蹂躙する暴風と氷
少し時間遡り………
ケンから防御しろと言う言葉を聞いてすぐに衝撃が馬車全体に襲い掛かる。
すぐに魔力壁を貼って、衝撃に備えるが乗っている馬車が持たずに
解体され、衝撃によって外へと放り出されて、勢いそのままに
地面に叩きつけられるが魔力壁で防ぐ。
それでも、速度そのものは殺しきれずにゴロゴロと転がっていく。
後方に氷壁を生み出し、それにぶつかる事で速度を殺しきる。
「………ッ…二人は……?」
魔力壁で防いだと言え完全には防ぎきれてないのか
所々痛む場所があるが無視して当たりを見渡す。
土煙が立ち込めており、視界で二人を探すことは難しそうだ。
なので、魔力探知の術式を書いてそれを使って探索する。
左前方に強大な反応があるな、これがあいつだろう。
なら心配する必要もない。
それよりもケンは………そうだった、あいつは魔力が
全くと言っていいほどないからこれじゃあ探知出来ないんだ。
すぐに別の探知術式に切り替えようとしたところで
後方に八つ程の魔力反応があった。
すぐに振り向くと土煙をかき分けて、火球が飛んでくる。
氷壁をすぐに作り出して、火球を受け止める。
「何者だ!!」
次なる攻撃へ備えながら声を荒げる。
もしかしたら流れ弾の可能性も無くはない。
しかし、返事は言葉でなく火球として返ってくる。
今度は氷槍を作り出してぶつける事で相殺する。
やはり敵だったか……ならば、容赦無し。
連射で確実に……と思ったところで突風が吹き荒れ、土煙を吹き払う。
土煙が吹き飛んだことで相手側の姿が見える。
その姿は黒いローブを羽織っていた。これでは情報が少なすぎる………!!
そう思っていると手元の通信機が通信が来たことを示す
魔力波を出し始めた。すぐに手に取って、かけてきた相手に連絡を取る。
「…なんだ?」
『元気そうだな、良かったよかった』
「良かったではない。今、目の前に敵がいるんだ」
『わかってるって、でどうする、捕縛か殲滅か?』
考えようとしたところで火球が複数こちらへ飛んで来る。
それは氷槍を連射して対処する。
あの程度の炎では隊長どころか私にも届きすらしない。
さて、捕縛か殲滅か……答えは一つだ。
「最低一人残せばいい」
『りょーかい、一人でいいんだな』
いつもやりすぎるから不安だが、
多人数を相手にするなら断然こいつの方が得意だ。
私がやるのは残った者を捕らえる事のみ。
すぐに強大な竜巻が吹き荒れ黒いローブの者達に襲い掛かる。
それに対して彼らは複数で正面に魔力壁を展開して防ぐ。
あいつの対策はしてきたようだがそれは対策になっていない。
妨げる魔力壁を竜巻はガリガリと音をたてながら削っていき
簡単に複数の魔力壁を破壊し、相手の魔術師達を数人飲み込む。
その惨状を見て残りが逃げ出す。
その中の一人を……竜巻から一番離れた者を氷の中に捕らえる。
「捕らえたぞ」
『りょーかいっと』
やつにそれを伝えると竜巻は三つに分離し、まるで生物のように
暴れまわり残った魔術師を飲み込んでいく。
本当にこいつが敵で良かったとつくづく思った。
「ひ………」
捕らえた一人は恐怖にまみれた顔でこちらを見てくる。
仲間が消し飛ばされているのを見ているので当然だろう。
「安心しろ、おとなしくしていれば殺しはしない」
「ほほほほほ本当か………」
「お前がおとなしくしていればな」
そう言うと首を高速に縦に振る。
これならば、問題は無いだろう。
後はケンの安否だが……
そう思った瞬間後ろから爆発音が聞こえた。
向こうでやり合っているのかもしれない。
「私は向こうに行ってくる、こいつの監視を頼んだぞ」
『へいへい、早く行ってきな』
心配なので急いで、音が聞こえた方向へ向かう。
すると、そこには足元にキメラを転がしたケンが立っていた。
「ケン、大丈夫か?」
「あぁ、大丈夫だ」
無事そうなので一安心したところでケンの足元の怪物の姿が
変わっていくのが見えた。これは……
「……シャル、こいつは魔術か?」
「いや……魔力は一切感じないから違うはずだが……」
怪物に触れて状態を確かめる。
息はしておらず、死んでいるのがわかる。
死んで姿が変わったのか死ぬ前に姿を変えて死んだのか……
どちらかはわからないが、これは検証に回した方が良いだろう。
「ケン、それを運んでくれないか?」
「了解。そういや、お前らは怪我はないのか?」
「あぁ、ケンの判断のおかげでなんともない」
今、思えばあの時ケンが気付かなければ私は死んでいただろう。
あの時と言い、また恩が出来てしまったな。




