終わりの始まり
あれから毎日、王様に言われて王子様と一緒に狩りに行っては
いっぱい捕まえて、わんちゃん達に引いて貰っていた。
あんなに捕まえないといけないぐらいだったのかな?
そうだとしたら、みんながご飯をくれたのは凄く無理してたんじゃ…。
今度会ったら謝ろう、そしてみんなに少しでもお腹いっぱい食べて貰おう。
そう思い、みんなのためにと剣を振るってはいっぱい捕まえていた。
そんな日が続いた、ある日の夜……私は中庭の花達に水をやっていた。
あの人達がノールミールの人から来た人たちかぁ。
3人とも若い人で意外だった。王様みたいな人はいないのかな?
花みんなに水を撒き終えて、部屋に戻ろうとしたところで……
「ギャァアァァァアアアアア!!」
悲鳴が聞こえた。
明らかに襲われている生命の危機を伝える声。
すぐに聖剣を取りに戻って、聞こえた方向へ走る。
あの方向って確か、あの牧場の人の家があった場所だったはず。
お願い、間に合って………!!
家には明かりがいなくて、窓が割られていた。
割れた窓から中に入る。中は鉄の香りが漂っていた。
鼓動が早くなるのを感じる。
「お、おじさん……大丈夫?」
声は聞こえない、気配を感じない。
恐る恐る暗い家の中を歩いていくとどんどん鉄の香りが
強くなるのを感じた。
大丈夫、きっと怖くて隠れているだけなんだ
そう自分に言い聞かせて、震える体にカツを入れて剣を強く握る。
僅かな月明かりのおかげでドアだとわかったので開けて中へ入る。
「おじさ~……」
何かを踏んだ。
滑った感触から背筋に寒気が走る。
嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ
嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ
嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ
嘘だって信じたい、嘘だと思いたい、悪い夢であってほしい。
体が震える、息が出来なくなる、胃液がこみあげてくる。
それでも
嘘だと信じながら、剣に力を込めて辺りを光らせて…確認する。
そこには人だったものが辺り一帯に飛び散っていた。
全身を走る悪寒と震え…その直後一気に胸が喉が熱くなる。
「ゲェェェェ……ウェ…オエェ…!!」
熱の原因が口から溢れ出す。
膝をついて溢れるものを抑えられず、人だったものと混ぜてしまう。
出し切り、せき込んだ後に肩で息をしながら辺りを見る。
溢れ出した者の臭いと鉄の香りが充満した空間に飛び散る肉塊。
証拠こそないけど、間違いなくおじさんだ。
目が熱くなる……視界がぼやける、体から力が抜ける。
「…ぁぁぁああ……」
外からまた悲鳴が聞こえる。また襲われてる人がいる!?
剣を支えにして立ち上がる。
これ以上、これ以上、こんな思いしたくない!!
すぐに家を飛び出して、聞こえた方へ駆ける。
間に合って……!!
そう思いながら必死に足を動かす。
声は聞こえなくなって、その方向へ走る最中に大通りに出る。
その大通りにあるものが転がっていた。
それに気づいた瞬間に急いでそれに駆け寄る。
「わんちゃん……」
辺りに血を広げ、体に風穴を開けられたあの犬が倒れていた。
震える手を伸ばして、抱きしめる。
すると今にも消えそうな弱弱しい声が返ってくる。
震える手で頭をなでると嬉しそうな反応をして目を瞑り
その後、その目が開く事はなかった。
なんで……こんな事に……。
後は冷たくなるだけになった子をただただ抱きしめる。
「アヤカさん大丈夫ですか!!」
「…………わ、私は…だ、大丈夫だけど……こ、この子が…」
王子様に声をかけられたけど、声が震えてまともに出ない。
「報告がありましたが、かなりの死者が出ているようです」
「そ…そんな……一体…誰が……」
嗚咽を漏らしながら、わからぬ首謀者への怒りがわいてくる。
みんな……悪い事してなかった…のに……優しくて
良い人ばかりだったのに……。
「まだ確信を得たわけではないですが、
恐らくはノールミールの使者達ではないかと……」
「……!?……あの人達が……?」
「恐らくは……」
あの人達が……こんな…事を……。
怒りで体に力が入る。冷たくなっていく子をゆっくりと置いて
聖剣を力強く握り締める。許さない、こんな事をしたなんて!!!!
「あの人達はどこに……?」
「彼らなら交渉決裂という事で出ていかれました。おそらくもうこの国を
出たと……」
それだけ聞いて、走り出す。
あの人達が使っていた馬車の場所は知っている。
馬車が近くに止めてあった門から外へ出ると遠くに
馬車らしいモノをを見つけた。それを見て聖剣を握る手に力が入る。
よくも!!よくも!!よくも!!よくも!!
「私はあなた達を許さない!!私は……お前達を!!」
剣から光を…力を感じる。
目を見開き、剣に力を込めて大きく振るう。
剣から光が一直線にあの馬車を飲み込まんと突き進んでいく。
が、馬車はその光から逃れるように曲がる。
避けた事を確認したとほぼ同時に何かが飛んでくる。
咄嗟に聖剣で防ごうとすると
前方に光の盾の様なものが作られ、飛んできた攻撃から守ってくれる。
こんな事も出来たんだ………。
どんどん飛んでくる攻撃を防いでいるうちに再度県に力を込める。
今度こそは確実に……決める!!
剣を今度は振り上げて、光を一直線に飛ばす。
が、これも回避される。このままじゃ逃げられてしまう。
こうなったら、直接切りつけてやる!!
光の盾があるから攻撃を気にせずに走り出す。
すると、ものすごい勢いで馬車に急接近する。
絶対に逃がさないんだから!!
跳び上がって剣に力を込めて振り下ろすが
魔力壁と言われるものに防がれる。
防がれたせいで私は跳び上がった勢いよろしく地面に落ちて転がる。
すぐに立ち上がって、馬車の方へ目を向ける。
馬車は森の方へ向かって行っていた。
あの森は…初めて仕事を手伝った場所……あそこは壊したくない……。
壊したくないから自然に体から力が抜ける。
逃げられた、敵を取れなかった悔しさで剣を握る力が強くなる。
「アヤカさん、大丈夫でしたか?」
「………王子様…ごめん、逃げられちゃった…」
そう言うと悔しさからかあの惨状を思い出した悲しみからか涙が零れる。
涙を止めようとしても、止まることなく涙が零れる。
「………アヤカさん、まだです」
「え……?」
「まだ、その聖剣には出来る事があります。それで敵を討ちましょう」
「……出来る事………?」
「はい、聖剣の力で天から相手を射抜くのですよ」
天から………?
「……どうやるの?」
「その聖剣の力を天へと解き放つのです。
そうすれば後は自然と聖剣がわかるはずです」
「……わかった、やってみる」
剣に力を籠めると剣が黄金の光を放ち始める。
これで……!!
剣を天へ、突くように上へ上げると光が天へと昇っていき
そのまま私をそれに引き寄せられるように連れていかれる。
そして、空で光に包まれた状態になる。
この時、自然と地上がはっきり見えて……あの馬車を見つけた。
その馬車へ向かって、突進する。
絶対に逃がさない、みんなの仇を取ってやる!!
光に矢となって、私は地上に直撃する。
辺り一帯を吹き飛ばし、土煙が立ち込める。
特に痛みも何もなく、普通に立ち上がれた。
直撃したわけじゃないから、誰か生きているかも……。
あんな事をした連中だ、不意打ちをしてきそうだ。慎重に行こう
土煙の中を歩いていくと前方に誰かいた。
剣を握る手に力が入る、みんなの仇……ッ!!
「他は吹き飛んだようね……」




