表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/128

剛砕き柔穿つ

即座に体をねじり、回転の勢いで腕を溶岩から引き抜く。

なんとかどこも焼け千切れてはないようだが

腕からは煙が吹き上がっており、遅れて痛みが襲い掛かってくる。


「…ッ!!……グゥァゥァッッッッ!!」


腕を押さえて、転げまわり、絶叫したい気分になる。

感じた事のない激痛、腕から消える感覚、それでも来る痛み

それらに負けて、声を出した方が絶対に楽になれるかもしれないが

それでも無事な右足を動かし、他の溶岩の獣による追撃を避ける。

片足がやられてまともに動けないが、転がりながらも躱す。

転がった場所の熱で背や肩に痛みが走るが、それでも死よりはましだ。

右足に力を入れ、前へ跳んで最後の獣を躱して転がりながら体勢を整える。


「グ……ハァ…ハァ……」

[ケンさん、また熱波が来ます!]

「…な……ん…」


油断して、舐めプでもしてくれればいいものを追撃の熱波が飛んでくる。

全身が悲鳴を上げ、左腕が左足が焼け痛み、その熱によって喉が肺が焼ける。


「ゴホッ!ゲホッ!……ガハッ……」


息をしようとしても、まともに出来ず、遂には口から血が流れ出る。

前身は痛み、左腕は焼かれ、左足は機能大幅減少、息はほとんど出来ない。

そんなズタボロの俺を見ても、獄炎を操る魔術師は油断しないのか

次の攻撃を仕掛けてくるべくなのか、溶岩がやつの元へと集まっていき

巨大な波を形成して向かってくる。

溶岩は進行先にあるもの全てを焼き溶かし、飲み込んで迫ってくる。

この状態の人間に撃つ技じゃあねぇだろ。


[ケンさん。に、逃げれますか?逃げれるなら逃げてください。

このままでは確実に死にますよ]


無理だ、今の状態であんなんから逃げるなんて不可能だ。

飲まれて、焼かれて死ぬだろう。逃げても死ぬまでの時間を数秒伸ばすだけだ。

だが、一つだけ、一つだけ生き残る可能性があるとすれば………。

あれを打ち破り、あいつを吹っ飛ばす手段があるとすれば…!!


「な、なぁ………。あれも…魔術じゃ……ねぇ…んだよな」

[そうですけど……な、何をする気ですか]


それを聞けて良かった。魔術じゃあないのなら魔術に弱いとか関係ない。

幸い、怪我の功名ってやつか左腕はつぶされたが利き腕は残ってる。

可能性を掴むべく、息をするために残った僅かな回復薬を流し込む。

息が多少はマシに出来るようになった。

これなら、行けるか……。


[ま、まさか、迎え撃つ気ですか!?無茶ですよ!]

「無茶でもやらなきゃ死ぬからな。やるさ」


逃げれても死ぬ、足掻いても助かるかどうかは不明。

ならば、足掻くに決まってる。当たり前じゃあないか。

ふと、師匠の言葉を思い出す。


『出来ないと思えば出来ない。が、出来ると思えば出来る!…かもしれない』


出来ると思えば出来るかもしれない……聞いた当時は馬鹿にしたが……

その言葉が俺の背中を押してくれる、己を鼓舞する。

逃げ出したくなる、逃げ出したくなる、背を向けたくなる、目を覆いたくなる

そんな絶望的な状況……迫りくる溶岩相手に構え、迎え撃つ。


「剛砕き柔穿つ俺の拳に、打ち砕けぬものなど無し!」


左足の痛みを無視して、死に向かっていく。

右足に力を入れて踏み込む。

震脚とも見紛う踏み込みによって、地が割れる、衝撃があたり一帯を揺らす。



「天掴覇王拳!」



右手を掌底の形へと変え、波と真正面からぶつかり合う。

ぶつかり合った瞬間、轟音が鳴り響く。

音が鳴る一瞬、波の動きが止まる。

衝撃は波紋となって溶岩全てに 地に 周囲に伝わり、地は割れ、周囲は揺れ

溶岩は魔術による形を保つことすら出来ずに吹き飛ばされる。

吹き飛ばされる溶岩や地によって魔術の炎は飲み込まれ、一緒に吹き飛ばされる。

激しい揺れと衝撃と轟音が周囲を、国を覆った。

波どころか周囲の溶岩や炎が纏めて吹き飛び、

溶岩があった場所は大きなクレーターとなる。


土煙や黒い煙、湯気が当たりに立ち込める。


右手から伝わる激痛、焼ける音。

全身に伝わる反動に左半身に力が入らなくなり、膝から崩れる。

言葉を放つどころか息をするのも苦しい。

血がぼたぼたと口から溢れ出す。

それでも、俺は前から視線を外さない。まだ、確認していないから……。


「万が一と思っていたが、その万が一が起こるとは」


あの衝撃の中、相手は、獄炎を支配する魔術師は佇んでいた。

耐えているだと……くそったれ…。

動きたくとも左半身が鉛のように重く、右半身もまともに動かせない。


「見事だったがここは戦場だ。立っていた方が正義だ。

あと一歩惜しかったな、小童」


そう言い、相手は俺に狙いをつける。

ぐ……!!動けよ、5秒でいい。動け!

己の体に拳を振り下ろしてカツを入れるも、体からの反応はない。

それどころか……。


「ガフッ!……ガハッ!…グ……」


無茶をした返事としての吐血が返事として返って来る。

くそったれが………!!




カッ!!





その時、前方が一瞬光った。

瞬間、巨大な光の光線とも言うべき何かがこちらへ一瞬で迫って来た。

その光が到達する前に何かに体を引っ張られて、俺は宙を舞う。

獄炎の魔術師はその光に飲み込まれた。




「生きているか、異界のモノ」




声の主が誰なのかはわかったが、声が出ない。

それどころか瞼が一気に重くなる。力が抜ける、意識が遠のく………。





遠のく意識の中、光の先に一瞬人影が見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ