてみたいが流石にこれを素手で触りたくないし

つつくための棒も………


「な、なんで僕の杖をじっと見るんですか!?

ぜ、絶対だめですからね!!」

「見ただけだって、やるわけないだろ」


一瞬使えたら…と思ったのは内緒にしておこう。


「仕方ないわね、これなら使ってもいいわよ」

「いいのか?」

「どうせ使い捨てだし構わないわ」


そう言ってアシェルから受け取った矢でつついていく。

ドロドロしていて持ち上げようとしても泥のように形を崩して落ちていく。

かなり腐ってやが……

つついていると硬いものに当たった、一番最初は地面かと思ったが形がある

って事は骨か?

そう思ってかき分けていくと違うものが出てきた。

それは見覚えのある触角の一部だった。

色も同じだし恐らくそうだろう。

それを知った上で全体を見て見れば肉ヘドロの大きさが

小型キメラとほぼ同等だという事に気づいた。

そんなのがこんなところに転がってる事は……。


「何かわかった?」

「あぁ、これより先はより気を付けて進んだ方が良いって事がわかった」


下水道内が実験場になっているって創作で見た事あるがが

本当に存在するとは思ってなかった。

となるとこの先にもこのような死体が転がってるかもな。

肉ヘドロをまたいで進もうとしたが3名飛び越えられなかったので

そこだけ俺が担いだ。

さっきよりも進行速度を緩めて恐る恐る進んでいく。


「待って、ケン」

「どうした?」

「さっきまで聞こえてない音が聞こえたわ」

「………どんな音だ?」

「金属音と悲鳴のような怯えるような声よ」


嫌なものが頭をよぎる。

せめて助かるレベルの状態であってほしいが……。


「二人共、一応治療の準備をしておいてくれ」

「……わかったわ」

「わ、わかりました」


準備をし、気を張り巡らしながら進んでいく。

進んでいくとその音が俺達にも聞こえてきた。


「た、確かに聞こえる……じゃ、じゃあ誰か…!!」

「先に言っておくが期待は持ちすぎるなよ」

「な、なんで……?」

「別にいくら期待してもいいんだ。

ただ、その期待が裏切られた時にお前はそれに耐えられるのか?

思っていた者じゃなかった時、そうだとしても助からない時に

お前はその事を受け止めきれるのか?」

「そ、それは……」

「無理だってならだったらいいなぁ…程度にしておけ。

そうしておけば裏切られた時、多少は楽になるから、な」

「う……ん」


そう言うとまた顔を下に向けるアヤカ。

励ましてやりたいが、ここはやめておいた方が良いだろう。

期待通りに物事は早々進まないのだから……。

進んでいくと更に肉ヘドロが転がっており

更に音が大きくなっていく。


「近くなってきたな……」

「そう、ね。すぐそばよ」


そう言うとアシェルが矢を手に取って臨戦態勢に入る。

3人と比べるとやっぱりこいつは場慣れしてるな。

鬼と研究者と勇者様と言っても3人は子供だし、当然か。

進んだところでヴォンカから貰った腕輪が光る。

毒ガスか……!!

すぐに腕で止まるように指示する。


「う、腕輪が光ってますね……って事は」

「あぁ、毒ガスが漂ってるみたいだ」


ここは後退したいところだが来た道は一本道だった。

ここしか道はない以上なんとかして進むしかない。

一番手っ取り早いのは吹っ飛ばすところだが俺は風を起こすなんて事は出来ない。

吹き飛ばす事自体は出来るがそんな事をした日には崩れて生き埋めだろう。


「ぼ、僕が排除します」


そう言うとシェシュルが魔法陣を展開し始める。

やっぱり魔術か、いいよな魔術。

利便性が高くて色々な事が出来るところを見ると本当に羨ましい。

魔法陣から風が吹き荒れ、前方を突き進んでいく。

腕輪を見ると光が消えていた。毒ガスは取り除かれたみたいだ。


「ありがとな、シェシュル」

「い、いえ、これぐらい気にしないでください」

「ッ!?ケンッ!!」


音が聞こえたと同時にアシェルが声を上げる。

俺も音を聞いてすぐさま前を見ると暗闇から何かが飛び掛かって来た。

その姿は犬の顔をした何か……キメラか!!

すぐさま手刀で斬り落とすのではなくチョップのように叩きつける。

骨が折れる感覚が手に伝わるが、それと同時に手に熱が伝わる。


「……ッ!?!?」


手に目を向けると触れた部分から湯気のような何かが上がっていた。

これは溶けているのか?

すぐに叩き落としたものを見るとそれは確かにキメラなのだが

体が溶けていてまるでゾンビのようだ。

叩き落とされた衝撃からか起き上がろうとするキメラの体が崩れていく。


「う……こ、これは…」

「こ、こんな姿になっても動くなんて……」

「あぁ、生物としてイカレてやがる」


明らかに普通じゃない、これはやはり人造生物に間違いないだろう。

生命を冒涜しやがって反吐が出る。


「って、手が、手が……!?」

「ん………?」


アヤカの声を聞いて目を向けるとまだ煙を上げていた。

やけに痛いと思っていたが………。


「ち、治療するので手を出してください」

「あぁ、悪いな」

「わ、悪いじゃないですよ、何で言わなかったんですか!!」

「すまん、そっちに気が行っていてな…」

「そんな事してるとまたそらに怒られるのですよ」

「そ、そうですよ。ソラさんに言いつけるよ」

「う……悪かった、気いつけるよ」


お前らソラの名を出すなよ、ずるいぞ……。


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