単身突撃
部屋に向かうたびに大きな声が聞こえた。
何か言い合ってるようだが、気にせずに部屋へと入っていく。
「本当に期待しても良いのですか?」
「なんだ、爺さん。我が祖国の技術を信用していないというのか?」
「いや、フェールユジーヌの技術を疑いはせん。
だが、私が気にしているのは尾行している相手だ。
あんな化け物を尾行など気づかれて終わりではないのかね?」
「ならば、結果を見るがよい」
あの炎野郎…ヴォンカがそういうと部屋の壁にあるものが映った。
空の映像だ、という事はあれはプロジェクターなのか。
まさか異世界で映像を見る日が来るとは……
フェールユジーヌとか言う国の技術は凄まじいな。
「こ、これは……?」
「祖国の新技術、映写だ。先程飛ばしたブーンから届いたものを映している。
この映像からするに怪物共は西へ向かっているが…」
「西という事は……ドゥシュムーポ方面か!!
もしや、ドゥシュムーポからの宣戦布告なのか?」
「大臣、落ち着くんだ。まだ、決まったわけではない。これで下手に
攻め込めばそれこそ戦争の始まりだ」
「で、小童は何の用だ?」
ヴォンカがこちらをじろりと睨みつけるかのような目で見てくる。
が、そんな目は気にしない。
そう、映像が見れるならあいつが映っている可能性がある。
「おい、ヴォンカ。その映像は拡大とかは出来ないのか!!」
「拡大か…残念ながらまだこいつには搭載出来とらんがどうかしたか?」
ヴォンカの声を無視して映像を凝視する。
あいつは映っていないのか、無事さえ確認出来れば……。
「むぅ、あの子は映ってないように見えるのです」
キコのその言葉で場が凍り付く。
「ケン君、映っていないという事は誰か連れていかれたのかい?」
「………あぁ、入院してた小さな子が連れてかれたんだ。俺がいながらな」
ギリィ…という音が鳴るほど歯噛みする。
あんなすぐそばにいたってのに……クソったれが。
「それならば、怪物の到着地点を確認次第すぐに部隊を編成して救出に
向かわなければならないな」
「すまない、俺が守れなかったばかりにお前らにも迷惑かける事になって」
「気にしないでくれ、目的が増えただけだよ」
そう言って、王子が俺の方にポンと手を置く。
この優しさがとてもありがたい。
「しかし、攫うか……」
「どうかしたのか?」
「いや、なんでもないよ。無暗な事を言って混乱を招いてはいけないからね」
やっぱり攫うってところが引っ掛かるようだ。
なんであいつだけが攫われたんだろうか。
何かあいつには他とは違う特別な何かがあるんだろうか……。
「む……」
「ヴォンカ、どうしたんだい」
「見ろ、怪物どもが地上へ降りていく。目的地に着いたようだ」
映像を見ると次々に地上へと降り立っていくキメラ達が見えた。
そして、その降りた場所に見覚えがあった。
それはドゥシュムーポの国の前。
そして、どうどうとキメラ達が街の門から入っていく様子だった。
「……嘘だと信じたかったが…」
「だが、証拠が得られたのなら仕方あるまい。それでアーシェよ、どうする?」
「決まっているさ、すぐに準備してドゥシュムーポへ向かう。
大臣、異論はあるかな?」
「ありません。では我々はどのような準備をすればよろしいですか?」
「転移魔術の術式、そしてそれを運用する上で必要な魔燃石を用意して欲しい」
「わかりました」
そういうと大臣はそそくさと部屋から出て行った。
それにしてもドゥシュムーポか……俺は自分のケツを他人に拭かせる気はない。
なら、やるべきは一つだ。そう思ってケツを拭くべく部屋から出る。
「ケン君」
そこを王子に呼び止められる。
本来なら振り向いて面と向かって話すべきだろうが向かなかった。
「……誰にだって失敗はある。
反省するのは大事だけど取り返そうとして無茶をするのはいけないよ」
「そんな事わかってるさ。だけど、忠告ありがとう」
そう言って、部屋を出る。
チンタラなどやってれない、待ってなどいられない。
なら、俺一人で行ってあいつを取り返す。
キコの事が頭をよぎるがあの王子の事だ、わかってくれているだろう。
任せても何ら問題ない。
そう思って、開いている窓から飛び出して近くの屋根に飛び乗って
屋根伝に一気に跳んで駆けていく。
……ザ…ザザッ!!頭にノイズ音が流れて来たって事は……。
[ケンさん、一人で行く気ですか?]
「当たり前だ、不始末を自分以外に解決させる気はない」
[……あなたがそのような選択を選ぶのなら私は全力でサポートしますね]
「そうか……」
素っ気なく返事をするが、実際こいつのサポートはありがたい。
実際、こいつがいなかったらラオージュに勝てたのかも
ヴォンカ相手にあそこまでやれたかもわからないからな。
[ありがたいんなら、口に出してくださいよ。男のツンデレは嫌われますよ?」
そういや、心の声まで読んでくるんだった……うざったい。
この速度のまま、跳び上がって門も上から通る。ちんたら話す気など無い。
一気に跳んで着地次第走り出す。道はわかっている、一人でも行けるさ。
普段は馬車を引いて乗ってる奴らへの事もあって自重していたが
今回はそのようなものは一切ない。全速力で一気に駆けていく。
あっという間にあの時の空から攻撃で出来たクレーター付近まで来る。
[前方にエネルギー反応があります。これは……!!]
アンジュのこの声が聞こえたと同時に前方から光が一直線に飛んでくる。
それを横に跳んで躱す。
この光は、まさか……。
「……来たわね、王子様の言う通りだったわ」
前にいたのはあの勇者らしい少女。
「どけ、俺はお前に用はない」
「あなたに用が無くとも私には用がある、みんなの仇だ!!」
そういうと再び彼女の持っている剣に光が宿る。
光を見てすぐに彼女に急加速して接近し、頭をかち割るべく回し蹴りを繰り出す。
大きな打撃音と共に勇者のような少女は吹っ飛んでいく。
感覚からして防御されたが……。
「い……っ!!」
起き上がろうとしているうちに跳び蹴りで頭蓋を砕きに行く。
が、転がって回避される。ちっ……ちょこまかと……!!
転がった後に少女は剣で横払いをしてくるがそれは飛び退いて躱す。
この攻撃は中々いい反撃だが……!!
剣を振り払った後に踏み込んで、蹴り飛ばす。
飛んでいった少女を追いかけて頭蓋を踏み砕くべく足を振り下ろす。
が、彼女の目の前に光が現れて俺の足を受け止める。
「なっ……!?」
「隙……ありだ!!」
彼女は聖剣を瞬時に光り輝かせる。
光で視界が白く包まれる。く……またか!!
彼女が転がって、踏み降ろしの範囲外に逃げたのが音で分かった。
「はぁぁぁあああッ!!」
彼女が掛け声と共に突っ込んできてるのがわかった。
だが、射程範囲はわかっているんだ。
飛び退いて攻撃を躱しながら目の回復を待つ。
「クソぉぉぉ!!当たれぇ!!」
避けるせいでイラついたのか攻撃が雑になってきているのがわかった。
こんなの目を瞑っても躱せるっての……。
視界が回復したところで剣を振り下ろそうとするのが見えた。
ならば……!!
「はぁぁぁぁああああ!!」
「ふん、声出せば当たると思ってんじゃねーよ」
俺の頭蓋を切り砕くために降ろされた剣を両手で受け止める。
真剣白刃取りってやつだ。




