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奇襲

朝起きて、朝飯を食べて今日もキコと共にあの子の元へ向かう。

2階の病室のドアノブに手をかけて中へ入る。


「よう、元気か?」


言葉こそ返ってこなかったが、軽く頭を下げていたので元気なのだろう。

来る途中に買ったお見舞い品を袋から取り出して、彼女に渡す。


「…………これ……なに?…」

「近くで売ってたパンだよ、焼き立てで旨いぞ」


彼女は受け取ったそれを不思議そうにじっと見続ける。


「……暖かい…」


そう言って見続ける。食べようともせずに……


「食べていいんだぞ?」

「………いいの?」

「そりゃ、お前のために買ってきたモノだから食べてもいいぞ」

「…………後でするの?」

「ししししたいだけないだろ!!……はぁ、食べないならしまうぞ?」


そう言うと少しパンを見つめた後に齧りついていた。

何度もパクパクとパンを頬張っていくので

口いっぱいになって、もしゃもしゃと食べている。


「そんなに頬張るとのどに詰まらせるぞ」

「美味しそうに食べているのです」

「(モグモグ、ゴクン)…………美味しい」

「だろ?、誰も取らないからゆっくり食べろよ」

「見てたら、僕も欲しくなってきたのです」

「お前、このタイミングでそれ言うか?」


ほら、取られるかも…って思ったのか警戒しているじゃねーか。

まぁ、そう言うと思って大目に買ってきていて良かった。

袋から取り出して、キコに渡す。


「ほれ」

「わーい、ありがとうなのです」


そう言ってすぐにパンに齧りつく。

こうも旨そうに食べていると宣伝になりそうだな。

そう思いながら、キコを見ていると服を引っ張られる。


「ん、どうした?」

「……………………」


彼女は特に何も言わなかったが、目線が明らかに袋の方に向いている。

欲しいのか?


「もう一個食べるか?」


そう言うとこくりと頭を下げたのでパンを袋から取り出して彼女に渡す。

彼女は渡したパンにパクパクと齧りついていく。

美味しかったんだろうな、気に言って貰えて何よりだ。


「僕ももう一個欲しいのです」

「へいへい、帰ったら買ってやるからこれで最後な」

「はーい、なのですよ」


キコにもパンを渡すとこちらもパクパクと食べていく。

こうも美味しそうに食べられると上げる事に躊躇が無くなる。

そう思いながら二人と見ていると扉が開く。


「失礼します。あら、二人共お父さんに買って貰ったの?」

「父じゃないです」


そう言って、看護師の人が入って来た。

流石に20でこの年齢の子供いたらまずいだろ……。

それとも、いてもおかしくないと思うぐらいに見た目老けてんのかな?

ちょっと自分の見た目に自信が持てなくなってきた。


「こんなに頬を膨らませて、可愛らしいですね」

「そうだな」

「…………(モグモグ)」


看護師と二人でモグモグと食べる彼女を見つめている。

こう見てると本当に小動物みたいで可愛いらしい。

そう思って彼女を見ていると外からの声が聞こえた。

妙に騒がしいな、何かあったのか?

そう思って窓から外を見ようとしたところで近くで爆発が起こる。


「なんだ……ッ!?」

「キャッ!!」


爆発の衝撃と音が伝わってくると同時に窓が割れる音が聞こえた。

こちらの窓が割れていないのに隣の部屋から割れた音が聞こえた。

その音と共に短い悲鳴と何かが引き裂かれた音が隣から聞こえた。

そして、カシャ…カシャ…と音が隣の部屋から聞こえ……

何かが壁を貫通して、飛び出てきた。これは……爪か?


「ヒ、ヒッ!!」

「お前、こいつら二人を連れて部屋を出ろ!!」

「え……お、お父さんは?」

「父じゃねーっての、いいからさっさと……」


そう言った瞬間に壁が壊れて、何かが姿を現す。

その姿は顔が虫の横顎と象牙の様なものが生えた犬

背中からは4つの触角が生え、それぞれに被膜がついており

体は鱗で覆われており、前足が長い一本の爪が飛びていて

後ろ足は大型の猛禽類を想像させる姿をしたキメラだ。

あの時のやつよりも大きく、そして凶悪な面をしていた。


「ヒィィィィッッ!!」


そいつはこちらを見るや大きな声を上げて、跳びかかってくる。

それを直蹴りで蹴り返して壁へ叩きつける。

結構な威力で迎撃したつもりだが、立ち上がろうとしている。

タフなやつだ。


「今のうちに早く行け!!」

「で、でも腰が抜けて……」

「僕が連れて行くのです。任せてほしいのですよ」

「……すまない、頼んだぞ」

「はいなのです」


キコは少女を抱えて、看護師を担いで部屋から出ていく。

キメラは明らかにそちらへ目を運ばせて


「コキャギャキャギャ―――!!」


と声を上げながらこちらへ突っ込んで来る。

今度はただ突進してくるだけではなく触角を振り下ろしてくる。

それを避けると今度は巨大な爪を突き立ててくるがそいつを躱して

わきで挟んで止めて、手刀で叩き折る。……硬いな。


「ギャーギャキャー!!」


怯んだその隙に手刀で首を切断するべく振り下ろすが……

なんだこいつの体、肉がゴムみたいでそれでいて硬い。

そのせいで叩きつけになってしまい、致命打にならなかった。


「ギャ……キャーーー!!」


数歩退いたが、それでもこちらへの敵意を向けて声を上げる。

こうなったら、掌底を決めたいがこいつを一撃で仕留める威力で

打とうものなら床が抜けて、体勢が崩れて威力が落ちかねん。

それじゃあ、意味がない。

まさか、地形で封じられるとは……。

時間こそかかるが少しずつ追い詰めようかと思った瞬間

窓を突き破り、二体目がこちらに爪を突き立てて跳びかかってくる。

跳んで躱して、空中で回し蹴りをして壁へ叩きつける。

それを見るや先程の個体も跳びかかってきた。

今度は着地の勢いのまましゃがんで、爪を回避して

上へ直蹴りを繰り出して天井に叩き付け、落ちてきたのを捕らえて

頭から床へ叩きつける。

そして、怯んでいる二体目を捕まえて、窓へぶん投げる。

こんな狭い部屋で二体も相手してられるか。

割れた窓から外へと放りだされたのを確認して

叩きつけた個体へ下段正拳突きを放つ。

ベキボキと骨がへし折れた感触が手に伝わってくる。


「ゲギギャ――――――――――――!!!!!!」


痛みに耐えかねたのか大きな悲鳴のような声を放つキメラ。

その隙に顔面へ同じように正拳突きを放って頭蓋骨を砕く。

声を発さずビクビクと痙攣を起こし、動かなくなったのを確認する。

二人が心配なのですぐに向かおうとすると


複数の窓が割れる音が聞こえ、同じような咆哮が聞こえる。

まだ別の個体がいるのか……厄介な……。

そう思った瞬間、太ももに何かが突き刺さる。


「なっ……!?」


動かなくなったキメラの触角が俺の右太ももを貫いていた。

な……確かに頭蓋を砕いたはず……!?

そして、触角を振り回して俺はぶん投げられる。

投げられるというよりかは途中で肉が裂け、触角から解放された感じだが

それでもその勢いのまま2階の窓から放り出される。

その勢いのまま、地面に叩きつけられる。

いっつ…………受け身取れたからなんとかなったものの…あの野郎…。

そう思いながら、顔を上げようとしたところで


「ギャァッ!!………ゴゲェッ!!」


聞いた事のある人間の断末魔が聞こえた。

顔を上げれば、入り口で胸に爪を突き立てられた看護師と

そのそばで惨劇を見ているあの子の姿があった。

しかし、そのそばにキコの姿は無かった。

あいつはどうしたんだ?など思ったが、今はそれより前の状況だ。

右足はともかく、左足は動く。

突っ込んで行き、あいつに近寄ろうとするキメラに跳び蹴りを喰らわす。

そして、その勢いのまま病院内へ入っていった。

キメラは結構奥まで吹っ飛ばされたが、俺は入り口付近で転がる事になった。


「おい、逃げろ!!」


声を上げて、逃げるよう伝える。

こちらを見るが逃げようとせずにこちらを見ているだけの少女。

なんで逃げない、腰でも抜かしたか?

だったら……と思った矢先に別の個体があの子の前に現れた。

まずい……!!同じように突っ込もうとしたところで


「ゲギャギャゴギャ――――!!」


先程吹っ飛ばした個体が猛スピードで突っ込んできた。

こんな時に……!!

横へ転がって避ける。

突っ込もうとしたところで目の前のキメラは

まるで俺を止めるかのように立ちはだかる。

邪魔をする気か……こいつ。いいじゃねーか。だったらこいつごと…!!


「ドリャ―――!!なのですよ!!」


そう思った瞬間に横からキメラがすっ飛んできて目の前のキメラと一緒に

壁を叩きつけられ、壁を破壊しながら吹っ飛んでいった。

子供とは言えやっぱり鬼だ、強い。

キコのおかげで障害物は消えた。

一気に突っ込んで今にもあの子に爪を突き立てようとしている個体に

突っ込んだ勢いで縦回転しながらかかと落としを喰らわす。

足に脊髄を砕く感触が伝わった。

だが、その勢いが強すぎて俺自身もあの子の近くではなく離れたところ

まで吹っ飛んで行ってしまう。

勢いのまま地面にぶつかりそうになるが

両腕は無事なので両腕で勢いを殺してあの子の元へ向かおうとする。


しかし、また別の個体が空から複数現れる。


おいおい、何体いるんだよ。こいつら……。

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