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怒り狂う剣

傷口が開かないように固定したうえで更に腕で押さえながら

利用されていただけの少女の元へ向かう。

油断して後ろ向いている隙に動かれてバッサリ斬られても困るからな。

彼女へ目を向けると剣を杖としてよろめきながらも立ち上がっていた。


「……う…事あるはずが……」


何かぶつぶつ言っているようだがあれじゃあ戦えないだろう。

放っておいてもいいが騙されていた事への同情はある、

軽い応急治療ぐらいはしてやるか。

そう思って彼女へ近づいていくとこちらへ睨みを利かした顔で振り向いてくる。

まだやる気か……?

など思っていると彼女の俺が破壊した肩、貫かれた足が光に包まれる。

何をしているのか…箇所が箇所なので恐らくは回復だろう。

そして、回復や否や少女はこちらに剣を振り上げて突っ込んできた。

大雑把で単純なこんなか攻撃よけられないわけもなく簡単に回避する。


「ほう、まだやるってのか」

「当然!!みんなの、仇なんだからッ」

「……実にいいピエロだな」

「………ピエロ……?」


そう言うと彼女はピタリと動きを止める。


「ピエロだろ、騙されてあいつらにいい感じに利用されたんだから」

「騙された…利用………そ、そんな事………」

「されたんだよ、現にお前の足を貫いたのはあの王子だ」

「……そんなわけがない…私を騙すなんてそんな事するはずがない!!」


そう言うと少女から衝撃波の様な光が発せられる。

吹き飛ばされるなんて事は無かったが、それでも突然の攻撃に押されてふらつく。


「何ッ!?」

「知らない癖に…何も知らない癖に適当な事を言うなぁぁあああ!」


咆哮の様な絶叫と共に聖剣が振り下ろされる。

危険性を感じたのでいつもよりも離れるように回避すると

空ぶった聖剣は地面に当たるや否や光が地を砕き、焼き溶かす。

こいつを紙一重で避けるだなんて出来そうにないな。


「騙すなんてするがない!!

あの約束が嘘なわけが、あの人達が嘘なんて言うはずがないんだから!!」


今まで見た事が無いようなレベルの光が聖剣から発せられる。

絶対にヤバい、間違いなくヤバい。

即座に彼女の前方から離れる。

離れたと同時に後方から聞いた事もない爆発音のような何かが聞こえた。

すぐに後方へ向き直ると地面が焼け溶けるどころか一部が蒸発して消えていた。

おいおい、土や岩の沸点って何度だよ……。

熱気が当たりに充満し、地面の水分が蒸発した事で湯気が当たりに立ち込める。

湯気で視界が悪化するが、影と光がこちらへ向かって来ているのがわかった。

その場から即座に駆け出して離れると再び、先ほどまでいた場所が蒸発した。

このままじゃあじり貧だ。

今度は湯気の中へ突っ込む、熱気が当たりに充満しているが

あいつがどこにいるかは光でわかった。

振り下ろされる前に腕を掴んで聖剣を止める。


「そんな危なかっしいものを怒り狂って振り回してんじゃねえよ」

「うるさい!!みんなを殺しておいて、偉そうな事を言うなぁ!!」


そう言うと少女は俺に向かって蹴りを放ってきた。

本来なら避けられるし、仮に当たってもどうでもないような蹴りだが

さきほど怪我した脇腹付近に当たる。流石にそいつはちと効く。

その痛みに一瞬怯んだがために掴んでいた腕を振りほどかれた。


「…ッ!!」

「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇ!!」


振りほどいてすぐに剣は振り下ろされるが

剣が振り下ろされる前に足刀蹴りで少女を仰け反らせる。


「うッ……ゲホッ…」

「お前も薄々思ってんだろ、騙されたんじゃないかってな」

「…ゲホッ…うるさい、王様はみんなのためにって言ってくれたんだ。

王子様もそうだと言ってたんだ。こんな私に頭を下げてくれた。

あの期待が、約束が、思いがあれがきっと嘘なわけがないはずなんだから」


怒りに任せて剣を振り上げる少女。

動きがさっきと一緒なら対処は容易だ。

剣が振り下ろされるよりも先に蹴りで腕を迎撃する。

蹴りによって剣は彼女から離れあらぬ方向へ飛んでいき

少女は蹴られた腕を押さえて、呻く。


「うぅ…ぐぅ……ッッ!!」

「さっきからはずだのきっとだの、何で断言しない」

「…………ッ!!」

「あいつらを疑っているからだろ、だから断言でき…」

「ち、違う!!違う!!違う!!違う!!違う!!違う!!違う!!違う!!違う!!違う!!

違う!!違う!!違う!!違う!!違う!!違う!!違う!!違う!!違う!!違う!!違う!!

王様も王子様も疑ってなんかない!!みんなの優しさを疑ってなんかない

疑ってないんだから!!」

[…ッ!?後ろから高速で何かが飛んできます!!]


後ろからだと!?アンジュからの声を聞いて即座にしゃがむと何かが頭の上を

飛んでいった。そして、受け取る音が聞こえる。

まさか……そう思って少女を見ると剣を握っていた。

飛んできたのは聖剣か、良くキャッチ出来たな。

そして手にした剣を握って少女は色んな感情が混ざった顔でこちらを睨みつける。


「私は……私は!!私の信じるもののために、仇を取るためにお前を倒す!!」


そう言って光を聖剣を振り上げる少女。

哀れな奴だ、ただただ哀れな奴だ。

だからと言って、ただただやられるだけだなんて死んでもやらないがな。

来るなら、いつも通り叩き潰すだけだ。

剣を振り下ろされる前に上段足刀蹴りで迎撃して止める。

止まった隙にその上がった足で踏み込んで、左腕で少女の胸部に掌底をぶち込む。

踏み込みによる地面の割れる音と少女の骨を砕く音が響いた後に少女は吹っ飛ぶ。

吹っ飛んだ少女へ追撃を入れるべく追いかける。


「ゲッ……ガッ…ァァ…」


打ち込まれた胸を押さえて悶絶する少女に震脚を喰らわせるべく足を上げる。

が、その足は光の壁に防がれる。

ちっ……!!

そして、少女の胸部が光り始める、回復か。

治る前に仕留めたいが、それを光の壁が阻害する。クソったれ……!!


「ゲホッ…く、くそおおおぉぉぉぉぉぉおおお!!」


治り次第すぐに剣を振り回す少女。

完全に聖剣に体を持ってかれているので当たりはしないが聖剣が光を纏っているのが

厄介だ、白刃取りして受け止める事も出来ないし、リーチまで伸びているからな。

一旦距離を取り、彼女を置き上がるのをあえて待つ。

起き上がったところで即座に踏み込んで後ろ回し蹴りで頭蓋を砕きに行くが

再び光の壁で防がれる。これ、本当に厄介だな。

即座に離れようとするがそれよりも先に少女が動く。

光を纏った剣で横払いをする。それよりも早く飛び退くが腹部が薄皮一枚焼き切られる。

く……これが続くと、相手が回復できなくなるのが先かこっちが力尽きるのが先かだ。

ならば、一撃で終わらせるだけだ。


「くっ……ちょこまかと…」

「小細工ばっかり使ってる奴に言われたくねえんだよ」


光の壁が切れるや否や突っ込む。

それに合わせたのかたまたまなのか知らないが振り下ろされる剣。

想定外だが、行動に一切の支障はない。

即座に左に横っ飛びをし、剣を避けて後方へ回り込む。

光の壁を展開される前に一撃で仕留めるべく、拳を握る。

踏み込みで地を砕きながら、拳で心臓を潰すべく放つが光の壁が拳を防ぐ。

気づいているのかそれとも無意識に展開しているのか

どちらにしても厄介な事に変わりはない。

光の壁が拳を防いだと同時に少女は回転し、一気にこちらへ聖剣を横払いする。

それを回避するために跳び上がって回避して今度は頭頂部を狙う。

ならばてっぺんから打ち砕いてやる。

かかと落としで頭頂部を狙うが、それも光の壁で防がれる。

これも防ぐか、この野郎……!!

防がれたため、ただただ落下する所に再度横払いが飛んでくる。

癪だが、ここは一旦離れるか。

横払いが来るよりも先に飛び退くが……


「あたれぇぇぇえええええ!!」


聖剣が纏う光が巨大になり範囲が増えて…脇腹を焼き裂かれる。

致命的になるまでは届かなかったとはいえ痛みが走らないわけではない。

痛みのせいで上手く着地出来ずに地面を転がる。


「い……ッッ!!」

「貰ったぁああああ!!みんなの仇だぁ!!」


転がる俺に向かって光り輝く聖剣を振り上げ、少女が突っ込んでくる。

転がって避けようにも、絶対にあの時の様な爆発が起こる。

あの範囲だ、転がって避けられそうにない。ないならば!!

片腕で跳躍し、その勢いで回転しながらかかと落としを喰らわし

その速度を維持したまま、後方へと飛び退く。


「いっ……!!」


着地したが瞬間すぐさま、振り向いて突っ込む。

この怯んでいる隙に仕留める。

光の壁が来る可能性があるが、そんなもんいつまでも気にしてられるか。

してくるのを考えて躊躇するならしてきても良いように動けばいいだけの事。

射程範囲に入ったが瞬間に踏み込んで、拳を握り締めて拳を放つ。


「く……ッぉぉぉぉおおおお!!」


少女もこちらを振り向きながら剣を振る。

剣と拳どちらが先に相手を仕留めるか相手へと向かって行き、両方とも

相手へと届いた。

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