鬼を連れて国へ
3人を乗せて、馬車を引こうとしたところで……
「す、すいません。ぼ、僕、屋根の上に乗りたいんですけど」
「構わんが転げ落ちるぞ」
「う……で、でも……」
シェシュルはキコが怖くて同乗に対してごねる。
鬼が怖いってのはわかるが……
「大丈夫なのですよ、襲ったりしないのです……ジュルリ」
「い、今、ジュルリって言いましたよね!?
ぼ、僕を見て涎をたらしましたよね!?」
「口で言っただけだろ、そんなにビビるなよ。
アシェルからも言ってくれよ」
「気持ちはわかるけど、この子にあなたを食べるなんて気は無いわよ」
「う……うぅ…。も、もしもの時はお願いしますよ」
「はいはい、さっさと乗ってくれ」
シェシュルを折れたようでやっと乗ってくれた。
3人が座ったのを確認して、走り出す。
少々毒によるダメージが疲れとして出て来てるが
この程度どうという事はない。
「おぉー、速いのです」
「外に顔出してるとぶつかるぞ」
「はーい、なのです」
キコはいい子だな。
特に障害となりそうなものは前方に確認出来ない。
さっさと駆け抜けよう。
「アシェル、さっき貰ったのってなんなんだ?」
「さっき貰ったのは……チーズね、美味しそう」
「チーズ……?どういうものです?」
「牛やヤギの乳を固めたものよ、食べたことない?」
「僕達は肉ばかり食べるのでそういうものは食べたことないのですよ」
「じゃあ、食べてみる?」
「良いのですか」
「良いわよ、はい」
「ありがとうなのです……いただきますんなのです。
……お、美味しいのです!!」
「俺にもくれないか」
「わかったわ、シェシュル渡してあげて」
「わ、わかりました、どうぞ」
「ありがとな」
伸ばした手に渡されたチーズを齧る。
あんまりこう安々とこの言葉を使いたくないが実に濃厚だ。
しっとりとした舌触りなのに脂っこさはみじんも感じられない。
熱でトロっとさせたり、パンの上にのせて食べても旨いだろう。
チーズを口にしながら、三人を乗せて馬車は進む。
お、門が見えてきた。
「お前ら、騒ぎになると厄介だから門兵に言うなよ」
「わ、わかってますよ。さ、騒ぎにならないといいですね」
「そうだな、ならない事だけを願っとくよ」
なったらなっただ。
俺の独断でやったって突っぱねて
こいつらには被害が及ばないようにしないと。
等を考えてると門はもうすぐそこまでに来ていた。
考え事をすると時間はすぐに立つな。
門の近くに馬車を止めると門兵が近寄ってきた。
「あ、おつ…って大丈夫ですか!?」
「………俺か?大丈夫だ。気にしないでくれ」
血を吐いたところに倒れたから服に血がついているんだった。
「大丈夫ならいいんですけど、それで街中を歩かれるのはちょっと…」
だよな、服が血まみれの男が街中にいたら誰もが驚くし、警戒する。
かと言って半裸で歩いていてもそれはそれでおかしいしなぁ。
替える服もないし………。
「すまん、替えの服を持ってないんだ。
だから替えの服が欲しいんだが持ってないか?」
「わかりました、探してきます」
門兵、仕事を増やして申し訳ない。
「先行って貰っても良いんだけど、アシェルは一人じゃあ無理か」
「そうね。だけど、シェシュルがいるし大丈夫よ、ね」
「え…は、はい!ぼ、僕が責任をもって病院へ連れていきます」
「言ったな…頼んだぞ」
「は、はい」
治療をしてあるとはいえ、怪我が心配なので先に行ってもらう。
まぁ、俺並に見た目はあれだが怪我人ってのはわかるから
歩いていてもそこまで問題じゃあないだろ。
二人を下ろしたところで、キコも降りてついて行こうとするが
捕まえて止める。
「どうして止めるのですか?」
「悪いが、お前は俺と来てくれ」
「わかったのです」
「後、鬼だって言うなよ」
「それはわかっているのですよ」
本当だろうな……。
少し心配だが、近くにいればごまかしも効くだろう。
お、門兵が服を持ってきてこちらへと走ってきた。
服があったか……。
「これならありましたが、どうですか?」
「すまねーな」
「いえ、英雄のあなたにこれぐらい気にしないで下さい」
貰った服を受け取って着替える。ちょっと小さいな……。
英雄、英雄ってそんな事言われるためにやったんじゃあないがな。
嬉しいというよりむず痒い。
「ところでその女の子はどうしたんですか?」
「この子か、今回言ったところで保護したんだ」
嘘はついていない。
「そうなんですか、君お名前は?」
「キコなのです。よろしくお願いするのです」
「キコちゃんですね、お願いします。
この子は孤児院に連れて行くというのなら私達が連れていきますが」
「いや、俺が連れていくよ。お前らの仕事が増えるだろ」
これは嘘。孤児院なんて目の届かない範囲に置いておけない。
「そうですか、わかりました。お気をつけて」
「あぁ」
「ばいばいなのですよー」
キコを引き連れて、街へと入っていく。
それにしてもバレなかったな。
「目移りしてないで俺にちゃんと付いて来いよ」
「わかっているのですよ」
心配なので、手を繋いでおく。
キコは目をキラキラさせて周りを見ているな。
「あれはなんなのですか?」
「あれは……飯屋だな」
「ケンはどんなものを食べるのですか?」
「どんなのか…俺は大体肉料理だな」
「肉……料理?」
そういや、猪まるまる食ってたな。
鬼には料理って文化が無いのかもしれん。
「肉を焼いたり、蒸したりしてな。それから他のスパイス…葉っぱとかで
味を変えたりするものだ」
「へー、そんな事するのですね。僕達は大体丸かじりなのですよ」
「猪丸かじりしてたの見てたから知ってる」
そんな話をしながら王子様のいるところまで行く。
「お疲れ様です、ところでその子は……」
「今回の件での重要参考人になりそうなんでな。
連れていきたいんだが、いいか?」
「いえ、あなたがそばにいれば大丈夫でしょう。どうぞ」
英雄、英雄言われるのはむず痒かったが
こういう時に実績があるのは楽だな。
キコを連れて王子の元へと向かって行く。
「……でな………のじゃ……」
「………か……では……」
誰かと話しているようだが……誰とだ?




