そりを引いて
死骸を担いでラオージュの元へ向かう。
その途中に馬車の残骸が散乱していた。
僅かばかり無事を願っていたかこれだとバラバラになってるだろう。
そうなるとここからの移動はどうしようか。
俺一人なら走ればいいんだが、二人に加えて荷物もあるから
背負って走るなんて事も出来ない。
どうしたものか。
「ここまで破片があるという事は馬車はもう使えないな」
「あぁ、代わりの乗物とか近くにないか?」
「ないが、代わりのモノなら私に任せてくれ」
「任せてって何か心当たりでもあるのか」
「いや、代わりのモノを私が作るんだ」
は……………?
意外過ぎる発言に思考と動きが停止する。
何を言ってらっしゃるん?この人は……
「なんだ、その顔は?」
「いや、代わりのモノを作るって何言ってんだろうって」
「お前にしては察しが悪いな、氷魔術で代わりを作るだけだぞ」
「氷で乗物作るのか……簡単に壊れそうなんだが?」
「そこは魔術で強度を大きく上げておくから問題は無い」
なら、問題は無いか……。
そう言うところが出来るとみると本当に魔術は利便性が高いな。
「だが、私の腕では作るところまでで動かせないんだ。
だから、お前に引いて貰う事になるんだが大丈夫か?」
「それぐらい問題ねーよ。気にしないでくれ」
あっさり馬車の代理の件は解決した。
あいつと言い優秀な奴らだ、この関係が続いてほしいと思う。
ラオージュと合流して、シャルが馬車の代わりを作ろうとする。
が…………………
「こんなところだ」
「えらく右に傾いていないか?」
「あぁ、これじゃあ簡単に倒れるぞ」
「そ、そうか?なら、もう一つ作るから待っていてくれ」
……………………
「これでどうだ?」
「今度は左に傾いているな」
「今度のはさっきのより簡単に倒れそうだ」
「く………今度こそ!!」
……………………
「今度こそどうだ!!」
「いや、小さすぎるだろ」
「幼児用って考えても小さいぞ、これ」
「ぐ…………」
「シャル、苦手だってなら無理しなくてもいいぞ」
なんなら、氷の塊を俺が加工してやった方が良さそうだ。
「苦手ではない、今のは準備運動のようなものだ!!」
そう言ってシャルは再び、馬車の代わりのモノを生み出す。
見てる限り、右にも左にも傾いておらず、小さすぎもしない。
だが…………
「デカすぎんだろ」
「巨人サイズじゃねーか」
「………くぅぅ……」
小さすぎるって言ったから次は大きすぎるモノが来るとは……。
意外な人の意外な欠点が知れたのは良いとして
このままだと使えそうなものがいつ作られるかわからない。
「しゃーねーか。ねーちゃん、俺がやるから氷塊を出してくれ」
「あ、あぁ、不甲斐ない私の代わりに頼む」
生み出された氷塊をラオージュは風の魔術で切って削っていく。
あっという間に形が整えられていき
馬車と言うよりかはソリのような形状に変わった。
「ほれ、その死体とそこの氷漬け積んでいこうぜ」
ラオージュの言葉を聞いてそれらを積んで再び向かう。
ソリを引くってトナカイになった気分だ。
掴んでる部分が冷えに冷えてゾクゾクするが無視して引いていく。
さっさと着いて温かいスープとか飲みたくなってきた。
「やっぱ、寒いなぁ」
「私だって寒いんだ我慢しろ。
ケン、遠くのあの光が見えるところがノーヌミールだ」
「そうか、じゃあとばすから振り落とされないように気をつけろよ」
そう言って、速度を上げて一気に走り抜けていく。
体を動かしているから体は熱いのに腕だけ冷たいこの違和感から
さっさと解放されたいために足を動かしていく。
そのため、遠く見える光程度だったノーヌミールにはすぐに着いた。
すぐに氷から手を放して手をこすり合わせる。ひーー…寒……。
「副隊長、ラオージュ殿、ケンさんお疲れ様です」
「お疲れーー、ちょいと運ぶもんあるから頼むわ」
「運ぶものですか?」
「これだ、すぐにこれを検証に回してくれないか?」
「これを……ですか、わかりました」
シャルがキメラだったものの死骸を門兵に渡しているうちに
捕虜をそりから引きずり出す。
捕虜は氷に包まれてたままだったのでまた手が冷える。
キコをむかえに行ったらすぐに温かいものを食べに行こう。
「ケン、後は私達でやっておくからお前はあの子を
むかえに言ってやってくれ」
「え、俺もやるの?」
「当たり前だろう」
「本当にいいのか?」
「俺はい「あぁ、行ってくれ」」
ラオージュが何か言おうとしたがシャルに遮られる。
シャルに感謝しつつ、キコをむかえに行く。
良い子にしてたかな、あいつ。
足早にキコの元へ、王子がいる場所へ向かって
建物に入り、部屋に入ると……。
「おいしいのです!!もっと欲しいのです」
「遠慮しなくてもいいからね。兄さんもどうです?」
「いや、僕は……ケン君、お疲れ様」
王子とソラとキコがお茶会をしていた。
もう外暗いんだが、夕飯の時間なんだが……。
それに見る限りキコがお菓子をいっぱい食べたようだ。
「あ、お帰りなさいなのです」
「ケンさん、お帰りなさい」
「ただいま。キコ、いい子にしてたか?」
「もちろんなのですよ」
胸を張ってドヤ顔をするキコ。それを見て頭をなでる。
「悪かったな、自分の仕事もあるだろうに」
「いや、問題なかったよ。大人しくしてくれてた上にソラと
遊んでいたから、いつもより賑やかな程度だったよ」
「ソラも悪いな」
「いいんですよ。楽しかったですから。またね、キコちゃん」
「はいなのです、そら」
俺はキコと手を繋いで部屋を後にする。
その際に二人が手を振っている。実にほほえましい光景だ。
「それで、今日はどこのご飯を食べに行くのですか?」
「お前、まだ食うのか?」
この体のどこに入るんだ……。
「そらが言っていたのです、甘いものは別腹って」
それは腹いっぱいでも甘いものは入るって意味であって
甘いものをいくら食ってもご飯は入るって意味ではなかったと思うが。
そう思ったが別に金に困っていないのでキコが大丈夫ならいいか。
そして、建物を出て、キコと二人で今日の夕飯を食べに行くのだった。




