新たな依頼 村へと行く
気持ち悪い、頭痛い……。
昨日、調子に乗って飲んだ結果二日酔いした。
気持ち悪い、頭痛い。
なった事が無いから断言は出来ないけど恐らくこれが二日酔いだろう。
気持ち悪い、頭痛い…。
というかここどこだよ、いつの間に宿に泊まったのか記憶にない。
う………やばい、吐きそうだ。回復薬でどうにかならないか。
昨日買った薬で緩和を試みる。ついでに解毒剤も2本とも飲んでおこう。
残っていた回復薬と解毒薬を全て飲み干し、寝転がっているとみるみるうちに
回復した。おぉ、予想通りだ。若干頭痛は残っているもののすっかり治っている。
よし、じゃあ、今日も王子のところ言ってみるか。
宿を出て、王子のところへ向かう。
歩いていく間に適当な朝食を買って頬張る。うん、美味!
先程の吐き気はなんのその、食が進む、進む、進む。
あっという間に無くなってしまった。
門番に挨拶をして、王子がいるであろう所に向かう。
あ、いたいた。
「おはよう、王子様」
「あぁ、おはよう。ケン君」
「昨日の話は上手く言ったか?」
「あぁ、大成功だとも」
そう言うと王子様は少しだけ一瞬自慢げな顔をする。
結構大変だったろうにご苦労様だ。
「そこである問題があってね」
「問題と言うとなんだ。あいつらの返還か?」
「いや、彼らならもうフェールユジーヌに帰ったよ。それよりも、だ。
フェールユジーヌとこの国の国境付近の村からこういう知らせを受けたんだ。
人が消えたとね……」
「人が消えたか…人食いでも出たか?」
「恐らくはそうだろう。だから、君に依頼をしたいと言うわけなんだ」
「そういう事か、了解。すぐに終わらせて来る」
「あぁ、期待しているよ」
そう言って、王子と別れる。
ソラにも挨拶ぐらいはしておきたいが別に後でもいいだろう。
それよりもアシェルとシェシュルについてくるか聞きに行くか。
どこにいるかは知らないが、ギルドにいるだろう。
まだ小腹が減っているのでさっきのをもう一度買って食いながら向かう。
ギルドのドアを開けて、中を見る。お、いたいた。
「おはよう、二人共」
「お、おはようございます」
「おはよう、昨日飲みまくったのに元気なのね」
「薬飲んだから元気なだけだ。それよりも王子から依頼受けてな、手伝ってくれないか?」
「当然、行くわ。昨日手伝って貰ったからね。で、どこへ行くの?」
「えっとな、フェールユジーヌとの国境付近の村だ」
「前に行ったところより断然近いわね」
「近いってんならさっさと行くか」
二人を連れて、その場所へ向かうべく、前に買った馬車を預けている場所に寄って
馬車を引き取って二人を乗せてその場所へ向かう。
無論、馬車を引くのは俺だ。
「こっちであってるか?」
「は、はい、このまま真っすぐです」
「この速度維持するけど、問題はないか?」
「全くないわよ。むしろ、もっと速くてもいいわ」
ほう…言うじゃないか。
じゃあ、お言葉に甘えて速度を一気に上げる。
「う、うわっ!?」
「ちょ、ちょっと速くしすぎでしょ」
「もっと速くてもいいんじゃなかったのか?」
「上げすぎよ!びっくりしたじゃない」
怒られたところで速度をゆっくり落として、先ほどの速度程度に下げる。
流石にからかいすぎたな。
この後は特に上げる事も下げる事もなく駆けていき、体感10分ぐらいたったところで
村らしきものが見えてくる、あれか?
「シェシュル、あれがそうか?」
「そ、そうです。あれが言っていた村です」
見えたので速度を上げて一気に村へと向かう。
ひたすら平原だったから楽だったな。
「到着」
「ありがと、こんなに早く着くとは流石ね」
「褒めても何も出ねーぞ」
さて、村の人に話を聞いて情報収集するか。
村は特に錆びれた感じのないが、特徴もない普通の村だな。
あそこで藁を持った若い人に聞いてみるか。
「すまない、村長はどこだ?」
「村長だと……あんたは何もんだ?」
「依頼を受けて、国から派遣されたものだけど」
「あんたらが?とてもそんな風貌にゃあ見えんが…解決してくれるんだったら誰でもいいか。
向こうの赤い屋根の家が村長の家だ。そこにいるだろうよ」
騎士が来なかったことで不満まみれだったようだ。
確かに騎士が来た方がいいだろうが、墓荒らしの事件やら炎兄弟の被害もあるから仕方ない。
安心させるために一刻も早く原因を探して、解決するべきだな。
赤い屋根の家の前に行くと杖のついた老人がちょうど家から出てきた。この人か?
「爺さん、あんたが村長か?」
「そうじゃが、あんたらは?」
「人が消えたという事を聞いて国から派遣されたものだ」
「あんたらが…?……まぁ、ここのところ不幸が続いとるからな。仕方ない。
わしのところに来たという事は事件の情報を聞きに来たんじゃろ?中で話そうじゃないか」
そう言うと、老人は家のドアを開けて手招きした。
それに招かれて家へ入ると、中は予想以上に殺風景で特に語る事もない。
老人はゆっくりと椅子へ向かい座り、俺は向かい側の椅子へと座る。
「それで、事件の事じゃがこの前、近くの森へ狩りへ行った者が帰ってこなくてのう。
捜索には出かけたんじゃが、手がかり無しじゃ。
持って行った道具程度は見つかると思うたんじゃが……」
「…獣ならそんなものに興味は示さないはず。って事は道具を使う輩か」
ゴブリン、オーク、オーガ、知っている限りのモンスターならこの当たりだが
人って事も考えられるな。
「道具を使うようなモンスターならゴブリンを筆頭にオークやオーガもいるけど
オーガはまず、人のサイズの道具は合わないわ。オークも大きなものならば合うと
思うけど獣を狩りに行くためにそんなものは使わない。となると欲しがるのは…」
「ゴ、ゴブリンか野盗になりますね」
「やはりそうですか、どちらもこの村にとっては厄介極まりないのう」
「だが、まだどちらとも決まったわけじゃあない。他に何かおかしな点はあったか?」
「…他は何も無かったとしか聞いとらんのう。不審な点は先程述べたものだけじゃ」
ある情報が犠牲者が使っていた道具が見当たらなかった事だけか。
道具は襲った奴が奪ったとみるのが妥当だろう。
「で、消えた人らが持って行った道具ってどういうものだ?」
「弓矢じゃな。で、その弓には刻印術が施されておっての。確か…必中の術じゃったかの」
必中だと……そいつはどれほどの精度なんだろうか。
逆方向に打っても、叩き落しても、へし折っても機能するのなら厄介すぎる。
だが、聞いたのはでかい情報だ。知っているのならば対処のしようがある。
「ありがとう。じゃあ、行ってくるわ。爺さん」
「吉報を期待しておるぞ」
一言返事をした後、村長の家を出る。
俺は薬があるから大丈夫だろうが、二人の装備の方はどうだ?
特にアシェルなんかは弓だからな、矢の方は大丈夫だろうか。
「お前ら、俺は今から行こうと思ってるんだが何か用意するような事あるか?」
「あたしは別にないけど、シェシュルはどう?」
「ぼ、僕もないです」
「じゃあ、ちゃっちゃと向かうか」
近くの森ってなると目と鼻の先程度のあそこだろう、そこへと向かう。
入って思う事は特におかしな点は見当たらないという事。
木が生い茂り、葉が騒めき、虫の声や鳥の声が聞こえる思う通り至って普通の森だ。
前みたいに腐臭も飛び交う虫の羽音も聞こえない。
「しかし、どいつが犯人なのかもわからねぇのが厄介だな」
「だけど、ゴブリンや野盗なら寝床が近くにあるはずだからそれを探しましょう」
「そうだな。だが、そいつらって確定したわけじゃあないんだ。
他の可能性も視野に入れないとな」
周りへ常に聞き耳を立てて進んでいく。
一瞬の違和感も見逃さないように集中し、それでいて視野を狭くしないように歩く。
そこそこ奥へ来たが、少し肌寒くなってきたな。
「お前ら大丈夫か?」
「は、はい、僕は大丈夫です」
「あたしはなんともないけどケンはどうかしたの?」
「いや、森の奥だから知らないが、肌寒くなってきてな」
気が付けば、霧も出てきた。厄介だ、視界が狭まってしまう。
ここは風の魔術で霧を吹き飛ばしてでも貰った方が……。
「ガハッ………!?」
突然、口から血が吐き出される。
それと同時に足から力が抜けていく。これは……一体。
「ケ、ケンさん!?」
「ケン、どうしたの!?大丈夫!?」
返事をしようとしても声よりも先に血が口から出てきて、返事が出来ない。
どうなってる、何が起きているのかさっぱりわからない。
「ケン、しっかりし……ッ!?……これは、まさか、毒霧……」
「ど、毒なら僕が解毒しま……うっ…」
シェシュルは頭を押さえて、膝をつく。まずい、こいつらにも効き始めたか。
だが、明らかに俺の方が重症って事は恐らくは魔術だ。
口からの吐血が悪化し、それに伴い視界が揺れる、ぼやける。
動けるうちにやれる事を探せ……。
範囲から逃げるは……無理だ。
もう足にまともに力が入らない、自分一人でも厳しいのに二人を抱えるなんて不可能だ。
霧を吹き飛ばす……無理だ。
そいつにも踏み込みが必須だ。足に力が入らない今じゃせいぜい地面を割る程度だ。
………………やはり、俺がやれる事はあれだけか。
口を開けば、血が流れ出てくるがそれでも、声を出す。無理にでも出す。
「お前ら!飛ぶか浮くぐらい出来るな!」
「で、出来るけど……」
「そ、その程度の初歩なら……でも…!」
それを聞けるなら十分だ。二人を掴んで、両腕に力を入れ、了承なら一切聞かずに
二人を空へと霧の範囲外へぶん投げる。
多少枝にぶつかって痛いだろうが、逃げられるならいいだろう。
二人の声が聞こえるが、何を言ってるかはさっぱり聞き取れない。
耳もやられたか……?
「ゲハッ…!!ゲボゥゴホゥ……」
血が滝のように流れ出る。
足や腕からも力が抜けて、地に伏す。
そ、そうだ……。前に解毒剤を買ったんだった…。
腕に力を入れて、しまった場所へ手を伸ばすが………無い。な、何故だ……。
視界が少しずつ暗闇に包まれ始める。こ、これはまずい……非常にまずい。
腕に力を籠めようとしても筋肉が震えるだけ……。
それでも、置き上がろうとして血は吐いてから記憶が無い。




