救助と治療
キコに支えになって貰いながら急いで王子がいるであろう建物へ向かう。
そちらへ向かえば向かう程、人の数が増えていく。
怪我をした人とそれを治療する騎士などが目立つな……。
「ケンさん、ご無事で……はないようですね」
「油断してな、この様だ…」
「ちょうど、そちらに副隊長と共に王女様がいらっしゃいます。
そちらで治してもらってきてはどうですか?」
そういや、ソラは回復魔術のスペシャリストとか言う話だったな。
だから、治療のために出ているのか……。
なら、そっちで治してもらった方が良いな…。
「わかった、ありがとう」
「では、私は市民の救助に戻らせて貰います」
「あぁ、頑張れよ」
そう言って騎士と別れた後にソラがいるという場所に向かう。
言われた方向に行くとソラがいそうな人の塊があった。
「あれなのですか?」
「あれ、だろうな……」
確認し、向かおうとしたところで足から力が抜けて、膝から崩れる。
眩暈がして視界がグワングワンと揺れる。
「けん、大丈夫なのですか?」
「ん、あぁ…すまん。視界が揺れて……な」
揺れる視界、血を失いすぎたか?
それとも、止血出来てなかったか?
どちらにしても動かなければ…そう思って立とうとしても立てない。
「……く……」
「………けん、僕が担いでいくのですよ」
え………?
キコが言っている意味が理解出来ない。担ぐ?
言っている意味を理解するべく思考を張り巡らせているうちに
キコに担がれて、人混みに突っ込んで行く。
「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉなのです!!」
一気に人混みをかき分けて、中心のソラ達がいる場所に向かって行く。
まずい、頭までぐわんぐわんして気分悪くなってきた……。
「そらー、けんを治してほしいのですよ」
「待て、貴様。順番を守れ……ってケンか」
「?………あぁ、シャルか。すまん、血を失いすぎた。頭が回る」
一応、前にシャルがいるのだけはわかったが頭が回る。
やばい、担がれてるせいか浮遊感があるからかより頭が回る。
「けんを治してほしいのですよ」
「順番と言うものがあるが、それは王女様の治療だけだ。
私が止血する程度なら問題ないだろう」
そう言うと、俺の怪我をした足へ手を当てるシャル。
よくわからないけど…治して……くれるのか…?
少し立つとシャルは傷口から手を放す。
「これでこれ以上は血が流れないが、私にはここまでだ。
後は王女様が来るまで耐えてくれ」
「あ、あぁ……ありがとな」
治療して貰ったようだ。
まずい、いよいよもって目の前がぼやけてきた。
「けん、少しは良くなりましたか?」
「ん……あぁ、多分……な」
実を言うと特に良くはなっていない。
目が回る、思考が狂う。
手を顔に当てて、少しでも回復するのを待つが、一向に良くならない。
「お待たせしました、ケンさん。すぐに治療しますね」
声が聞こえる、ソラが俺の治療を始めるようだ。
順番をかっ飛ばしてないのか心配だが、視界がぼやけて回って
そんな事を確認できる状態じゃない。
「……弱いですが、毒が回ってますね。まずはそれの解毒から始めます」
毒……あの時か……。
油断していた自分に怒りを覚えるが今は怒ってる場合じゃない。
ソラに解毒して貰っているからかどんどん体調が良くなっていく。
ぼやけて回っていた視界も元に戻って来た気がする。
よし、これなら後は足の怪我治してもらえれば動けるな。
「おー、けんの顔色が良くなってきたのです」
「あぁ、随分良くなってきた。ソラ、もう十分だか…」
「十分かどうかは私が決めます。ケンさんは出血が原因の貧血に
なってますからまだ十分じゃありません。
だから、治るまで大人しくしていて下さい」
「いや、かなり良くなったから他の人のちりょ……」
「私が決めますから黙っていてください」
「は、はい」
予想以上の凄みに返事をするしかなかった。
あのまま食い下がったら多分、殴ってでも黙らせてきそうな凄みだった。
これは従うしかない……。
傷口に手を当てて、魔術を使用しているのか当てている手が光っている。
その箇所が熱くなってきて、痛みが徐々に引いてきている。
「やっぱり、ケンさん治るの早いですね。もう治っちゃいました」
ソラが手を離した箇所を見るとすっかり傷口は塞がっていた。
魔術って本当にすごいなぁ…。
「もう治療終わったのか?」
「はい、もう大丈夫ですよ」
あまりにあっさり終わったから、治った気がしない。
けど、眩暈もしないし、足も普通に動くから治ったんだろう。
「治療してくれてありがとな」
「いえ、私は仕事をしただけですから」
「王女様、仮死者が運ばれてきました」
「仮死者?」
「先程、兄が放った凍結魔術で凍った人達の事です。
私は生きていれば治せますが、蘇生をさせる事は出来ませんから」
なるほど、凍らせて仮死状態にする事で生きているうちに
ソラの元へ連れてくれば助けられるって算段か。
キメラだけを狙ったなんて出来ないだろうから何考えてんだと思っていたが
敵の排除と市民を救出させる両方をやっていたのか。拳法には出来ない芸当だな。
治ったからここにいてもやる事ないので王子がいるであろう場所へ向かう。
「じゃあ、俺はお前の兄さんのとこに行くから」
「はい、お気をつけて」
ソラに一礼した後に王子の元へ向かう。
さっさと向かいたいからキコを背負って、屋根伝で進んでいく。
こっちなら人がいないから楽に進める。
しかし、こうして高い場所から見ると煙が登ってる場所や建物が崩壊していたり
で、結構な場所を襲撃されたみたいだ。
しかし、あいつは大丈夫だろうか?
殺されている可能性の方が高いが………
そう思いながらあっという間に王子の建物にたどり着く。
窓から侵入しても良いが、変に騒ぎになると困るから正面から行くか。
屋根から飛び降りて、警備のおっちゃんの前に降りる。
「おわっ!?」
「おっちゃん、お疲れ様。王子はどこにいる?」
「ケ、ケン殿ですか、お疲れ様です。
隊長ならば中で大臣やフェールユジーヌの魔術師殿と会議をしておられます」
フェールユジーヌ……って言えばあの炎の魔術師か。
何でこんな時に来たんだ?あいつらんとこにもキメラが来たのか?
そのあたりが気になるな…。
「わかった、通らせて貰うがいいか?」
「構いませんが……見る限りあなたもあの化け物と交戦されたようですけど
治療の方は受けられましたか?」
「ばっちり、王女様に治してもらったよ」
「そうですか、ソラ王女の治療を受けたのなら問題ないでしょうな。
ではお通り下さい。今回の事件の解決、お願いしますよ」
「あぁ、やれる限りはやってみるよ」
あいつに関する情報が一つでもあればいいんだが……。




